寿司といったら、マグロやサーモンがネタの花形。人気の高い品々である。私(佐藤)ももちろん好きだが、最近は巻物やいなり寿司の美味しさに目覚め、ひそかに美味しいお店をリサーチしている。東京・伊勢丹新宿店の地下にも美味しいお店があるんだぞ。

そのお店「神田志乃多(しのだ)寿司」は1902年創業の老舗寿司店である。かねてから気になっていたので購入してみたところ、箸袋に記された「召上がり方」にやや困惑してしまった……。

・いつ食うのがベスト?

志乃多寿司は人形町に1877年創業の「人形町志乃多寿司總本店」があり、「神田志乃多寿司」はその暖簾分け。神田に本店を構えており、伊勢丹のほかに大丸東京などの百貨店にも出店している。このお店の販売商品は、いなり寿司・巻き寿司・太巻きなどの握りではない寿司の折り詰めである。

いわゆる「助六寿司」(いなりと巻き寿司)が主力商品で、それらを「志乃多かんぴょう巻」という名前で販売している。今回購入したのは8個入(税込1112円)だ。


包装紙をあけると、お店のなりたちについて記された紙が入っている。明治35年当時は自動車ではなく、箱車で商品を得意先に届けていたそうだ。きっとそこには人と人とのつながりがあったはず。今の世はドローンの宅配サービスが始まろうとしている。便利になるだろうけど、人のつながりは、よりいっそう希薄になるかもしれないなあ。


お店の創業時代に思いを馳せながら、付属の箸の袋に目をやると……何か書いてあるな


袋の左半分には「志乃多寿司の召上がり方」とあり……。


「調理後2時間目より10時間目までが最高の味」


右半分には「のり巻の特長」として……。


「最高の味、調整後6時間位まで」


え!? 10時間目までが最高の味なの? それとも6時間位までが最高の味なの? ひょっとして、いなりとのり巻きは別々のタイミングに美味しさのピークを迎えるってこと? 一緒に食わない方が良いのかな……。

う~ん……。たぶん、2時間以上6時間未満がベストか? つまり3~5時間のうちに食えば確実に美味いはずだ。どっちみち、「お早めにお召上がり下さい」が1番確実な情報だと思うので、それにしたがって食う! 今すぐ食う!!



・本当に美味いかんぴょう巻き

さて、こちらが8個入りである。いなりが4個でのり巻き(かんぴょう巻き)がそれぞれ4個ずつ入っている。


お揚げは甘く味付けされていて、コクのある黒糖の甘味が印象的だ。


シャリは酸味がしっかりしていて、中にガリが忍ばせてある。お揚げと一緒に食べることによって、甘味と酸味が調和してバランスの良い美味しさを作り上げている。時折口の中で弾けるガリのアクセントが面白い。


そしてかんぴょう巻き。正直申し上げて、今までの人生でかんぴょう巻きに関心を寄せたことがなかった。なぜなら、美味しいかんぴょう巻きを知らなかったからだ。巻物のなかでも脇役程度にしか考えていなかった。

しかしこのかんぴょう巻きは違った。いなり寿司以上の味と言っていい。この折り詰めにおいては主役である。


甘辛く煮たかんぴょうはジューシーで、ひと噛みすると煮汁がジュワっと口に広がる。こんなかんぴょう食ったことがない! 海苔の歯ざわりもよく、サイズ感もちょうど良い。10個は余裕で食える味、なのにこの折りには4個しか入っていないなんて……。



そういえば私が購入するときに、年配のご婦人がかんぴょう巻き12個入りを催促していた。あいにくその時はまだ調理中で販売されていない状況だったんだけど、今ではあのご婦人の気持ちがわかる。かんぴょう巻き、たくさん食いたい……

ということで、寿司といえば握りではあるけど、いなりや巻物にも美味しい一品はたくさんある。たまにはいなりや巻物にこだわってみるのも良いだろう。意外な発見があるはずだから。


・今回訪問した店舗の情報

店名 神田志乃多寿司 伊勢丹新宿店
住所 東京都新宿区新宿3丁目14-1
時間 10:00~20:00
定休日 なし(施設に準ずる)

参考リンク:神田志乃多寿司
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24