実写版『ONE PIECE』が話題になっているNETFLIX。あれは言うまでもなく、日本のマンガをハリウッドが実写化したものだが、実は現在、完全に日本製作の実写映画が海外ネットで話題になっている。
2023年9月11日から17日のNETFLIXのグローバル映画ランキング(Non-English)で1位になったその作品の名は『Once Upon a Crime』だ。海外の視聴者からは「ディズニーよりずっと良い実写化」という声すら見受けられる。
・キャストも全員日本人
もう少し海外ネットの声を拾ってみると「シンデレラの古典的なストーリーに新たな息吹を吹き込んだ」という声も。そう、本作はシンデレラのストーリーの中に赤ずきんが登場するというものだ。
ゆえに、物語の登場キャラは全員ヨーロッパ設定。だけどキャストは全員日本人。ちなみに、赤ずきん役は橋本環奈さんで、シンデレラ役は新木優子さんと最近の日本映画でお馴染みの面々だ。
・日本映画臭さ?
見てみたところ、息抜きのようなギャグが入りすぎる雰囲気も最近の日本映画っぽい。『銀魂』みたいな過度な抜け感があるというか。橋本環奈さんが神楽に見えてくる。
日本人の私としては役者さんが楽しんでいる感じにはほっこりするが、一方でこれほど日本向けに作られたものが海外でウケているのが謎だ。それが気になりながら見ていると、ただ単にコメディー風味のシンデレラではなくなっていく。
・行く末の予測できない会話
そのキッカケになるのは舞踏会に馬車で向かう途中の出来事。ここから物語が加速していくのだが、様々な謎がどんどん出てくる会話はキャッチボールというより、バレーボールでスマッシュを打ち合ってるみたいだ。
で、狙ったところに返せずにボールが場外にポーンと飛んでいっても、そこにも人がいるみたいな感じで物語がスピンアウトしていく。気づけば、1時間半くらい経っていて、ラストまでくぎ付けになってしまった。
まるで、攻めた劇団が演じる古典のエクストリーム現代解釈みたいな作品……と思っていたら、最後に表示された監督名は福田雄一さんであった。劇作家であり、実写版『銀魂』の脚本・監督もこの人である。なるほど、だからムロツヨシさんとか佐藤二朗さんが出てたのか。福田組というヤツである。
・シンデレラ実写化としての評価
なお、本作の日本語タイトルは『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』。青柳碧人(あおやぎあいと)さんの同名小説の映画化だが、海外ネット民の多くはシンデレラ実写化として本作に触れている様子。
それゆえ、「最後がちょっと……」「これはよくない」的な声も垣間見えるが、個人的に海外ネットの声をザッと見た感じでは賞賛の方が圧倒的に多いように思った。
・ただの日本映画では終わらないかも
改めて考えると、原作にある「ガラスの靴はなぜ消えないのか?」という疑問も新解釈で筋が通っている。さらに、見方によっては原作にあるルッキズムを風刺しているようにも見える。徹頭徹尾エンタメな雰囲気から、その辺はなんとなく個人の解釈に任せられている気がするためここでは深くは言及しないけど。ネタバレにもなるしな。
2023年9月21日時点で、日本のNETFLIXの映画ランキングでも1位の本作。日本映画ファンではない私だが、本作は最近の日本映画をたまに見た時に感じる「こういうのあるよなあ」というテンプレ感を越えてきた。海外でも古典として知られる作品が元になっているもののため、賛否両論が今後もっと盛り上がりを見せるかもしれない。
参考リンク:YouTube、Facebook、Netflix
執筆:中澤星児
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▼海外向けティザー映像のコメントにも賞賛が集まっている