私事で恐縮だが、アルコールをあまり飲まないタイプの唐揚げ愛好家に分類される筆者にとって、「がブリチキン。」は紛れもなく憧れの場所である。

唐揚げ居酒屋として全国に展開する同店の味に、いつかは触れてみたいと思っていた。が、やはり非酒飲みからすると容易には近づきがたい。平日のランチへ行こうにもなかなか都合が合わない。休日は家でゴロゴロしていたい。「がブリチキン。」との距離は隔たるばかりだ。

何か良い方法はないものか。誰か他の人に頼んで、秘密裏に唐揚げを盗ませるか。あるいは同店の幹部と接触し、秘密裏に唐揚げを横流ししてもらうか。長らく答えは出なかったが、最近になってふと気付いた。そうだ、デリバリーがあると。

というわけで、早速Uber Eatsを利用して「がブリチキン。」の唐揚げを初実食してみることにした。今回選んだメニューは、シンプルに骨なしもも肉が7個入った、テイクアウト・デリバリー用のボックスである。価格は1390円だった。

手羽先・ささみ・ネック・すなずり・鶏トロといった他部位を差し置いて、骨なしもも肉は同店の1番人気らしい。また公式HPによればボックスの内容量は350gとのことで、デリバリーで割高になっていることを考慮しても満足度が高そう、というのが選考理由だ。

そして届いた実物は、予想通りと言うべきか、ずっしりたっぷりボリューミーであった。

成人男性の一口にも収まりきらなさそうな7個の唐揚げたちが、心洗われる黄金色を放ちながら美しく並んでいる。興奮に胸が躍る。すでにこの時点で満足度が高い。日本百景のうち7つがこれらの唐揚げだったような気さえしてくる。

ビジュアルは満点だが、味の方はどうか。まだ温かい状態で届いたのでレンジはせず、膨らむ期待に突き動かされるまま、唐揚げにかじりついた。その瞬間、膨らんだ期待すら上回る快い感覚が舌に走った。

端的に言えば、めちゃくちゃに美味しい。正直、注文した時の自分は少し舐めてかかっていた。全国に名を馳せる好評ぶりとはいえ、及第点よりやや上の、いわゆる「チェーン店の味」レベルだろうと。しかしそんな自分は大いに間違っていたのだと思い知らされた。

決して何か奇をてらっている仕上がりというわけではない。しっかりとついた濃厚な醤油の下味が、弾力のある肉から奔放に溢れる肉汁が、口内を潤す凄まじいジューシーさが、ただただ真っ直ぐパワフルに殴りかかってくるのだ。

そこにヘルシーさや食べやすさといった温情は欠片も存在しない。「唐揚げ好きが唐揚げを食べたい時のための唐揚げ」であり、「衣にみなぎる脂を見て恍惚となれる人のための唐揚げ」に他ならない。「普段食べないけど食べてみるか」程度の気概では刹那で泣きを見る。

こんなもの、耐え切れるわけがない。頬を緩めずにいられない。心地良い敗北感を味わいつつ、取り皿に取って堪能しているうちに、その取り皿が脂でびしょびしょになってきた。あまりに愉快すぎる。これほど幸福な唐揚げ体験はめったにない。

今となっては、ここまでハイクオリティな唐揚げを提供する店がチェーン展開されている事実が、いっそ恐ろしくすらある。改めて自国の唐揚げ水準の高さを認識した次第だ。

もし皆さんの中にもまだ同店の味を知らない方がいたら、ぜひ体験してみてほしい。筆者は「注文してよかった」と心から思っている。人生を豊かにするためには、時にはいかなる手を使ってでも、憧れに食らいつく必要があるのだ。そう、がブリと。

参考リンク:「がブリチキン。」公式HP
執筆:西本大紀
Photo:Rocketnews24.

▼ちなみに唐揚げを温め直す場合は、アルミホイルに乗せてオーブントースター(900W)で1分温めるとよいらしい。