街角に民族料理があふれる東京。アメリカ、ヨーロッパ、中華、インネパ、タイ、ロシアと世界中の料理店が建ち並ぶが、パレスチナ料理専門店はかなり珍しいのではないだろうか。私(中澤)がそんな店に出会ったのは東京都北区の十条だ。
その店の名は『Bisan(ビサン)』。青く塗られた外観の色合いといい、看板に書かれた「パレスチナ料理」の文字といい、下町的な雰囲気の通りにおいて異彩を放っている。
・入店してみた
とりあえず入店してみたところ、隠れ家バーみたいな空間に長机が1つと2人席が2つあった。壁に飾られたゴテゴテした金ピカの皿や旗、アラファト議長の写真に早くも感じる中東み。
勝手に座っていいものかどうか。入口で待っていると外国人のスタッフさんが出てきて対応してくれた。スタッフさんいわく、ランチをやっているのは土日だけで予約制らしい。そこで出直そうとしたところ、「今は席が空いてるからいいよ」とのこと。柔らかい笑顔が印象的なナイスガイである。
・スドゥキさん
どうやら、この人がオーナーシェフのマンスール・スドゥキさんのようだ。パレスチナ出身で、現地から食材やスパイスを取り寄せて作っているという。
メニューは名前はおろか、外見も全然知らないものばかり。ほとんどのメニューは食材もよく分からないのだが、その中で唯一知ってる名前があった。ケバブである。そうか、ケバブってあの辺りの料理なのか。
・現地で最も食べられている料理
ケバブは秋葉原とかでも普通に食べられるので、せっかくならケバブ以外を食べたいところ。とは言え、メニューが多すぎて決められない。
そこでスドゥキさんにパレスチナで最も食べられているメニューを聞いてみたところ、「ホンムス」と「ファラフェル」とのこと。
・ランチセットを注文
メニューの説明によると、ホンムスはひよこ豆のペーストで、ファラフェルはひよこ豆と野菜のコロッケ風揚げ料理らしい。ひよこ豆がいまいちピンと来ないが、ランチメニューでこの2つとピタパンが付いて1500円のセットがあったので注文してみた。
セットは生野菜サラダとスープもついてきて彩りがある。で、スドゥキさんによると、ピタパンにファラフェルを挟んで潰して食べたり、ホンムスをつけたりするのだそうな。
ホンムスはクリーミーな味でパンによく合っている。ファラフェルはじゃがいもコロッケほどネチネチしてなくて、どちらかと言うとパサッとした食感。ゆえに、パンと食べてもクドさを感じなかった。
・衝撃を受けた料理
セットを食べてももう一品くらいいけそうだったので、「チキンソーセージ(税込1000円)」も追加注文。鶏肉を使ったソーセージはパレスチナでは珍しくないらしい。
食べてみると、豚のソーセージよりも柔らかくて弾力がある。食感の時点で豚とは全然違うのだが、さらに味はかなり意外だ。肉以上に卵を感じるのである。ひと口食べるとまるでオムレツみたいな焼いた卵の風味が口に広がったのだ。
ソーセージでこの味は、日本人にとってはかなり新しいのではないだろうか。我々が普段食べている部位以上の違いがソーセージにはあった。鶏でしかない味してる。
ちょっとしたメニューでも訪れた意味を感じられるこの店。店名になっている『Bisan』は出身地域の名前なのだとか。1つ1つの机を回り丁寧に接客していたスドゥキさんは、店を出る時見送りにまで立っていた。
ただ食べるだけではなく、気持ちよく笑顔になれる店である。十条に行くことがあればぜひ寄ってみて欲しい。
・今回紹介した店舗の情報
店名 Bisan
住所 東京都北区中十条2-21-1
営業時間 17:00~翌1:30 / 土日のみ予約制でランチあり11:00~15:00
定休日 水曜日
参考リンク:パレスチナ料理店「Bisan」
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
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