薄暗い中に観音像が立っていたらそれだけで怖い。その上、「絶対に目を合わせてはいけない」とか言われた日にはいとも簡単に怪談の出来上がり。福井県の「雄島隧道(おしまずいどう)」にはいかにもな心霊スポットオーラがある。雄島に行く道にある短いトンネルなのだが……
昼間でも暗く、中頃には観音像が安置されているのだ。ある人が通りすがりに観音像を見たら目が赤く光っており、帰り道に自動車事故で亡くなったという都市伝説も。まさに、いわくつき。そんな観音像を見てしまった男がいる。
・トンネルの中
雄島に行く時に普通に通るこのトンネル。私(中澤)は車で通ったのだが、トンネルに突入すると辺りを闇が支配した。緊張の中、前方をにらみつける。
と、その時、視界の端、壁際前方から緑色の何かが近づいてきた。おそらく、これが観音像の安置されている横穴。緑色の何かは横穴に張られたテントのようなものだろう。あの中に観音像が立っているに違いない。
・通りすぎた瞬間
うっかり見てしまいそうになったがグッとこらえる。ほっ、通りすぎたか? と、その時、隣から声が聞こえた。
「ヤベ、見ちゃった」と──。
その声の主はブッチさん。普段、東京の安アパート暮らしの彼に福井県に行くことを伝えたところ、「乗るしかない、このビッグウェーブに」と乗車してきたのである。
・なんか赤かった
都市伝説をよく把握していなかったブッチさんは、「なんかあるぞ」という感じで観音像に気を取られてしまったのだとか。気をつけていた私でも見そうになったくらいなのでその気持ちは非常によく分かる。知らなかったらつい見ちゃいそうだ。
まあ、目が赤く光ってなきゃ大丈夫なんじゃない? そこでブッチさんに観音像の様子を聞いてみたところ……
ブッチさん「なんか赤かったYO! dude」
──あかん。トラップ発動してもうてる色ですやん……。今すぐ事実を聞くのが怖くなったため私はこう返した。「海が雄大だね」と。
・観音像はどんなのだったか
思わず現実逃避してしまったが、ヤバイ状況ほどきちんと把握しなければならない。そこで旅館に着いて落ち着いたところで、ブッチさんに観音像の絵を描いてもらうことに。
ブッチさん「まず、観音像は緑のテントの中に安置されてた」
──それは見えました。
ブッチさん「で、観音像の周りはぼんやり光ってた」
──いきなり怖い!
ブッチさん「落ち着けよバディ。多分、テントの中に蛍光灯かなんかが設置されてるんだ。で、そのテントの屋根が邪魔して顔は見えなかった」
──車高で角度がついたのかな? 顔見てないのは朗報。って、じゃあ赤いって何が?
ブッチさん「体が」
──それはそれでヤベエ!
ブッチさん「いや、赤いちゃんちゃんこ着てたんだよ」
・その夜
どうやら、ブッチさんが見た赤はちゃんちゃんこの色だったようである。な~んだ、良かった良かった。その夜は何事もなく就寝。
と思いきや、隣で寝ていたブッチさんには怖すぎる出来事が起こっていた。翌朝、ブッチさんのテンションがなんか低い気がしたため理由を聞いてみたところ……
ブッチさん「夢に観音像が出てきた」
──え、怖ッ!
ブッチさん「しかも顔出ちゃってんの」
──完全に殺りに来てる! じゃあ、目が合っちゃったんですか?
ブッチさん「いや……」
ブッチさん「グラサンしてたから目は合わなかった。dude」
──とのこと。もう10年以上グラサンを愛用しているブッチさん。ひょっとしたら、グラサンが守ってくれたのかもしれない。
なお、ブッチさんいわく、夜中赤ちゃんの泣き声が聞こえたとのことだが、私的にはブッチさんのいびきがうるさくてあまりよく分からなかった。
どこかで泣いている赤ちゃんがいるならば抱きしめてあげたい。そんな想いも込めてブッチさんはぽつりとつぶやく。優しい目で。
「パワーハグ」と──。
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
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▼その後のブッチさんの様子
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