うどん文化が根強い大阪。そば屋を探しても東京ほどは見つからず、立ち食いそば不毛の地と言える。実際、東京のそば業界的にも進出が難しい地域と目されているそうだ。

したがって、ウマイそば屋を求めて色んな町を放浪する連載『立ち食いそば放浪記』でも「阪急そば」くらいしかレポートしていないわけだが……この度、大阪北新地でなんか凄いことになってるそばを発見してしまった。

・目立ってた

大阪のことを知らない人のために説明すると北新地は大阪を代表する歓楽街だ。高級歓楽街と言えばここ。つまりは、水商売的な店や飲み屋が建ち並んでいる。東京で言うと銀座に例えられることがよくあるそうだが、個人的には街の雰囲気は綺麗な新宿みたいなイメージだ。

昼は眠っているような北新地の裏通り。そんな静寂の中、営業している立ち飲み屋があった。しかも、暖簾には「そば」と書かれている。そば推しなのも珍しい。

・入店したらヤバイヤツいた

どうやら、12時~15時(ラストオーダー14時30分)のランチタイム限定でそばを提供しているようだ。店外メニューを見ると、かけそば税込み450円、きつねそば税込み550円という価格帯。東京の立ち食いそば感覚で考えるとちょい高めだが、まあ北新地だしな。


というわけで、その店『北ノ酒場』で昼を食べることにした私。この時はまだ記事にする気なんてなかった。だが、入店してメニューを見ていたところ……


ヤバイヤツいる……!

なんだこの右上のスペシャルそばゾーンは……!? 「揚げ物全部のせスペシャル(税込1400円)」とか海老天10本で「海老10スペシャル(税込2000円)」とかいくらなんでも頭が悪すぎるだろ

・謎

しかも、不可解なのはこれらが店外のメニュー看板に載っていないことだ。ここまでインパクト重視でIQを下げているくせに、なぜ隠すのか? 全く意図がつかめない。そこで一番頭が悪そうな「海老10スペシャル」を注文してみたところ、なぜかキョドる店員さん

「あの~……海老10本乗ってるヤツですか?」と不安げに瞳が揺れる。え? むしろ何この空気? この反応から想像できることは2つある。もう提供していないか、このメニュー名自体がヤバイ取引の暗号になっているかだ。唾を呑み込む。ハ、ハイ。その海老10スペシャルでお願いします……。

すると「分かりました!」と笑顔になる店員さん。怖い怖い怖い! こそっとポケットにLSDを入れられたらどうしようと考えていると、出てきたのは普通に海老が10本乗ったそばであった。いや、これはこれで普通ではないんだけど。

・とりあえず食べてみよう

今のやり取りが謎すぎるということはさて置き、『海老10スペシャル』は実物もちゃんと頭が悪い見た目をしていて最高である。なにせ海老天でそばが見えないのだ。かき揚げならまだしも海老天でそんなことある


食べてみると、1本1本がちゃんと中身が詰まった海老天だ。これもう海老天が主役だな。海老天そば好きのロマンが詰まった一品と言えるかもしれない。

・食べ進めて気づいたこと

と、食べ始めはそう感じていたのだが、実際に食べていくと気づいたことがあった。それは後半に差し掛かろうという辺りに発生したことなのだが……

衣がつゆに溶け出してでろんでろんになっていく。これは海老天そばだとある程度仕方がないことではあるのだが、なにせ海老天量が半端じゃないだけに、でろんでろん具合も他を圧倒している。ゆえに、後半はほぼ衣が主役であった。はいからマシマシだ。

このはいから感が好きな人もいるかと思うが、より海老天を味わいたい人は、冷やしもあるのでそちらを注文することをオススメしたい。ちなみに、つゆは関西を感じる色薄め。店で言うと都そばが近いが、コクがあり味自体はしっかりしている。

・謎の真相

そばとしては上記の味だったわけだが、解せないのは注文時の店員さんの反応である。食べても普通に海老10スペシャルだったし、あれは何だったのか? そこでさっきの店員さんに聞いてみたところ恐るべき事実が判明した。


店員さん「実は、メニューに『海老10スペシャル』以外に普通の『海老天そば』もありまして……。読みがどっちも “えびてん” なので、口頭でパッと注文を聞いた時にどっちか分からないことがあるんです」

──とのこと。海老が10本で「海老10」はウマイこと言ったかと思いきや、店的には意外な罠があったようだ。って、その誤算頭悪すぎだろ! というわけで、この店で海老天を注文する時は分かりやすく伝えるように注意しよう。

・今回紹介した店舗の情報

店名 北ノ酒場
住所 大阪府大阪市北区堂島1-5-35
営業時間 12:00~24:00 / 現在はコロナ禍の影響で12:00~20:30(ランチタイム12:00~15:00)
定休日 日・祝

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.


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