2022年11月11日に公開された映画『ブラックパンサー / ワカンダ・フォーエバー』が上々のスタートを切ったようだ。全米では今年NO.2となるオ―プニング1億8000万ドルを叩きだし、全世界でも興行収入は3億3000万ドルを超えたという。

以前の記事でお伝えした通り、個人的にも同作は「ここ最近のマーベルの中ではかなり上質な作品」だと感じているが、それでも1つだけメチャメチャ引っ掛かっているところがある。この記事はネタバレが多く含まれているので、ご注意の上ご覧いただければ幸いだ。

・物語の核心

本作の表テーマでもあり裏テーマでもあったのが、ズバリ「チャドウィック・ボーズマン亡き後のブラックパンサーどうするんだ問題」である。というか『ブラックパンサー / ワカンダ・フォーエバー』はそこに尽きると言っても過言ではない。

前作でブラックパンサーを演じたチャドウィック・ボーズマンは、2020年に病のため急逝。そのため「誰がブラックパンサーになるのか?」「どんな動機でブラックパンサーになるのか?」が、本作の核心と言ってもいいハズだ。

で、大方の予想通り、新ブラックパンサーになったのは、妹のシュリ。これに関しては予告編動画で「きっとシュリなんだろうな~」という雰囲気をビシビシ出していたため、特に驚きはない。「でしょうね」というのが多くの方の率直な感想であろう。

・シュリでも全然いいんだが

そしてもちろん、新ブラックパンサーがシュリであることに異論がある人もそう多くないハズ。血筋的にもシュリが新ブラックパンサーになるのは自然な流れであり、むしろ「そうあって欲しかった」という意見が多数派ではなかろうか? そういう意味で本作は「無理のないシナリオ」であった。


……のだが。


シュリが新ブラックパンサーになったのはいいとして「どんな動機でブラックパンサーになったのか?」が、記者にはイマイチわからなかった。もっと嚙み砕いていうと「シュリってブラックパンサーになりたかったの?」という疑問がいまだに頭を離れないでいる。

劇中、シュリの「次のブラックパンサーになりたい」もしくは「ならなくては」的な描写は皆無で「ブラックパンサーはもういないのよ」的なスタンスだったではなかっただろうか? なんなら、なし崩し的にブラックパンサーになってしまった印象だ。

・ブラックパンサーになりたかったのか?

記者も純粋な方なので、シュリから「ブラックパンサーになりたい」「私がならなくちゃ」的な気配を感じ取ったら素直に「シュリ頑張れー!」「シュリのブラックパンサーも応援しちゃうぞ!!」となっていたハズである。

……が、イヤイヤなったとまでは言わないものの、シュリの意思とは無関係に “流れでブラックパンサーになっちゃった感” がどうしても否めない。映画をご覧になったみなさんはどうお感じになっただろうか? もしかして記者が重要なシーンを見逃していたとか……?

再三申し上げる通り、本作において「シュリがどんな動機でブラックパンサーになるのか?」は核心中の核心である。そこがモヤモヤしているがゆえ「ワカンダ・フォーエバーを手放しで賞賛できていない」というのが正直な感想だ。いや、全然おもしろいんだけどね。

・ネイモアの世界観も……

ついでに言ってしまうと、本作でMCU初登場となった「ネイモア」は非常に魅力的なキャラクターだったのだが、彼が収める海中の王国「タロカン」での描写にはやや違和感を得た。

ネイモアがシュリと一緒にタロカンを散策した際、国民は言葉を発さなかったのに、いざ出陣になったときは全員が大声を張り上げているではないか。「海の中での細かな設定」については、やや詰めが甘かったと言わざるを得ない。

前作が世界的なムーブメントを巻き起こしたこと、MCUがここ最近ピリッとしないこと、そのMCUフェーズ4の最終作であることから本作には過剰なプレッシャーがかかっていたことはわかる。記者自身「全てを吹き飛ばせ……!」と思っていたが、シュリの心持ちがイマイチわからず「スッキリー!」とならなかった。

……が、それでも先述した「ブラックパンサー / ワカンダ・フォーエバーはここ最近のマーベルの中ではかなり上質な作品」という感想にウソはない。まだの方はぜひ劇場でご覧になって欲しいし、シュリの件をご存じの方はぜひ記者に教えていただきたい。

参考リンク:ブラックパンサー / ワカンダ・フォーエバー(公式)
執筆:P.K.サンジュン
Photo:©MarvelStudios 2022

▼予告編はこちら。
https://www.youtube.com/watch?v=GvYzl7x0Fi0