スパ! オレたちには守らなければならないものがある。家族はもちろん、戦士としてのプライド、そして、飼っている牛だ。マサイの世界で牛がどれだけの価値があり、財産であるかは、過去に何度も述べている。マサイの世界では、牛=金といっても過言ではない。
そんなオレたちの宝である牛を、あろうことかライオンが狙ってくることがある。かつてオレの弟が警察に逮捕されたのも、原因は牛を狙うライオンだった。そういう意味では、オレたちマサイ族とライオンは天敵同士。だからこそ、戦う。そういう歴史を歩んできた。
前置きが長くなってしまったが、つい前日、こんなことがあった。オレの村に住む少年が、村にいる牛を散歩に連れて行っていたのだが、突然、息を切らせて村に帰ってきた。そして叫んだ。
「ライオンに襲われた!」と。
それを聞いたオレたちは、すぐさま武器を手に現場へ急行。なるほど、確かにライオンが牛を食べている真っ最中だった。しかしオレたちマサイ戦士の軍団を目の当たりにしたライオンは、一目散に逃げて行った。
そこにあるのは、少し食べられてしまった死亡直後の牛。また貴重な財産が食べられてしまった。許すまじライオン……!! 我々戦士はライオンへの復讐を誓うと共に、無念の死を遂げた牛に対し鎮魂の念を送りつつ……
「よし、食うか」。
武器ではなく調理器具を持ってきた戦士もいたようで、牛は実にスムーズに調理されていった。どうせ死ぬのだから美味しく食べるのがマサイのルール。うまい。やっぱりうまい。牛はうまい。やっぱり牛はごちそうだ。
日本人も、牛を食べる時は「ぜいたく」なんだろ? たまにはぜいたくもいいもんだ。でも、オレたちマサイ族にとっては「たまのぜいたく」ではなく、ライオンによる「急なぜいたく」の方が多いかな。オレセリ!
Report:ルカ(マサイ族)
超訳:GO羽鳥
Photo:RocketNews24.
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