JR東海の仕掛ける「いざいざ奈良」。この秋からは「西ノ京・平城宮跡編」というのが始まっている。

CMは鈴木亮平さんが唐招提寺を訪れるシーンからスタートし、最後はチャリを抱えて池越しに薬師寺を眺めるカットで終了する流れ。

今回はJR東海の提供で、唐招提寺と薬師寺の協力のもと、CMの舞台となった場所を案内してもらえることに。

・薬師寺

まずやってきたのは薬師寺。CMとは逆の順だ。しかし薬師寺ほどのレジェンド、もうだいたい観光されつくしているのではなかろうか?


あまりにも有名すぎる法相宗の大本山やで……。特に金堂の薬師三尊像の知名度はヤバい。歴史の授業だけでなく、美術の授業にまで出てきたりするしな。

それなりに歴史があって有名な場所は、何を紹介しても全日本人から「見たことあるし」みたいな反応をされてしまうというジレンマがある。

何か知られてないポイントとか、スルーされがちなスポットを見つけないと記事書けねぇぞ……そんなことを思いながら入口までやってくると


東塔・西塔特別公開中


そういえば、東塔は2009年から解体修理が行われていたのだ。老朽化が進んでいたらしく、110年ぶりの大修理だったらしい。

完了まで12年かかり、2021年の3月に要望を得て1年弱ほど一般公開するも、再び公開は終了。

23年の4月に、コロナの影響で延期されていた落慶法要(再建や修理などに対する祝賀の儀式)がようやく行われたそうだ。

つまり東塔の内部は2009年から2023年までの間、見られる機会がかなり限られていたということ。

これがその、解体修理を終えた東塔だ! 築1300年の国宝である。


地味な東塔に対して、向かいにあるカラフルなのは西塔。文化庁によると、1528年に焼失し、1981年に10億かけて再建されたものだ。けっこう新しい。



・違い

これは別の記事で紹介する唐招提寺の執事長からの情報なのだが……実は築1300年の東塔よりも、築42年の西塔の方が1300年前の姿に忠実らしい

色が違うとか、西塔の方が明らかに新しいとか、その辺はおいておこう。注目すべきは、塔の高さと屋根の反り具合の違い、そして窓の有無だ。

件の唐招提寺の執事長が、ゴリゴリに理系の建築マニア感ある人物で、建築様式についての話の流れで薬師寺の塔の話題になったのだ。

そこで聞いた話によると、西塔の方が屋根の勾配が緩く、塔自体が高いのだという。屋根の違いは写真で並べて見比べたかったが、西塔のイイ感じの写真が無かった。東塔の屋根はこんな感じ。


さて、西塔は築1300年の東塔を参考に建てられたのに、なぜ違う点が多いのか? それは今の東塔の姿が、1300年の間に色々あって本来の姿から変わってしまっているからだ。

まず屋根だ。東塔の屋根は年月とともに重さで垂れてしまい、新築の頃よりも勾配が急になっているのだという。高さも、木材が曲がったり縮んだりして低くなっているとか。

そして窓(連子窓)の有無。東塔にも元は連子窓がついていたとされるが、過去の修復時に変更されたと考えられているそう。

つまり西塔の姿は、建材の経年劣化による変形や修復に伴う改修を経る前の東塔の姿。より1300年前のデザインに忠実ということらしい。

なお、解体修理前の東塔は、基壇(塔の土台的な、現在は塔への階段がある部分)の高さも、今より低かったとか。塔自体の重さで沈下していたのだ。

解体修理の際にその辺も修理され、基壇は創建当初のものを保存しつつ、コンクリートで補強された。結果として、東塔は修理前より高くなったそう。

情報の裏取りで色々調べたところ、朝日新聞が詳しく報じていた。実際に薬師寺で二つの塔の違いを見比べてみると面白いだろう。



・再建

薬師寺は東塔を除くほとんどの建物が、1528年に焼失している。再建については1600年に旧金堂が完成し、大講堂は小さいバージョンが1852年に作られただけだったもよう。

しかし1968年に白鳳伽藍復興事業が始まり、金堂、大講堂、食堂、中門、東西回廊、そして先に紹介した西塔と、ほぼ全てが再建された。全部終わったのは食堂が完成した2017年

ちょ、待てよ……? 食堂は2017年に完成したが、その時はまだ東塔が分解修理中だった。

つまり、薬師寺フルスペックエディションは、東塔の落慶法要が完了する2023年4月まで、1528年以来誰も目にしていなかったということ……! まあ落慶法要前にも公開済みだが、そこはノーカンとしたい。


最新にして究極! 2023年より前に薬師寺済みの方は多いかもしれないが、1528年より前に薬師寺った古参勢を除けば、500歳以下の皆さんが目にした薬師寺は真の姿では無い

ちなみに、何だかんだで東塔に次いで古かった旧金堂は興福寺に移築され、そちらで仮講堂になっている。



・釈迦八相像

500年ぶりなのは外から見える建物だけではない。東塔と西塔の中にある「釈迦八相像」もだ! お寺から特別な許可を得て撮影させて頂いたが、これだ。


釈迦の生涯を8つのシーンに分けたブロンズ製の彫刻である。上の写真はそのうちの一相の一部分のみ。全体像はかなり巨大だ!

元は内部に木の芯を持ち、外側が粘度で作られたものが安置されていたという。西塔のオリジナルは、塔と共に焼けて消失。

東塔のものは、本多政勝が1644年に東塔を修理した際に経年劣化が酷かったことから撤去した旨が、奈良国立文化財研究所の「薬師寺西塔跡発掘調査現地説明会資料(PDF)」に記されていた。

東塔に四相、西塔に四相で、合わせて八相。西塔のものは先に完成して2015年の5月から公開されていたが、東塔のものが完成し、公開に至ったのは2023年の話

敷地内の建物がフルスペックになって見られるようになったのも1528年以来だが、西塔と東塔に半分ずつおさめられている「釈迦八相像」をフルストーリーで閲覧可能になったのも、1528年以来というわけだ!

今のところ公開日程は2024年の1月15日までを予定しているそう。拝観時間や拝観料などは薬師寺公式HPを見て頂きたい。

また、JR東海では薬師寺とドクターイエローがコラボしたお守りに拝観券をセットにしたプランの販売も、11月3日から行っているぞ。500年ぶりにフルスペックになった薬師寺を見逃すな……!!


参考リンク:いざいざ奈良薬師寺興福寺文化庁奈良国立文化財研究所(PDF)、朝日新聞
執筆&写真:江川資具
Screenshot:JR東海


▼案内してくださった生駒基達 副住職。


▼拝観者の多くは「釈迦八相像」に気を取られて、四隅にある四天王像に気付かない。


▼薬師寺とは無関係だが、奈良界隈のちょっとイイ感じのお店を紹介しておこう。「くるみの木 一条店」。


▼ケーキやごはんもあるカフェっぽいエリアと


▼雑貨屋のエリアがある。センスのいいセレクトショップ。