シンガポール在住の友人に聞くところ、シンガポールに住む日本人は大きく2種類に分類できるらしい。 “シンガポールの生活を楽しむ人” と “本当は日本に帰りたい人” ……後者はローカルフードなどに目もくれず、日本料理店へ通う日々を過ごしているのだそうな。

「せっかくシンガポールにいるのに」という気もするが、仕事の都合で仕方なく来ていると考えれば気持ちも分からなくない。そんなションボリ・シンガポリアンたちにとってオアシスと呼べるのが、シンガポール内に8店舗ある『スシロー』だ。

・大繁盛してた

私が今回訪れたのは、シンガポールの銀座とも言うべきオーチャード通りショッピング街にある『Isetan Scotts(伊勢丹スコッツ)』店。



シンガポールではスシローアプリが利用可能。いつも混み合うので、なるべく予約をしてから向かうべし。

客の多くは家族連れで、カウンター席であれば割とすぐに着席することができる。この感じ、日本と同じだね!

店内の雰囲気やシステムもだいたい日本と同じ。

大きく違うのは、当たり前だけど値段だ。一番安い赤色の皿が2.3SGD(約233円)、一番高い緑色の皿は4.9SGD(約502円)。どちらも日本より100円少々お高い計算になるワケだが、シンガポールの物価を考えれば全然高くない。むしろ安すぎるくらいである。

それから、日本ではタダな『緑茶』が1.5SGD(約154円 / 飲み放題)。

しかも席を立って茶をつぎに行くシステム! 外国ならではの事情(ヤケド防止など)も関係しているのだろうか?


・スシローマニアに聞いてみた

さて。注文パネルを一通り眺めてみたものの、素人ゆえ「どのメニューをチョイスすべきか」がイマイチ分からない。スシローは頻繁に新商品を発売することで知られており、 “変わりダネと見せかけた定番商品” も珍しくないからだ。

判断を誤ると “わざわざ海外へ行って定番メニューを食べてきた人” になりかねない……ってことで、私はシンガポール版スシローのメニュー表を当サイトの中澤記者に送りつけてみることにした。

スシローマニアとしてテレビ出演を果たした経験もある中澤記者。きっと彼なら注目すべきメニューを教えてくれることだろう……よろしく頼んます!


中澤「そうですね……『麻婆茄子』『スタミナ肉いなり』『えび明太チーズ』あたりは日本で見かけないです。『ドラゴンロール』『サーモンアボカドロール』も、いかにも海外っぽくて気になるところかな〜。

それより個人的に引っかかるのは『ハンバーグ』です。日本のスシローだと基本ハンバーグは “にぎり” で、軍艦に乗せるのはミートボール。『ハンバーグの軍艦』は初めて見ましたね」


なるほど……やはり持つべきものはスシローマニアの同僚である。さっそく言われるがままに注文してみよう。

まず中澤記者が興味を示した『ハンバーグ(軍艦 ver. )』(2.9SGD / 約305円)から。日本の『ハンバークにぎり』はデミグラスソース味だが、こちらは大胆にマヨネーズのみでいただくらしい。

……まぁ、こんなもんウマいに決まっている。私はそれほどマヨネーズが好きではないのでソースは『日本のてりやき』のほうが好みだが、にぎりと軍艦で比較すると軍艦のほうがハンバーグに合うと感じた。『てりやきハンバーグ軍艦』が登場したら最強なのではないか?


・どんどんいこう

マヨでテカテカになった舌を落ち着かせるため、次は比較的淡白そうな『スタミナ肉いなり』(2.3SGD / 約240円)いってみよう。

甘く煮た牛肉と煮卵がおいなりさんの上に乗っかって、まさに『トリプル煮物』というべき芸術的な寿司に仕上がっている。外国人にウケるのかどうかは不明だが、海外限定商品に留めておくのは惜しいと感じる逸品だった。日本での登場が待たれる。

エビ好きが思わず眉をひそめる『えび明太チーズ』(2.3SGD / 約240円)は、悔しいけどクセになる味。ここでいう『明太』は明太マヨのことで、コレが不思議とエビに合う。なお日本のスシローでは『えびチーズ』『えびバジルチーズ』が販売中だぞ。

アボカドロールをウナギで巻いた『ドラゴンロール』(4.9SGD / 約512円)は1皿3貫。実は私、アボカドもあまり得意ではないのだが……コレは全然イケた。キュウリがアボカドの濃厚さとイイ感じにマッチし、日本人が想定する “寿司” の体裁をキープしている。

対して『麻婆茄子』(2.3SGD / 約240円)はギトギトのベチャベチャ。ジャンク寿司の極みとも言うべきこの一皿、麻婆茄子としてはおいしい。しかし「シャリに乗せる必要があるのか?」と訊かれると……明言を避けたい所存である。


・謎すぎるコイツの正体

さて今回もう1つ、スシローマニアの中澤記者をして「想像もつかない」と言わしめたメニューがあった。それは……


『りゅうきゅう』(2.3SGD / 約240円)である!!!


『りゅうきゅう』と言われて日本人が真っ先に連想するのは「琉球」(沖縄の別称)、もしくは高知県の名産野菜ではないだろうか。しかし電子パネルに見る『りゅうきゅう』は、そのどちらも全く連想させないビジュアル……!

ってか、これウチの父が「スシローで一番ウマい」と断言したことで知られる『倍盛り海鮮漬け』(日本のメニュー)によく似ているような? さっそく注文してみると……

やはり大葉とゴマがないこと以外は『倍盛り海鮮漬け』に酷似!!! つまり “魚の切れ端を贅沢に乗っけたお得な軍艦” なのだが、シンガポール版のほうがタレの色が濃く見える。

うん。やはり『倍盛り海鮮漬け』より少しだけ辛く、甘みが強い。日本のメニュー『まぐろユッケ(卵黄醤油)』と同じ味付けな気もするが確信は持てない。ネタはおそらくマグロとカンパチ。焼肉のタレに漬け込んだような、万人ウケするおいしさだ。

なお「なぜ『りゅうきゅう』なのか?」という謎について、その後の調べで大分県の郷土料理『りゅうきゅう』に似ているという事実が判明した。ただし農林水産省のホームページによれば『大分のりゅうきゅう』は醤油、ゴマ、ショウガなどで味付けするもの。

シンガポールの『りゅうきゅう』とはかなり味付けが異なるように思える……が、そもそも『大分のりゅうきゅう』も「なぜ『りゅうきゅう』なのか?」がハッキリしない料理らしいから、そこは自由でOK……なのかもしれない?

執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.