なぜそうするかわからないが、習慣なので続けているというのはよくあること。地域一体で取り組む行事なんて、その最たる例ではなかろうか。

どうやらこれは人間だけでなく、鹿界隈でも同じらしい。この夏も例の如く、あの場所に集まる鹿たち。その姿を見て、そのようなことを思った次第だ。それでは2022年も、いつものように『鹿だまり』観察といきましょうか。


・鹿が集まる時期が多分早まっている

はて、鹿だまりとは何ぞやという人もいらっしゃるだろう。

奈良県奈良市では夏の夕方、どこからともなく彼らがわんさか集まってくる。その状態を指して、そう呼んでいるのだ。

最もにぎわうエリアは、近鉄奈良駅から徒歩約10分の奈良国立博物館前。記者は毎年この時期博物館前へと足を運び、鹿たちの動向に目を凝らすことを課題としている。

少し前までは7月~8月にかけてが、最も盛り上がっていたように思う。しかしこの数年、鹿が集まる時期は早まっている様子。最近は5月末から、遅くても6月中頃にはスタートを切っている。

今年2022年の6月と言えば、30℃超えの日も少なくなかった。もしかすると「暑いわ~。もう夏だわ~。あそこに行かないと!」と鹿たちが思った……可能性も無きにしも非ず。

記者は例年、8月の上旬から中旬あたりを最終観測日としている。今年もそのようにしたが、先に書いたように段々と鹿たちの行動も前倒しになっている気がしたので、7月中旬より何度か現場へ足ぶことにした。


・例年よりかなり集まりが悪い7月中旬

その日は曇っており、最高気温も30℃を越えるか越えないかくらい。鹿たちが集まりはじめる夕方は、程良い暑さで比較的過ごしやすかった。

年々鹿だまりの知名度が上がっているのだろう。午後6時ごろには既に、待ち構えている風な人の姿もちらほらと見られる。みな思い思いに、鹿たちを眺めたり写真を撮ったりしていた。

6時半を過ぎると、鹿たちも落ち着いた模様。それぞれ定位置を決め、くつろいでいた。ざっと数えたところ、60頭ほど。

例年に比べると半数以下で、かなり集まりが悪い。来るのが少し早かったのかもしれないと、日を改めることにした。


・こんな年もある

そうこうしている内に8月に入ったので、例年と同じように中旬の12日・13日に再び奈良国立博物館前へ。すると、どうしたことだろう。


全然鹿がいない……周りにいる人たちも驚いたようで「おれへんやん!」と呟いていた。少し離れた場所にはたくさんの鹿の姿が見えるものの、いつもの場所に来る様子はない。

6時から7時半頃まで眺めていたが、集まった数はマックスで26頭。わらわらと盛り上がることもなく、タレ耳鹿として有名なロクさんを中心に、のんびりとした空気が漂っていた。


こんな年もあるのか。この日の気温は30℃越えで、時折雨も降っていた。わざわざその場所に行って、座る気分にならなかったのかもしれない。

記者が足を運ぶタイミングが悪かった可能性もある。またひとつに、今年は観光客の足が戻ってきていることがあるのではと踏んでいる。

新型コロナウイルスが流行し始めてからというもの、奈良国立博物館を含む奈良公園には人影がさほど見られなかった。

それが今年は公園にそこそこ人があふれており、ここ数年大々的にやっていなかったイベントも久しぶりに開催された。記者が鹿だまり観察に行った日も、ちょうど行われている最中だったのだ。


そんな人間たちの事情を汲んでか鹿たちもどことなく落ち着きがなく、訪れる人たちの相手をしてあげていた……ように見える。いろいろな事情が相まっての、鹿だまり2022だったと想像する。

これまでにも雨が降って全く鹿が来ないことはあったが、まわりにその姿は見えるのに集まらない、こんな控え目な年もあるのか。

鹿愛護会の方々が鹿だまりについては「よくわからない」と言っているが、確かに毎年観察していても謎は深まるばかり。

引き続き来年も観察の上、いつの日かこの鹿だまりについて何かしらの答えを出せればよいなと目論んでいる次第である。読者のみなさんもお気づきの点があれば、ご教授いただけると幸いだ。

執筆:K.Masami
Photo:Rocketnews24.

▼2022年の鹿だまりは控えめでした

▼いつもの場所じゃないところには結構集まっていた

▼コラ画像かな? というほどに密集していた2019年

▼コロナウイルスが流行しはじめた2020年の鹿だまり

▼雨の日は集まらないと知った2021年

▼来年はどうなるのか、楽しみにしているよ