近頃のヒーローの多様性は半端じゃない。なにせ、最新の仮面ライダーは、平行世界が舞台で聖剣を使って変身するというじゃないか。キャッチコピーは「文豪にして剣豪!!」なんだそうな。ヒーローも世につれ人につれである。

一方、私(中澤)が子供だった頃、ヒーローはもっとシンプルでストレートだった。絶対的な正義であり敵は悪。そんな平成初期、彗星のごとく現れ子供たちに衝撃を与えたメタルヒーロー・ジャンパーソンを君は知っているだろうか?

・ヒット作『特警ウインスペクター』

あれはそう私が7歳くらいの頃。小学校に上がったばかりの私はもっぱら日曜朝の特撮ヒーローものに夢中で、1週間が日朝を中心に回っていた。それは同級生も同じで、よくヒーローごっこをしたものである。

当時、我々は数年前に放送されていた『特警ウインスペクター』を引きずっていた。強化装備の人間を主役に、限りなく人間に近いドロイド2体が脇を固めるという編成はバランスが良かった。『LOVEマシーン』時代の モーニング娘。のように、あるいは、ピンボーカルのロックバンドのようにセンターがバチッと決まっていたのである。

しかも、そのドロイド2体も、黄色いバイクルは腹についたタイヤで地をかけ、青いウォルターは空を飛べるという超個性。性格も情熱派と冷静派という風にすみ分けされていた。本作の圧倒的なキャラ立ちのためか、続く『特救指令ソルブレイン』『特捜エクシードラフト』はいまいちに感じられたほど。

・衝撃の出会い

もう年齢も年齢だし、ヒーローものから足を洗う時期が来たのかもしれない。寂しいけれど……。そんな時、新しく始まったのが『特捜ロボ ジャンパーソン』である。迷った挙句、「念のためチェックするか」くらいの気持ちでいつものチャンネルに合わせた私は、子供心に衝撃を受けた


ロボがジャンパー着てる……!


当時、日朝のヒーローは、私が知る限りでは人間が強化装備を装着したものが主流だった。強化装備だから当然その上に服なんか着ない。ロボが出てきても、ウインスペクターの脇2体のようにやっぱり服は着ない。メタリックな外観がすでに飾りになっているしその必要性を感じたことがなかった。

しかし、ジャンパーソンは違う。ロボな上にジャンパーを着ているのだ! ちなみに、ジャンパーを着ていることの説明は一切なかったと記憶しているが私は一瞬で理解した。“ジャンパー”ソンだからジャンパーを着ているんだ……

さらに、日朝ヒーローはチーム制が主流だったのにジャンパーソンは1人だ。もうジャンパーソンしか見えない。猛烈に「これまでと違う」という違和感だけを残して1話が終わった。いや、過ぎ去ったというべきか。嵐みたいな出会いだった。

・戸惑い

これは笑っていいところなのだろうか? その出会いがあまりにも衝撃的だったため、どう受け止めるべきかよく分からないでいるうちに、時が経ち話が進んでいくジャンパーソン。やっぱり、見間違いではないジャンパーを着て登場している

ウインスペクター、ソルブレイン、エクシードラフトとこれまで言葉の響きにヒーローっぽいカッコ良さがあったのに、なぜ、1人だけジャンパーを元に名前をつけたのか? ジャンパーがモチーフのヒーローってありなのか? 思えば、この時が初めてテレビの製作側に疑問を抱いた瞬間かもしれない。

・衝撃再び

とは言え、子供の適応力とは半端じゃないものである。なんだかんだ言って私は、そんなジャンパーソンに慣れ始め、「カッコイイかも?」と思えるくらいにはなっていた。そんな時である。再び衝撃が私を襲ったのは。おいおい……


ジャンパーソンがジャンパー着てねェェェエエエ!!!


そう、登場時、ジャンパーを着なくなってしまったのである。確かに、最初から戦う時とかは脱いでたけど、ジャンパーがなくなってしまったら、もう何がジャンパーソンなのか分からないじゃないか!!

自らキャラをかなぐり捨てるようなこの事件は子供心に衝撃的すぎて今も忘れることができない。当時見ていたヒーローものの内容はほとんど忘れてしまったので、ジャンパーソンは私の心に最も深く残っているヒーローと言える。

・30年越しに見てみた

そんなジャンパーソンがAmazonプライムでレンタルされているのを発見した。そこで約30年越しに見てみたところ、ジャンパーソンは8話を境に急激にジャンパーを着なくなっていることが判明

ただし、登場時にジャンパーを着ていないパターンに関しては2話で一度流れていた。その後、連続してジャンパーで登場するため、「やっぱり見間違いじゃなかった」と思ったのかもしれない。しかし、何よりも……


ジャンパーソンのジャンパーってこんなにブカブカだったっけ……? まるで子供が大人のジャンパーを着ているみたいで、膨らんだシルエットが猛烈にダサイ。もっとパリッとしたジャンパースタイルのイメージだったが、子供の頃の記憶というのは当てにならないものである。

・大人になって改めて分かること

そんな感じで、改めて数話見てみると、悪の組織はロボ軍団で、基本、ロボVS人間の戦いであることが分かる。そこに人間の味方として登場するロボがジャンパーソンなわけだが、ジャンパーソンは出自がハッキリしない謎のロボ。信じる人と怪しむ人が分かれているというのが前半の状況だった。

言わば、ジャンパーソンはロボからも人間からも異端。なんとなく、その存在に寂しさのようなものすら漂っているように感じた。子供の頃はここまで理解していなかったが、ジャンパーソンがこれからどうなっていくのかを改めて見届けたくなった次第である。

子供の時に見た作品について、大人になって改めて見るとまた別の側面が見えるというのはよくあることだ。くしくも、本日1月16日はヒーローの日。この機会に、あなたも当時夢をくれたヒーローを思い出してみよう。見返したらまた新しい発見があるかもしれないぞ。

参照元:Amazon『特捜ロボ ジャンパーソン
執筆・イラスト:中澤星児