ふと気づけば24年くらい深夜アニメを見ている。私(中澤)が子供の頃に比べるとアニメのクオリティーはもの凄く上がっていると思う。私のように大人でも見続ける人が増えたからかもしれない。その畑を作った当時のアニメは偉大だ。

さて置き、言わば今は雨後の筍、アニメ戦国時代。名作なんだけど、いまいち時代にマッチせず存在感が残せない作品もある。そんな作品の中で心に深く突き刺さっているのが『京騒戯画』だ

・押井守感

『京騒戯画』が全13話でテレビ放送されたのは2013年。まず刺さったのはその世界観で、PCエンジンの『天外魔境』シリーズみたいなジパング的雰囲気が最高だったのだ。

舞台は、法師が絵に描いた街・鏡都(きょうと)。その鏡都に法師一家が移り住むところからストーリーが始まる。と、初っ端からぶっ飛んでいるのだが、この後どんどん物語は飛び続け、そのまま宇宙の彼方に消えていく

言わば「考えるのではなく感じろ」的な印象。時間が進まない絵の街という幻惑的な舞台と繰り返されるドタバタ劇に、個人的には押井守の『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』を感じていた。

・とにかく実験的

しかも、途中で声優さんが聖地巡礼するだけの回があったりなど構成的にも攻めしゃくっている。そのため、全13話だが、アニメは10話である。実験的すぎるだろ東映アニメーションよ。

と、記憶の印象はこんな感じだったのだが、最近見返したところやっぱり名作だった。主人公の女の子・コトの声優が釘宮理恵さんなのだが、「どうすんだよ? 神社!」とかエッジの効いたセリフがハマっていて雰囲気を引き締めているのである

・アニメと実写の間

特徴的に感じたのは割と「間」があること。テンポの速いアニメの会話で、重要なシーンで入ってくる溜めのような間が、実写映画的に見える瞬間がある

このアニメと実写の間みたいな雰囲気が、虚構と現実の狭間に位置するような本作の世界感に合っていた。意味ありげでよく分からない部分もあるが、それこそ考えるより感じられるのがアニメの良さ。やはり、よく分からないまま泣いてしまった。

・Amazonレビュー

8年経って改めて見ても、間違いなく名作だと思うんだけど、私は今までこれを知っている人に会ったことがないし、公式Twitter「京騒戯画(@kyousougiga_tv)」のフォロワーも約8000人くらいしかいない。Amazonプライムでも26件しかレビューがついてないし。

ただし、ついているレビューは63パーセントが満点の星5つ。星4つが10パーセントなので、見た人の73パーセントが高評価をつけていることになる。狭く深く刺さる作品だ。

・9月30日で見放題終了

針の山のように尖り散らしている本作。ほとんど社会にケンカを売るようですらあるが、芸術の表現ってこうあるべきとも思わされる。これどんな人が作ったのか? そこで調べてみたところ監督は松本理恵さんであった。『血界戦線』1期の監督やん。あれも当時、賛否両論だった気がするな。

なお、本作を私が今見返した理由は2021年9月30日にAmazonプライムの見放題が終了してしまうから。『血界戦線』1期はすでにプライム配信が終了しているため、松本理恵監督の作品が見放題から消えることになる。その前にどうしても伝えたかった。

というわけで、この記事を読んで気になった人や『血界戦線』1期の演出に惹かれた人は急がれたし。考えるのではない。感じるのだ。

参考リンク:Amazonプライム「京騒戯画
執筆:中澤星児
画像:©東映アニメーション/京騒戯画プロジェクト

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