フランスのフランスパンがいかにおいしいか、という件については以前の記事でも熱弁させていただいた。フランスのフランスパンはどれもおいしいが、店ごとに味わいや形状が微妙に異なる。フランスパン好きとして “最高の1本” を探し出すことは人生の大いなる目標なのだ。

ところで最近知った話によるとパリでは毎年、数あるベーカリーの中から最もおいしいバゲットを選出する『la meilleure baguette de Paris(パリで最高のバゲット)』なるコンテストが開催されているらしい。パリっ子が選んだ最高のバゲット……食べてみる以外の選択肢はないでしょうな。

・あるパリの午後で

最高のバゲットを売るベーカリーがあるのは、地下鉄『Daumesnil』駅からほど近く。

中心部を少し外れた美しいパリの街角に……

出た! 行列!

こちらが2021年最高のバゲットを売る店『Les Boulangers de Reuilly』であります!

誇らしげに “パリナンバーワン” の印がプリントされている。

さぁご覧ください! このコンガリ焼けたタルト!

美しいケーキ!

オシャレな惣菜パン!

美味しそうな菓子パン!


・あれか……

そして一般的なパリのベーカリーと同様、レジ背後に無造作に並べられているのが……


パリ1位バゲット……! 価格は1ユーロ(約129円)ポッキリ。


なお繁盛店なためか、レジにはセルフ決済システムが導入されていた。無人フランスパン販売所が登場する日もそう遠くないかもしれない。

ついにパリ1位バゲットを手にした私は、あらかじめ狙いをつけておいた駅前のベンチへ。

おもむろにバッグから “マイバター” を取り出せば準備完了。それでは…………とくとご覧あれ!!!!


こちらが2021年パリ1位バゲットになります!!!!!!!!


・大胆かつ芸術的なフォルム

まず目を引くのは、驚くほど左右クッキリ分かれた焼き加減の差。右サイドはコンガリ、左サイドは白パンのごとく真っ白だ。

「焼き目が均一でないパンはうまい」という持論を有する私も、これほど均一でないものには初めてお目にかかった。

裏面も非常にインパクトが強い。おそらく平均的なバゲットと比べ、 “強火で短時間” スタイルなのではないだろうか。

トップも非常に芸術的。まるでフランス発祥のヘアスタイル『ポンパドール』のようである。

ひと思いにちぎると……おお!? 意外にも “中フワ” の一種か。個人的には “外カタ中ガサ” が好みなのだが、そこはパリ1位のこと。これまでの概念を打ち消すほどの実力を秘めているに相違ない。


バターをすくうように塗ったら……



いざガブリ!!!!



ぐ、うおおおおおおぉぉぉぉぉ!?!?



これは………………っ!!!!!!!!!!!!!


・よく分からん!

これはごく一般的なフランスのフランスパン……!!! もちろん日本で売られているものより100倍はウマイのだが、どちらかと言えば個人的には昨日近所のベーカリーで買ったヤツのほうが好みっ……!


ってか……


これ、好みによるんじゃね?


冒頭で述べた通りバゲットは千差万別。「硬いの好き」がいれば「柔らかいの好き」もおり、全ての中で1位を決めるなど “日本一のラーメン屋” を決めるのと同じくらい難しいのではないか。いや、もちろん相当ウマイことは確かなんだけどね? なんて言うか……ムズイよね?

とはいえ、パリっ子たちがこのバゲットを1位に選んだのは事実。要するに “ラーメンマニアが選んだラーメン” みたいなもんなのである。パリでどういったバゲットが「おいしい」とされているかを知ることは、フランスパン道を極めんとする者にとって必須な経験といえるだろう。

……ってことで全国5000万人のフランスパン・マニアたち、パリを訪れた際は『Les Boulangers de Reuilly』のバゲットを必ずチェックするように! ここ試験に出るかんね!

執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.