先日、当サイトの問い合わせフォームに、読者から私(あひるねこ)宛てに1通のメッセージが届いた。一部抜粋してご紹介しよう。


「あひるねこさんは最近、デアゴスティーニやかつやにご執心のご様子ですが、あの熱き『ごろチキ愛』はもう失われてしまわれたのでしょうか。

かつて盛り上がった、K.Masami記者の『ごろビー神との闘い』など、もう歴史の1ページになってしまったようで、とても寂しく思います。

結婚して子どももできてしまうと、ごろチキみたいな、所詮はチェーン店のカレーに関わってる余裕なんてないですよね……」(原文ママ)


まずはメッセージありがとう。その上で言わせてもらうが……寝ぼけてんのかお前は。私がいつ『ごろチキ』への熱意を失ったというのだ。そんなことがあると思うか? あるワケねぇだろ! 久々にトサカに来たため(鶏だけに)、こうなったら自力で『ごろチキ』を作ってみるしかない。

・松屋公式レシピ

『ごろチキ』を自作する──。それは人の手で神を作り出すようなものである。そういった話はエヴァだけで十分な気もするが、実は松屋は今年7月より、『ごろチキ』の公式レシピをクックパッドにて無料公開しているのだ。ご、ごろチキの公式レシピだと……!?


松屋よ、そんな機密情報をネット空間に放出してしまって大丈夫なのか? しかもクックパッドてお前。家カレーじゃねぇんだぞ。神の個人情報ダダ漏れである。とは言え私としても、これ以上『ごろチキ』のいない世界には耐えられそうにない。

そこで、さっそく公式レシピに従って『ごろチキ』を作っていくことにした。材料は以下の通りだ(2人前)。


鶏もも肉(お好みでプラス可)1枚(250~300g)
玉ねぎ 1/2個
にんにく(お好みで)3片
松屋のオリジナルカレー(冷凍個食パック)2袋
塩コショウ 適量
サラダ油 適量


・カレーは完成品

へぇ~意外と少ないんだな。と思いきや、冷凍『松屋オリジナルカレー』なるS級チートアイテムの存在に若干笑った。それだけで地図の7~8割が埋まるではないか。この商品は「松屋オンラインショップ」にて10個セット3800円(税込・送料なし)で販売されており当然購入なり(2021年8月25日時点)。

そして……そう、コイツを忘れてはいけない。以前抽選でゲットした100個限定『ごろチキ専用ザラ』だ! 『ごろチキ』以外の盛り付けを公式から禁じられたが故に、結果何の使い道もないただの陶器と成り下がった哀れな王の玉座である。ついに……! ついにこの皿の出番が来た……ッ!!


さあ、それではレシピ通りに神を精製していこう。

【下準備】

①鶏もも肉:一口大に切り、塩コショウを軽くふる。
②玉ねぎ:串切り
③にんにく:つぶす
④カレー:温めておく

【作り方】

その1:フライパンにサラダ油をひき、つぶしたにんにくを炒める。


その2:鶏もも肉を皮を下にしてフライパンに並べる。


その3:フタをして中火で5分焼く。


その4:鶏もも肉を裏返し、玉ねぎを広げて入れる。


その5:フタをして中火で5分焼く。


その6:火をとめ、フタをはずして少し冷ます(※冷まさないとカレーを入れた際にフライパンが焦げつく)


その7:温まったカレーをフライパンに入れ、弱火で軽く煮立たせたら……(※焦げないように注意)


完成だ!

・感動の再会

それは、いまだフライパンの中にありながら、私にある一つの確信を与えた。神であると──。言葉を交わさずとも分かる。私は、ついに自らの手で『ごろチキ神』を作り上げたのだ……!

次の瞬間、主を待ち続けた『ごろチキ専用ザラ』の頬に一筋の涙が伝うのを私は見逃さなかった。まあそれはさっき軽く水洗いしたからなんだけども、『ごろチキ専用ザラ』の苦難を思い返すと私の目頭もつい熱くなってしまう。


ある時は『とろけるチーズの旨辛ごろごろチキン』


またある時は『ごろごろチキンのバターチキンカレー』

名前に『ごろごろ』が入っているという理由だけで盛り付けてみたはいいものの、今にして思えば全員誰やねん。これでは『ごろチキ専用ザラ』も浮かばれないだろう。しかし、それも今日が最後だ。ついに我らが王が……


王の玉座に……


玉座に……


戻った。

・帰還

見よ、『ごろチキ専用ザラ』に盛られた『ごろチキ神』の雄姿を。Everything In Its Right Place. すべてはあるべき場所に。当然ながらルックスは我々が知る『ごろチキ』そのものであり、横にライスを並べようものなら、そこはもう松屋だ。

しかしながら、オリジナルカレーにたっぷりの鶏肉と玉ねぎの旨み、そしてにんにくの香りを加えただけの代物を、果たして『ごろチキ』と呼んでいいのだろうか? 我らが『ごろチキ神』は、そんな単純で分かりやすいヤツではないのでは……


めちゃめちゃ『ごろチキ』だった。

・ご本人登場

きっとこれくらいは『ごろチキ』だろうなとか、ここまでは『ごろチキ』じゃないだろうなとか、様々予想していたら、それをあっさり追い抜くくらい普通に『ごろチキ』だったのだ。というか……下手したら松屋で食べるよりもウマい。

な、何なのだこのウマさは。スピードが求められる松屋の厨房と比べ、時間も手間もかかっている分、こちらのセルフ『ごろチキ』の方がトータルの完成度という意味では明らかに上である。まさかの神殺し。セルフ『ごろチキ』とは、エヴァでいうところのヴンダーだったのか(混乱)。ところが……。

それでも私は、このセルフ『ごろチキ』に奇妙な物足りなさを覚えていた。味のクオリティーにおいて、本家を凌駕している可能性があるにもかかわらずだ。なぜか? 手元の『ごろチキ』を改めて俯瞰で見て気付いたのだが……そう、ここには “アレ” の姿がないのである。


福神漬けが……!

・新事実

レシピに書かれていないので私もすっかり忘れていたぞ。いつもライスの横に添えられている茶色い福神漬けが、セルフ『ごろチキ』の世界にはまったく存在しないのだ。一見すると、特に影響はないように思えるこの事象。しかし私は確信した。福神漬けがない『ごろチキ』は、『ごろチキ』にあらず。

・『ごろチキ』とは

正直な話、我々『ごろチキ』信者にとって福神漬けとはさして重要なアイテムではない。むしろ邪魔とさえ感じる人もいるのではないか。私は別に好きでも嫌いでもないが、汁が多すぎてライスに染みができているのを見た時に関しては「調子に乗るなよ小僧」などと思わないこともない。

しかし、今回『ごろチキ』を自作してみて初めて気付いたのだ。あの福神漬けの粗相も含め、『ごろチキ』という一つの宇宙(ユニバース)であるということに。そう、光だけ集めても優れた作品は完成しない。『ごろチキ』とは、まるで綱渡りのように繊細なバランスの上に成り立った、類まれなる奇跡ではないのか。

・奥深ぇ

ああ、ありがとう松屋公式レシピ。『ごろチキ』を自らの手で作り出すことで、私は改めて『ごろチキ』の深淵に触れられた。まあぶっちゃけ面倒なので再び作るかどうかは微妙なところだが、以前よりもさらに『ごろチキ』のことが好きになったのは言うまでもないだろう。次に会える日が楽しみでならない。

参考リンク:クックパッド松屋オンラインショップ
執筆:あひるねこ
Photo:RocketNews24.

▼神との再会。