私が中銀カプセルタワービルに住んで早5ヶ月が過ぎようとしている。当初は1ヶ月の期間限定だったが、延長に延長を重ね、カプセルでの暮らしもかなり板についてきた。何が楽しくてここまで延長したかというと、そこにはカプセル住民との交流がある。

そこで“中銀カプセルタワービルの中の人”と題して、個性豊かな面々を紹介していきたい。第一弾はカプセルをセカンドオフィスとして活用している記者・奥山さん。女性が圧倒的に多いカプセルコミュニティの中で、数少ない貴重なメンズである。

奥山さんは北海道生まれの44歳。スケートが得意な道産子で、大学進学と共に京都に移り住み、冬の室内のあまりの寒さに電熱器を布団に入れ、ボヤ騒ぎを起こしたという黒歴史を持つ。学生時代はあるアングラ劇団の看板女優の追っかけをしており、その物静かな印象とは裏腹に、濃ゆく情熱的な青春時代を過ごしている。

・中銀カプセルタワービルとの出会い

そんな奥山さんと中銀カプセルタワービルとの出会いは2015年6月。ビルの保存活動を知る中で、住民たちが知恵を絞りながら工夫して住み続けていることに興味を持ち、自身も保存活動をお手伝いできたらとカプセルの空き情報を待つことに。

しかし3ヶ月後に実際に連絡が来ると、正直「出ちゃったなぁ……」と戸惑いが生まれ、そうこうしている内に他の購入希望者に先を越されてしまう。その悔しさも後押しし、次の空き情報では「えいや!」と即購入を決意。

・タクシーで現金輸送

老朽化が進み、すでに不動産価値がほぼなかったことで、ローンは組めずキャッシュ一括払いのみ! 銀行から引き落としてタクシーで現金を運ぶ際は、まるでドラマのようだったと回顧する。ちなみに当時、人生最高額の1番のお買い物だった。

・セカンドオフィスとして

購入したものの特に目的の用途はなく、保存活動の一環になればと物置くらいにしか考えていなかったが、週1ペースで仕事場にしたり、たまに人を招いて飲んだりしていた。

しかしコロナの影響で、現在は週の半分以上をここでリモートワークをすることになり、いまや立派なセカンドオフィスになる。また交流の場としても、ときたま活用されている。

リモート会議では、この大きな丸窓に時々ツッコミが入り、反応してくれる人と仲良くなれるそう。またビルが解体直前ということもあり、メディアで話題になるのに比例して、見学希望者も増えたという。

・カプセルの良いこと、悪いこと

カプセルで良かったことを聞くと、住民とのコミュニティだと言う。

奥山「仕事も年齢も趣味も違うのだけど、カプセルだけでつながっている。けれど、そのカプセルへの思いも人それぞれ。好きなのは一緒だけど、どこが好きかも微妙に違う。同じ方向は向いてないけど、どっかで繋がっている。ありそうでない、この感じがとても良い」

逆にカプセルでの悪いことを聞くと、特にないそうだ。ただ不便なのはトイレが使えないこと。奥山さんのカプセルは高層階にあるのだが、トイレは1階の共有のものを使っている。なので行く回数を減らすため、飲み物も制限しているという。

・1番の思い出はDIY

カプセルでの1番の思い出は、意外なことに購入後のリフォームだった。残念ながら写真は残っていないのだが、当初はカーペット敷で状態も悪かったため、全て剥いで杉材を敷き詰めた。そのため、奥山さんのカプセルは今でもほんのり杉の良い香りがする。

また壁にペンキを塗ったりする過程で、かつてのカプセルの歴史の片鱗が見え隠れし、思い返せばとてもカプセルらしい時間だった。

・伝説のピンクカプセル

奥山さんのカプセルの最大の特徴は、元ピンクカプセルであること。ピンクカプセルとは、風俗産業に使われていたとされる部屋で、壁紙がピンクと大理石風の模様で覆われていたらしい。しかも140個あるカプセルのうち2、3室のみだというので、ものすごくレアである。

その証拠として、奥山さんカプセルのユニットバスの扉と窓側に、かつてピンクだった名残がある。私もこれを見た時はテンションがダダ上がりした。撤去前には是非ピンクカプセルを復元して欲しい!

・カプセルの今後について

中銀カプセルタワービルは来年解体予定とされているが、6年も所有している奥山さんは寂しさはないだろのだろうか。

奥山「なくなる前提だからこそ、色々楽しむ気持ちも生まれたし、カプセルがなくなっても人間関係は続いていく。家に縛られず、住む場所ごと動かせばいいという設計者の黒川紀章の言葉のように、そこで生まれた人間関係は動いていく」

なるほど。お酒好きで、実はとてもお茶目な奥山さんだが、さすが記者。真っ当なお言葉が返ってきた。カプセルがなくなるその日まで、セカンドオフィスとして多いに有効活用して欲しい。

ちなみに私が除湿機の水で水風呂に入ったのは、このカプセルである。その節はお世話になりました! こちらの記事の写真にも奥山さんが登場しているので要チェックである。

執筆:千絵ノムラ
Photo:RocketNews24.

こちらもどうぞ! → 「【まるで宇宙船】あの魅惑の建物「中銀カプセルタワービル」に住むことになった!」

▼アムロのTシャツがとても良く似合う奥山氏。個性的な柄のTシャツを多く所持している

▼おしゃれで人気の奥山カプセル

▼カプセルに合わせて買った黄色い椅子は、ベッドにも早変わり

▼主人不在時にはE.T.が座ってるぞ

▼自身でペンキを塗った自慢の白壁

▼ヨドバシカメラで購入したシャレオツな電球

▼エアコンの隅から雨漏りあり

▼物置と化しているユニットバス。水は一切使っていない。床に使った杉材の残りと、除湿機水風呂の時のタンクがある

▼丸窓に合わせて買った丸いお盆。大体、酒瓶が載っている

▼お気に入りの高速ビュー

▼首都高だけど交通量は少ない

▼特に夜の眺めが好きらしい

▼自宅から持ってきたカラーボックスで作った本棚。カプセルで読む「風の谷のナウシカ」は格別とのこと

▼除湿機水風呂を決行する前に掃除をする奥山氏

▼中銀カプセルタワービルカレンダーの7月を担当