「金沢の台所」と看板に記載されている『近江町市場』。事実、新幹線の金沢駅からブラブラ歩いてると、人波がそこに吸い込まれていくように感じるくらい賑わっている。ただ、いざ入ってみると気合入った店ばかりで気おくれしたのは以前の記事でお伝えした通り。

海鮮丼は基本3000円前後。盛り盛りだからそれくらい出しても良いんだけど、3000円払うなら選びたい。ただ選ぼうとすると、どれも同じに見えてきて決められないのである。う~む……

そうだ! 地元民だったらオススメの店があるかもしれない!!

・地元民の読者

そこで松下さんに聞いてみた。え? 松下さんって誰だよって? 説明しよう! 松下さんは金沢のサラリーマンである!!

それ以外特筆すべきことはないのだが、ちなみにな話をすると、知り合ったのは東京の日本橋。私(中澤)がとじないかつ丼にハマって日本橋の『とんかつ 一 HAJIME』に並んでいる時、たまたま隣に並んでいた松下さんに声をかけられたのである。「いつも読んでます」と

・金沢で40年以上暮らしている人の声

どうやら出張に来ていたみたいで、「金沢に来る時はいつでもアテンドしますよー」と言われていたので連絡してみたわけ。袖振り合うも他生の縁というヤツだ。松下さんは42歳でずっと金沢とのことなので、この40年間の金沢を見てきた人物と言える。近江町市場は300年の歴史があるようなので良い店が聞けるかもしれない。と思いきや……


松下さん「実は……近江町市場は新幹線開業後に観光地化して地元の人はほとんどが行かなくなってしまっています

──あー……確かに観光客でにぎわってる感じはしますね。どことなく築地オーラを感じるというか。では、周辺も含めて地元民も行くようなオススメ店はありますか?


松下さん向かいの百貨店の金沢エムザの地下は地元民にお馴染みですね。一番人気はお好み焼きのぼてぢゅうです!」

エムザってこれか。


それにしても、ぼてぢゅうとは。大阪人である私からすると、そう思わずにはいられない。大阪発のお好み焼きチェーンだし金沢ならではという感じが皆無である。まあ、食べるかどうかは置いておいて、オススメされたのでとりあえず金沢エムザの地下に行ってみたところ……


絶妙な頑張らない空気が流れていた。確かに地元民の憩いの場という空気感がある。落ち着くわー。




・嘘だろ

さて置き、ぼてぢゅうだったな。えーと、確か「大阪 道頓堀 ぼてぢゅう」だったよな? お好み焼き屋、お好み焼き屋は……と。あった! って、えっ


思てたんと違う……!

外観にそこはかとなく百万石オーラがあって、名前も『金沢ぼてぢゅう』だ。これは一体? 松下さんいわく、「このぼてぢゅうはチェーンのぼてぢゅうではなく、ここにしかないぼてぢゅう」らしい。金沢でぼてぢゅうと言えばこの店なのだとか。確かに価格はこちらの方が安め。


・独特のスタイル

入店してみたところ、店内に大きくコの字型に突き出したカウンターが鉄板になっておりその周りに席がある。個人席というよりみんなで食べる感じで、実際、おじいちゃんおばあちゃんから若い男女まで横並びになって食べていた。

試しに「とん玉(税込920円)」を注文してみたところ、店員さんが目の前で焼いてくれる。ペチャッと伸ばした形なのと焼く前の面に海苔を乗せているのが独特だ。

そして、それ以上に独特さを感じたのは焼きあがった時の処理。お好み焼きと言えばどろソースにマヨネーズが定番かと思うが、どろソースを塗る前に赤いソースを塗っている。で、どろソースの後に白いソースを塗った後、最後に黄色いソースがかけられた。めっちゃ重ねるやん

・味も独特

ゆえに、食べてみたところ、味もかなりオリジナリティーがある。甘辛の辛の部分がかなりシビシビした刺激的な辛みだ。そんな辛みが、大きい豚肉と卵の味が強めの生地と合わさって濃厚な旨みを発する。ほとんどの客がとん玉を注文していたが、それも頷ける味とボリューム感。

おそらく最後の黄色ソースは辛子だろう。ただ、その前が分からない。白いソースもマヨネーズよりは液状だし、赤いソースに至っては味からはちょっと判別が難しかった。


・赤いソースの正体

そこでもう1つ気になっていたメニュー「にく玉(牛肉)税込920円」も注文し、今一度よく見てみることにした。焼きあがった生地に最初に乗せるのはやはり真っ赤なソース。


で、その上から覆うようにどろソースをかけてハケで伸ばす。この時点で赤いソースの痕跡は消える。

今回も「赤 → どろ → 白 → 黄」と重ねて完成。重ね塗りの迷いの無さにプロを感じたことはさて置き、店員さんに聞いてみたところ、「赤いのはケチャップ」とのこと。味としてはケチャップ感はないのだが、コクを出すのにひと役買ってるのかもしれない

・お好み焼きだけど金沢を感じる味

さらに、白ソースはホワイトソースで、「ケチャップ → どろソース → ホワイトソース → 辛子」というのが真相であった。形から生地の食感や味、ソースの重ね塗り、そう言えば鰹節や青のりもかかってない。ならではなスタイルが光っている

もの自体はお好み焼きだが、金沢を感じられる『金沢ぼてぢゅう』。観光客的目線で言うとパッと目に留まりにくいスポットだし、北陸新幹線のパンフレットなどにも載ってないのだが、個人的には余所行きの顔ではないガチさがとても良かった。金沢観光の参考にしていただけると幸いである。

・今回紹介した店舗の情報

店名 金沢ぼてぢゅう
住所 石川県金沢市武蔵町15-1 めいてつ・エムザ B1F
営業時間 11:00~19:30
定休日 不定休(めいてつ・エムザに準ずる)

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.