さあさあ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい。今年も、例のアレの時期がやってきたぞ。奈良の夏といえばコレ、鹿がうじゃうじゃと一堂に会する “鹿だまり” のシーズンだ! 

当サイトでは2019年2020年とその様子を伝えてきた。はてさて、2021年はどうなっていることやら。胸を躍らせながら現場へ行くと、ソコにはかつてない光景が広がっていた……。


・2021年はまさかの結果

上記した通り記者はここ数年、奈良国立博物館前に夏になると集まって来る鹿たち(通称・鹿だまり)の観察に赴いている。風の噂によると、2021年は5月頃から鹿がたまり始めていた模様。

例年と比べ、そこそこ早いスタートダッシュだ。2020年5月31日の奈良県の最高気温は21.8℃だったのに対し、2021年同月同日は28.9℃。5月以降の気温も、2021年は前年より高めであるように見受けられる。

鹿が集まってくることに暑さが関係するか否かについては、明らかになっていない。ただ冬にこの場所に、わんさか集まることはない。素人考えであるが、夏の暑さが彼らをあの場所に導く理由のひとつではないか、と踏んでいる。


さて、2021年も例年と条件をできる限り同じにすべく、メインの観察日は8月12日に決定。時間もいつものように午後6時過ぎから、7時あたりまでをと考え現場へ向かった。

先に書いた通り、今年は早くから鹿だまっていた。7月中旬あたりに覗いた際は、すでに最高潮な感があったため数は少ないだろうと予想。が、しかしである。まさかこのような事態になろうとは、正直全く考えていなかった。


なんと、2021年8月12日の鹿だまりに集まった鹿は……ゼロ!!!! まさかのノーゲストだっ!!!!!! 粘りに粘って日が暮れきるまでその場にい続けたが、結果は変わらず。遠くに鹿の姿は確認できたものの、いつもの場所に集まってくることはなかった。


なんということだろう。もしかして、ここ数日奈良県でひっきりなしに雨が降っていることが関係しているのだろうか? とは言え、雨の中でも平気でそのあたりの草をハムハムする彼らである。

まさか雨だからというだけで、恒例の集まりをブッチするだなんて考え難い。今年はすでに時期が過ぎてしまったことも考えられるが、ほんの数日前まではたまっていたのだ。急にゼロになる、というのも不思議な話である。


・鹿愛護会に聞いてみた

考えていても答えは出ないので、いつものごとく「奈良の鹿愛護会」に聞いてみることにした。今年の鹿だまりの状況について、またこの時期に鹿だまりに全く彼らが集まらないことに何かしら理由はあるのだろうか。


「そもそも、あの場所に鹿が集まる理由は不明です。

(観察日が雨だったことについて)中には雨を気にしない子もいますが、雨が直接当たることを避けた可能性はないとは言えません。「きょうはいいか」と思ったのかもしれませんね。

人間と同じで、鹿も濡れると当然身体が冷えていきます。そのため、身を隠す木も軒も何もない場所にあえて行く必要はないと考えたのかもしれませんが、よくわかりません」


なるほど。雨がすべての理由ではないかもしれないが、行かない理由のひとつくらいにはなったのかもしれない。言われてみれば、軒先などで雨宿りしている鹿はよく見かける。


雨に打たれると体力も消耗するだろうし、なにより色いろと面倒くさそうだ。記者も雨の日は家に籠(こも)っていたい派なので、気持ちはわかるぞ。

確かな答えには行きつかなかったが、やはり気候が鹿だまりに影響しているのではないかとうかがえる結果となった。まさか1匹もいないとは考えなかったが、これはこれで新しいデータが得られたので良しとしよう。

繰り返し観察することで、今まで見えてこなかったことがジワジワ見えてきたように感じている。来年以降も引き続き、できる限り条件を例年とすり合わせるなどして、状況を記録していこうと思う。

読者のみなさんも “鹿だまり” について、お気付きのことがあれば是非とも教えてくれよな! 

執筆:K.Masami
Photo:Rocketnews24.
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▼2021年8月12日はまさかのゼロ

▼1時間ほど待ってみたが……やはりゼロ! 

▼目と鼻の先に姿は見えるが

▼いつもの場所には来なかった

▼雨が原因か。しかし、雨お構いなしに別の場所で草を食べている子たちもいる

▼フレッシュなフンが多数、いつもの場所に落ちていたので、ちょっと前までは集まっていたことがうかがえる

▼理由はわからないままだが、こう言っている気がした……

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