皆さんは「種子島」と聞いて何を思い浮かべるだろう。火縄銃かロケットが出てくれば、ほぼほぼ完全な正解である。種子島を代表する二大巨頭だ。

そんな種子島には、自然の神秘が作り出した秘境があるのをご存知だろうか。1日たったの2時間、限られた時間だけ訪れることのできる海蝕洞窟(かいしょくどうくつ)である。

・海蝕洞窟

そもそも海蝕ってなんやねんという話だが、ウィキによると「海洋があらゆるものを侵食することの総称」である。要は海に面した陸地や岩が、強い波の影響で削れたり侵食される状態を海蝕と言うのだ。

そして、種子島の東海岸には太平洋の荒れ狂う波でできた海蝕岩がたくさん存在する。その1つが「千座(ちくら)の岩屋」と呼ばれる種子島最大の海蝕洞窟なのである。

千人座れるほど広いと噂される千座の岩屋だが、そう簡単に訪れることができない。


なんせ、入り口が消えてしまうからだ。


・チャンスは1日2時間

自然の力で完成した海蝕洞窟は神秘的で、そこから臨む海は息を飲むほど美しい……とはいえ、千座の岩屋がロケットセンターのように種子島の看板を背負ってガイドブックのメインを飾ることはない。

その理由が「干潮時しか通れない」という最大の難点である。潮が引いた2時間だけ洞窟の入り口が開き、訪れた者を迎え入れてくれる。だが島の変わりやすい天候の中で、干潮の2時間を予想するのはとても難しいのだ。

・行ってみた

千座の岩屋があるのは中種子町と南種子町の境。空港からは車で30分ほどの浜田海水浴場の隣。無料駐車場もあるからレンタカーを停めることも可能。

浜田海水浴場からは沖合に島々を眺めながら砂浜を散歩できる。入り口から10分ほど歩を進めると、巨大な岩山が見えてくる。

ちなみに時刻は12時頃。岩山の側面まで来たら、こんなところに隙間が見えるではないか。



え、もしかしてコレ!?


そう、もしかした。想像よりもずっと低い洞窟が口を開けて待っていた。158cmの私が立ってこの高さ。向こうからはヒンヤリとした風が来る。満潮時は潮が満ちて進むことはできない。なんとか潜入できるみたいだ。

せっかく通るので海蝕岩を初めてマジマジと見たが、表面には細かな凸凹があり、長い年月をかけて波に侵食されたことを物語っている。

あと、とにかくヒンヤリしてる。体感2度くらい温度が下がった気がした。進むにつれ外気音が遮断されて、岩に打ち付ける波の音だけが響いているのも神秘感増し増し演出だった。



どんどん低くなる天井に、中腰スタイルで進んでいく。

洞窟の奥までは約1分ほどの距離だ。ところどころ広がって、秘密基地みたいなワクワク感がある。

そしてこれが天然の海蝕洞窟から見える、向こう側の景色である。

沖合の島が見え、青く透き通る波が押し寄せる私だけの砂浜……みたいな気分を味わえる。夏休みでもない限り混雑でゆっくり見られないということも無さそうだ。



ただし、強い日が差し込んでいるため、記念撮影をすると逆光になる。

右に立とうが左に立とうが真っ黒になる。あとで調べたら、ココではシルエットのみの写真を撮ることが「ロマンチック」とされているらしい。

この日はたまたま干潮が昼時だったが、夕方〜夜にかけて干潮になる時期は天然のプラネタリウムを味わえる。種子島の澄んだ空に浮かぶ星々を、伝説の洞窟から見上げてみるのはいかがでしょう?

・今回ご紹介したスポットの詳細データ

名称 浜田海水浴場(千座の岩屋)
住所 鹿児島県熊毛郡南種子町平山浜田741

参考リンク:鹿児島県観光サイト種子島の観光総合情報サイトwikipedia
執筆:こいずみゆか
Photo:RocketNews24.
[ この記事の英語版はこちら / Read in English ]