建築家・黒川紀章。建築に興味や関わりがなくても、一度は名前を聞いたことがある人も多いだろう。日本を代表する建築家の1人。中銀カプセルタワービルや国立新美術館が有名である。

そんな黒川紀章設計の別荘が長野県にある。私が期間限定で住んでいた中銀カプセルタワービルと同じカプセル住宅で、たびたび雑誌にとりあげられている注目の建物。先日カプセル仲間と行ってきたので、是非とも紹介したい!

秋晴れの2022年11月中旬。東京駅からJR北陸新幹線で約1時間20分かけて佐久平駅まで。駅前にあるイオンで食材や飲み物と、暖炉があるというのでホームセンターで薪を購入し、レンタカーでGO!

住宅地から山道に入り30分ほど。終わりかけの紅葉を眺めていると、カプセルハウスKらしきものを発見! 期待度が高まりながら、さらに進むと……

到着!

ん? カプセルは何処に……。

少し回り込むと、カプセル発見! どうやら屋上部分が入り口になっており、下に建物がある模様。全体が見えるという場所に移動すると……

おおお! これが黒川紀章の元別荘「カプセルハウスK」!

丸窓がナウシカの王蟲の目のようにドーム型になっている!

写真や映像では見たことがあるが、いざ実物をこの目で見ると、秘密基地のような、宇宙人研究所のような不思議な雰囲気がある。

思わず記念撮影。それにしても面白い建物である。ちなみにこの撮影スポットはけっこうな山道で、一歩間違えると危うい感じなので恐る恐る撮影した。

さて。屋上部分に戻り、さっそく室内へ。どんなふうになってるのだろう。ワクワク!

門を開いて階段を降りる。落ち葉の絨毯が美しい。

入り口に到着! 意外にもシンプルである。

それではお邪魔しまーす!

おお、中はログハウス的なかんじである。左には下に降りる階段があり、右手はリビング。

リビング部分はこれまたオシャレ。置物から何から何まで、センスのよさが冴え渡っている。

ちなみにこちら、ポスターやライト、壺などのオブジェ、内装、椅子や本、書籍などの備品も、竣工当時からのものや、黒川紀章が使用していたゆかりのものばかりだという。めっちゃ貴重!

リビングを見下ろすとこんなかんじ。テーブルが2卓あり、大人数でくつろげるようになっている。

ここがコア部分になっており、このリビングを囲むように4つのカプセルが配置されている。中銀カプセルタワービルではエレベーターとそれを囲む螺旋階段がコア部分だった。

それではさっそく、4つのカプセルを巡ってみたい!



・キッチンカプセル

まず1つ目のカプセルは、キッチンカプセル! これは中銀カプセルタワービルにはなかったもの。

丸窓じゃないのも新鮮で見晴らしがとてもいい。カプセル感をあまり感じられない。ここで料理するのがとても楽しみである!

廊下には黒川紀章直筆スケッチのコピーが! これもまた貴重だし、スケッチさえ展示物になるというすごさ。


・寝室カプセル1

2つ目は寝室カプセル。ドーム型の丸窓を除くと、中銀カプセルタワービルと同じ作りのカプセル。

そしてなによりも声を大にして言いたいのは、ユニットバスが使えること! 中銀カプセルタワービルは給湯設備が壊れていたためお湯がでなかったが、カプセルハウスKでは問題なく使用できる。有難い!

窓の部分も少し広めで腰かけられるようになっている。座りながら読書とかも良さそう。

次のカプセルへの移動は、リビングを取り囲む廊下でつながっている。素敵な別荘に来た感満載。


・寝室カプセル2

3つ目のカプセルも寝室カプセル。こちらも中銀カプセルタワービルとほぼ同じで、オリジナルな収納やオプションだったラジオやテレビがついている。テレビとカセットデッキのみ現在は使用不可。

ユニットバスとトイレはここと先ほどのカプセルにあるものを使用。


・茶室カプセル

最後のカプセルは、なんと茶室カプセル! 中銀カプセルタワービルに住んでいた頃、茶室のような大きさだなぁと思っていたのだが、本当にそのまま茶室にしてしまうとは!

掛け軸もあり、炉も切ってある本格派。丸窓を隠す障子も趣を感じる。

水屋もばっちり完備。茶会をする場合は、茶器その他は持ち込む。

茶室には布団を敷いて2人まで寝ることができる。カプセルで畳に布団。かなり斬新! それにしても着物で来たかったな。


・メインの寝室

さてすべてのカプセルを見終わったところで、最後にメインの寝室へ。

玄関すぐの階段を降りると、そこには大きなベッドルームが! 全体的に木目調で落ち着く贅沢な空間。元は娯楽室だった部屋を、97年に主寝室に改修したのだそう。

キングサイズのベッドはかなり大きく、3人くらい寝られちゃう広さ。ちなみに私はここに2人で寝たが、隣の人の存在を感じないスペースがあった。

丸窓も大きい! 思わず「K」を体現してしまうほど!

ドレッサーもあり、収納スペースもある。茶色いソファベッドがあり、これで最大7名が宿泊できる。


・晩ごはん&暖炉タイム

室内ツアーを終えたところで、キッチンカプセルにてクッキングスタート! IHがあり、調理器具やお皿など一通り揃っている。

夜は寄せ鍋。長野名物のイナゴの佃煮を豆腐に添えた前菜も。

落ち着いたところで、リビングにある暖炉でマシュマロを炙りながら、お酒をいただく。なんて贅沢な時間。キャンプファイヤー感もありワクワクしてしまう。

「暖炉とイイ女」風に撮ろうと思ったが、何度撮っても火サスチックになってしまう。


・カプセルシャワータイムからの二次会

さて、順番にユニットバスでシャワーを浴びる。中銀カプセルタワービルではお湯がでなかったため使用できず、やっと念願のカプセルシャワータイム! 夢のような時間だった。

その後は、フランスで発売されているという中銀カプセルタワービルのジェンガをつまみに二次会。

これが思った以上に白熱し、大の大人7人が深夜2時間ほどジェンガで一喜一憂した。おそらくカプセルハウスKのなかでのカプセルジェンガというのも、盛り上がった一因であろう。

さすがに寝なくちゃね、ということで就寝。おやすみなさい。

夜中の眺めはちょっと神秘的。

キングサイズのベッドで熟睡し、起きると数名は早朝散歩を楽しんでいた。私もレポするべきなのだが、睡魔に負けてギリギリまで寝てしまった。

茶室で布団の人たちも熟睡できた様子。ちょっとここでも眠りたかったな。


・翌朝

朝ごはんはイオンで買ってきたレトロ可愛いアン&バターパンと八ヶ岳牛乳、そして珈琲をいただき、12時のチェックアウトまでおのおのくつろぐ。

私はこの時間を利用して、ユニットバスにお湯を溜めてバスタイムを楽しんだ。一度はカプセルの湯船に浸かるという夢をこれで果たすことができ、感無量!

そんなこんなでカプセルハウスKでの一夜を大いに満喫した。



建築史上的にも大変貴重な建物で過ごすことは、そうなかなかない。しかもここ、1973年に建てられてから今まで、ごく一部の方にしか公開されず、知られることの少ない建物だった。

ちなみにメタボリズムとは、新陳代謝という意味からとられた建築・都市計画で、古い細胞が新しい細胞になるように、古くなったカプセルを新しいカプセルに変えられるようにという計画である。

2019年に黒川紀章のご子息が修復され、昨年2022年の10月から『Airbnb(エアビー)』での宿泊予約を開始している。現在は冬季休暇中だが、今年の4月中旬から再開される。

気になるお値段は、1泊20万円ほど。最大7名まで泊まれるので、1人につき約3万円。若干お高めではあるが、ときには都会の喧騒を離れ、有名建築家の別荘に泊まってみるのもいいのではないだろうか。

参照リンク: MIRAI KUROKAWA DESIGN STUDIO
執筆:千絵ノムラ
Photo:RocketNews24.

こちらもどうぞ! → 「【住んでみた!】中銀カプセルタワービル 7ヶ月間サバイバル滞在記 / 最後の住人の記録
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▼カプセルハウスKからの夕焼けは絶景

▼現オーナーである黒川紀章のご子息、黒川未来夫さん

▼カプセルハウスKの前で「K」!

▼カプセル仲間みんなで「K」!

中銀カプセルタワービル先輩住人の声さんと「K」!

▼茶室に寝ている声さんと宇宙人のマナブ

▼真っ白なユニットバスに、透明なお湯!

▼お湯を溜めている映像もどうぞ! ユニットバス内の様子もバッチリ見られる

▼キッチンカプセルに置いてある昔のテレビは、竣工時にはリビングで使用していたもの。レトロフューチャー感が増して魅力的だ

▼リビングのセンスの良さにうっとり。レコードプレーヤーもあるし、Bluetoothスピーカーもあるので音楽も聴き放題

▼黒川紀章の著書を集めた図書コーナーも

▼春と夏は緑がとても綺麗だそう

▼公式の写真。めちゃくちゃかっこいーな

▼おまけ。中銀カプセルタワービルメタボリズムTシャツを着て、長野まで向かう車内にて

▼おまけ2。佐久市には北斗の拳とのコラボグッズなどが売ってた!

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