プラモデルを組んでみたいな、と思いつつ作るのが面倒くさそうなイメージがあり、手を出さないまま生きてきた。そんな筆者が出会ったのはお寿司のプラモデルこと「寿司プラモ」

サンプル画像を見るに、組むと結構リアルなお寿司になりそう。そして何より、米粒パーツをくっつけてネタパーツをくっつけるだけだから簡単そう──そんなことを思ってしまった。これはプラモデル初挑戦の筆者と寿司プラモが繰り広げた、3カ月間もの激闘のお話。

・心折れそう

2021年4月23日に発売された「寿司プラモ(1430円)」は鮪とサーモンの2種類。364粒あるという米粒パーツは多分、若干ネチャッとしてるとかで簡単にシャリの形になるのだろうと思った。だって364粒もあるし。なのでネタパーツを接着剤でつけるだけなら簡単──そう考え、2種類とも購入した。

4月23日に注文したプラモは数日後に無事到着した。漫画で酔っ払いのおじさんが持っている謎の箱のようなパッケージに割り箸までついてくるのが素敵。早速どうやって組んでいくのか説明書を読もう、とフタを開けたところ……入っていたのはパーツのみ。えっ、説明書は?

作り方とか書いてないと困る、と思いながら外装をよく見てみると、めちゃくちゃシンプルな図解だけ載っていた。まあ確かに、シャリを握ってネタパーツをくっつけるだけだもんね。説明書いらないか。納得のシンプルさだ。

説明書もいらないほどの簡単さなのだろう。まさに初心者向き。まずは意気揚々と、ニッパーでネタパーツを切っていく。

お次は米粒パーツ。ネチャッとしてるとかで上手いことくっついていくだろうから、切るの大変かな? などと思いながら、手に取って気付いてしまった。米粒パーツ、全くくっつく感じの素材じゃない。「プラモデル」の名の通り、思いっきり普通のプラスチックだ。嘘でしょ……。

もしかしてこれ、一粒ずつ接着剤つけていかないといけないの……? 心折れそうになりつつも、とりあえず米粒パーツを切っていくことにした。しかし、ここで問題が発生。手持ちのハンドメイド用のニッパーだと、刃が分厚くて米粒を上手く切り離せないのだ。

薄刃だというプラモデル用のニッパーを買ってみたのだが、結局それでも上手く切り離せなかった。そのため指で米粒パーツを一方向へ押していき、反対方向からもう一度押すことで枠からプツプツと外していった。

指で押して外していくと米粒にツンとしたバリが残ってしまったため、その小さなバリを1粒ずつニッパーで切り離していく。364粒を2種類分──合計728粒を1粒ずつ、だ。

そうして約2時間ほどかけながらニッパーでひたすらバリを切り取り続け、米粒パーツが1粒残らず綺麗になった。綺麗になったのだが、正直言って苦行でしかなかった。私は今、何をしているのだろう……と我に返り投げ出しそうになるのを堪え、何とかやり切ったのだ。

パーツを切り終えたらあとは接着。そのための接着剤、そしてリアルに塗装するための品々も買う必要がある。人生初プラモで適した接着剤すら分からなかったため、プラモコーナーが充実しているという家電量販店で、店員さんに相談しながら色々と揃えた。

親切な店員さんは、接着剤をつけすぎるとパーツが変形してしまう恐れがあるため、1粒ごとに少しずつ接着剤をつけて組むこともオススメしてくれた。そして帰宅し、早速寿司プラモと向き合うと気づいてしまった。「728回も接着剤をつけて置く作業をするのは嫌だ」と。

そうして心折れた筆者はそっと箱を閉じ、寿司プラモに全く触れないまま約3カ月が過ぎていった。

しかし不思議なもので、放置すればするほど寿司プラモが気になってくるのだ。普通に楽しく毎日過ごしていても、何か引っ掛かるような、やらなければならないことを残しているような違和感が滲み出てきた。日を追うごとに、放置している寿司プラモに申し訳なさが募ってくのだ。

このまま組まないで放置してはいられないが、728粒の接着と向き合うやる気も起こらない。そこで筆者はまず、「寿司プラモの参考にするため」とお寿司を食べに行った。寿司プラモのためにと美味しいお寿司を食べることで、良いイメージを植え付けることにしたのだ。

ついでに本気でシャリの形も観察した。お行儀は悪いが、お寿司を360度眺め回させてもらった。シャリの形を脳内で鮮明にイメージ出来るようになれば、728粒をサッと接着していける錯覚を起こすのではないかという何だかよく分からない作戦だ。

結論から言うと、この「お寿司を食べに行く作戦」は功を奏した。理屈は自分でもよく分からないが、何だか今なら綺麗なシャリをサッと作れるような気がしてきたのだ。お寿司屋さんから帰宅し、寿司プラモと3カ月ぶりの対面を果たした。

そして「1粒ごとに少しずつ接着剤をつけて組む」というアドバイス通り、ピンセットで1粒ずつ丁寧に接着していくことにした。お米の向きがバラつくよう気にかけながら、慎重に米粒パーツをくっつけていく。

しかし丁寧に丁寧に作業していると、やはりすぐに面倒くさくなってくる。そうしてふと「これシャリの表面に接着剤バーッと塗って、上からパラパラお米降らせたら良い感じになるんじゃないか?」と魔が差してしまった。そうしてすぐ実践してみたところ……

なかなか良い感じになった! パッと見たところ米粒パーツに変形も見られなかったため、以降はこの方法でシャリを形作っていくことに決めた。

シャリ表面に容赦なく接着剤を塗っていき、米粒パーツをパラパラとまぶすように接着させていく。そうしてどんどんとシャリを大きく成長させていくのだ。

途中で妙な形になってきたら、凹んでいる辺りにだけ接着剤を塗って米粒パーツをくっつけていって大雑把に形を調整する。そして最後の方は再びピンセットで1粒ずつ丁寧に接着していって形を綺麗に整え……

1時間半ほどかけ、ついにシャリが完成! 本物のお寿司をよく観察した甲斐あってか、なかなか綺麗な形に仕上がった。

2貫目はコツを掴んだのか、1時間かからないほどで綺麗なシャリを組むことが出来た。もしかしたら筆者には、シャリを組む才能があったのかもしれない。

残すはネタパーツをリアルな感じに塗装し、土台と接着するのみだ。面倒くさそうすぎて3カ月も放置してきた寿司プラモだったが、いざ始めてみると案外上手くいっている気がする。

塗装はというと、本物の寿司ネタのように薄らとスジなどの凹みがつけられている表面に、塗装用の白いペンで細くスジを描いていくだけだ。楽勝すぎる。


もう5分後には寿司プラモの組み上がった姿を拝める、と意気込んでスジを描いた結果。全くリアルに見えない寿司ネタが誕生してしまった。難しい……。全く思うような細い線が描けない。

描き直すため、塗装の修正用にと購入していたエナメル溶剤をティッシュにつけてみると……あれ、線が滲んで結構良い感じのスジに見えるようになってきた気がする。

そうして、線を描き足しては溶剤でぼかし、という作業を何度か繰り返してみると、リアルな感じの寿司ネタに仕上がった。我ながら、なかなか良い出来だと思う。

鮪はトロっぽい方が好きなので、寿司ネタパーツ表面につけられたスジの凹みに沿って線を描いた他、色味がトロっぽくなるように全体にも塗装を乗せてみた。

サーモンと違って鮪はスジが目立たない方が美味しそうに見える気がするので、良い感じになるよう何度も色を乗せてはぼかしていき……

鮪の塗装も完成! 色が剥げないよう、表面にトップコートも吹きかけておいた。

あとは寿司ネタとシャリを接着して……

寿司プラモが組み上がった! 完成した姿を拝むまでに3カ月かかった。ほぼ放置してただけなんだけども。寿司プラモとの、いや、己との長い戦いであった……。

お皿に接触するシャリ部分を消毒し、本物のお寿司とそっと並べてみた。色がやや不自然な気もするが、わりとリアルに見える。プラモ初挑戦にしては上手く出来たのではないだろうか。

寿司プラモだけで並べてみると、なかなか美味しそうに見えてくる。苦労したせいもあってか、その姿には愛おしさすら感じてしまう。可愛い……。

生まれて初めて挑むプラモデルとして、寿司プラモを選択したのは間違いだったと思う。だが、苦労した分だけ完成させた瞬間の喜びは凄まじかった。組み上がった寿司プラモにも物凄く愛着を持てたので、挑戦したことに後悔は感じていない。

途中わりと本気でやめようかと考えたし「これは何の修行なんだろう」と思ったりもした。しかし、完成した瞬間の喜びを感じるため、そして完成品を愛でるため、またプラモデルに挑む日が来るかもしれない。そう思えただけでも、挑戦して良かったと思う。

参考リンク:秋東精工公式HP「SYUTO Press Vol.83 寿司、食いねえ!リアルさにとことんこだわった「オトナのクレイジープラモデル」を新発売!」
執筆:伊達彩香
Photo:RocketNews24.

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