夏休みシーズンもついに終了。皆さんは、なにか夏っぽい体験ができただろうか? 私には特に夏休みとかは無いので労働する日々だったが、1つだけ夏っぽい事をやったぞ!
生まれてから40年にして、初めて日本の花火大会を体験したのだ! いやー、思っていた以上に予想していたのと違ったぜ。
・ほぼ未経験
40年も生きてきた日本人が、日本で花火をまともに見たこと無いとかある? となりそうだが、マジで見た記憶がない。
一般的に多くの人が花火体験を済ませてそうなキッズ時代の夏は、親がアンチ祭り系の陰キャ教育ガチ勢だったので朝から晩まで塾の夏期講習の記憶しかない。
多くのアニメで1話くらい用意されがちな夏祭り回にて花火の描写を見た経験なら豊富だが、悲しいかな2次元。
3次元で見たことがある花火大会的なモノと言えば、ステイツの独立記念日のものだけだ。住んでいたころは1人で見ていた。
日本では、例えば家のベランダから遠くにあがっている花火の片鱗をチラっと見た程度。まあ、細かい話をすれば、トップガンマーヴェリックのレッドカーペットで、トムがファンのために贈ってくれた花火を見ている。
しかし、これを花火大会と言っていいかは疑問だろう。この経験だけで「日本の花火を見た」と言ったら、花火ガチ勢にブチ殺される程度には、花火を見ていないのでは。
日本の夏に花火大会は外せない。やはりちゃんとした花火大会で、デカいのを見なければなるまい。
・場所取りレース
ということで8月に入って早々に、首都圏でも最大級の花火大会「みなとみらいスマートフェスティバル」を見に行ったのだ。
催しを知ったのが前日だったため、チケット等は買っていない。当日の昼過ぎに無計画に桜木町へ。現地で良さそうなスポットを探せば何とかなるんじゃねと思って。
国際橋まで行くと、海上にて準備が進んでいる様子が見えた。おー、やってるやってる。あの船から上がるわけか……。真後ろに停泊してるUSNSサルヴォアとか特等席じゃん。
打ち上げ場所がそこなら、横浜みなと博物館とか日本丸付近がイイ感じのスポットだろう。しかし、場合によっては花火鑑賞が禁止かもしれない。とりあえず下見しておくか……
場所取りエグすぎんだろ!
まだ13時半やぞ? 花火は19時半から。あと4時間もあるというのに、早くも横浜みなと博物館の屋根の上付近の岸壁沿いは、ブルーシートや三脚で場所が確保されまくっている。
凄まじい猛暑にもかかわらず、待機している人もけっこう多い。ガチめな三脚を用意しているカメラおじさんやカメラおばさんについては、そういう生き物なのでいいだろう。
機材の明らかな備品っぽさとダルそうな雰囲気から、仕事で撮りに来させられていると思しきメディアのカメラマンもまあ、仕事だろうしな。
しかし純粋に花火を見に来たと思しき浴衣を着こんだエンジョイ勢や、キッズを連れたファミリー勢、パリピ気味のJKグループまでも場所取りに参戦してきているッ!!
思っていた以上に日本の花火大会の場所取り戦争は過酷なようだ。おののいている間にもスペースがなくなりつつある。
しかたない、私もここで4時間待とう。そして花火まで2時間となった17時過ぎにはこの通り。最前列は三脚で埋まり、後ろは人でぎっしりだ!
ちなみにこの時、港一号橋梁から汽車道にかけても三脚と待機勢で埋まっていたのだが、そちらは後にスタッフだか警備員だかがやってきて退散させられていた。
太陽が低くなるとともに暑さは和らいできて、多少は楽になった。が、それでも地面のコンクリに蓄積された熱で人肉が石焼き芋状態だ。
座っていても熱い。かといって、立っていても疲れる。マジで地獄。ここにいる人々の大半は昼過ぎからの待機勢だが、何人か暑さと疲労で死んでいてもおかしくない。ちゃんと生きてんのか?
・開始
そしてついに時刻は19時。フェスの開始時刻だ。有料の会場ではなにか催しが行われていたのだろうが、私のいる場所は、厳密にはフェスと無関係なただの広場なので何も起きない。
フェスは19時に開始でも、花火の打ち上げは19時半だからだ。しかし、なんとなく周辺の人々がソワソワしはじめているのがわかる。そしてついに迎えた19時半。
花火キタァァァァァアアアアアア!!!!
きっと海の方はイイ感じに風が吹いていたのだろう。煙が充満して何も見えなくなるようなことはなく、ベストなコンディションで花火が爆発している。
素晴らしく見応えがあるではないか。あのデフォルトでお高いホテルの花火側の客室とか、今日の宿泊料はマジでえげつない事になってんだろうなぁ。
・意外に静か
それはともかく、満を持しての花火である。これには周辺で見ている何時間もの地獄の待機時間を乗り越えた花火民たちも、さぞブチ上がっていることだろう。
そう思って集まった人々をチェックすると、思っていた以上に無言&無表情……! 花火の爆発音が凄まじいので気が付かなかったが、集まっている人数のわりに人々は静かだ。
カメラ勢はまあ、撮影に集中しているのだろう。しかし、後ろで座って見ている非カメラ勢も無言、無表情で不動の姿勢。
これは意外! もっと「HOOOOOOOOOOO!!!!」とか「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!!!」とか叫びながら興奮しつつビールなど飲むものと思っていたが、そうではないらしい。まるでカニを食ってる時みたいだ。
あと、アニメや漫画で見た情報によると、リア充カップルなどが「たまや」と叫ぶのが通例。しかし、実際には誰も誰も叫ばないもよう。
ひときわデカい花火が上がった瞬間などは皆そろってビクッとし、「おぉ……」と静かに感嘆したりするが、基本は石像のようである。
コロナ禍なので自発的にサイレントを貫く人が1000人単位で集まっている疑いも……いや、たぶんそれは無いな。花火の開始までは普通に人数相応に賑わっていたので。
やはり花火の時はこうなるのだろう。そうして、ただただ花火の音と、時々出る静かな驚きの声だけが続き、最後の花火の残滓がシュルシュルと散って終了。
人々はどうするのか見ていたら、秒で帰宅モードに移行した。何事も無かったかのように撤収を始めている。おい、もっとこう、静かにたたずんで余韻に浸るとか、そういうのは無いんか……!
まるで、狙った女に性欲全開の猛ラッシュをかけるも、ヤリ終えたら放置してヤニを吸い始める系メンズみたいな切り替えの速さだ。
花火にかける熱意も極まっているが、終わった時のドライさも極まっている。それとも単に、もう何度も見ているからそんなもんなのか。
これがジャパニーズHANABIスタイル……! 花火のクオリティも素晴らしいが、猛暑の中数時間に及ぶ待機も辞さない民衆の熱意と、鑑賞中のサイレントな姿勢。
そして終わってからの、スーパードライな切り替えの速さ。全てが想定外で凄く面白かった。まあ、これは首都圏民特有のものである可能性は否定できない。次はもっと田舎の花火大会に参戦してみたいところ。
執筆:江川資具
Photo:RocketNews24.
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