北陸から九州までのどこかの往復切符が、たったの5000円で入手できちゃうJR西日本のサービス “サイコロきっぷ”については以前当サイトで紹介した通りだ。

記者が引いたものは行先が兵庫県の餘部(あまるべ)だったので、実際に使って出かけてみた。そこで今回はきっぷの使用感ほか、同じく餘部が当たった方の参考になればという思いでお届けする。


・鉄道を楽しむ旅

まずはネットにて切符を予約、JRの窓口で発行してもらい準備は万端だ。ここで一つ、問題が発生。餘部って何があるん……? 


サクッと検索してみたところ、鉄橋と海と電車の写真が出てきた。この風景はどこかで見たことがある気がする。多分電車の何かについて調べていた時に目にしたのだろう。

なるほどなるほど。今回の旅は鉄道をめいっぱい楽しむということでオーケー? では旅の主旨を見出したところで、餘部へ向かって出発だ。

切符は大阪市内発着と決まっているので、記者は暮らしている奈良から大阪まで出る必要がある。その際に別途交通費がかかるが、まあ良しとしよう。

通勤ラッシュの波をかいくぐり、大阪駅で城崎温泉行の「特急こうのとり1号」を待つ。餘部行の良いところは、城崎温泉での途中下車も可能であることだ。


極論すれば、餘部へ行かずに城崎温泉でゆっくり過ごすのもアリということ。選択できることも、餘部行切符の魅力のひとつである。

「こうのとり」に乗って、知らない景色をぼんやり眺めること3時間あまり。ついに城崎温泉駅に到着だ。ここで餘部行に乗り換える訳だが、次の電車はなんと約1時間後。


一旦城崎に降り立ち、ふらりと街中を散歩して再び乗車することにした。乗り逃すとまた1時間後、なんてことになり兼ねないので要注意だ。


・写真を撮りたいけど電車の本数が少ない

時間になると、山陰本線の普通列車鳥取行がやって来た。オレンジ2両の、レトロ車両がとても良い。ひと通りパシャパシャと記念撮影をして乗車だ。


車内は、同じくサイコロきっぷの利用者とみられる人でいっぱい。平日の昼間だったがほぼ満席で、やはりみな餘部駅で下車した。


この餘部駅の魅力は、なんといってもロケーションの素晴らしさ。あいにくこの日は雨模様だったが、降り立つと同時に目の前に広がる日本海は圧巻だ。


ホームが高台にあるからこその、景色であるともいえる。電車が走る鉄橋が2010年に新しいコンクリート製の橋に架け替えられたようで、その際に周りが整備されており、駅周辺をウロつくだけで楽しい。

駅から目と鼻の先には道の駅があり、食事もできる。きっぷを持つ同志の動きを見ていると、道の駅で休んでから散策している人が多数だった。


駅から数分の展望台に登れば、電車と鉄橋、海を含めた写真が撮れるのだが、この日記者以外は展望台に人の姿はなし。

それもそのはず。電車の本数が少ないため呑気に写真撮影をしていると、次に乗ることが出来る電車は1~2時間後になってしまうのだ。

記者は是非ともカメラに情景を収めたかったので、展望台にスタンバイ。「えらい長いことおらはるんやねえ~」と道の駅の職員さんに驚かれるほどには、餘部駅に滞在することになってしまった。


お察しの通り、餘部駅周辺には気軽に行くことが出来るそのほかの観光地がほぼなく、宿泊地も2軒ほど。全く鉄道や鉄橋などに興味がない人にとってみれば、時間を潰すのは難しいのかもしれない。

しかしながら、ほかではなかなか目にすることが出来ない素敵な景色だ。記者としては、1時間に1本来るか来ないかの電車を逃してでも、カメラやその目に展望台からの景色を収めるめることをオススメする。


・ちょっとした冒険気分を味わえるサイコロきっぷ

そんなこんなで餘部にてゆっくりと時間を過ごし、帰りの電車に乗り再び城崎へ。一人旅で温泉で豪遊するのもなんだしと、城崎から数駅先の豊岡周辺のビジネスホテルにチェックインする。

先に書いた通り餘部には宿泊地がごくわずかしかないため、城崎かその周辺、または鳥取方面に足を向けて宿をとると良いように思う。そうして次の日はサラッと豊岡・城崎観光をして、帰路に就いた次第だ。


以上の経験により、これから餘部に行く予定の方に言えることはひとつ。あそこへ行こうここへ行こうと焦ることなく、今目の前にあるものを最大限に吸収しゆったり楽しむ心づもりで出かけるべし。

記者の場合は日々暮らす関西圏内から出ていないものの、ちょっとした冒険気分を味わうことが出来て非常に満足した。なんならもう一度くらい、サイコロきっぷを引いてみようかと思っているぞ。

参考リンク:サイコロきっぷ
執筆:K.Masami
Photo:Rocketnews24.