少し前のことになるが、福井県の箸専門店が製作したYouTube動画「正しいお箸の持ち方」で、子どもの箸の持ち方が直ったという投稿が話題になった。かかった時間はわずか数分といい、さすが子どもは柔軟! と感心するが、数十年かけて間違った持ち方が身についた大人でも悪癖が直るのだろうか?

筆者は小さい頃から箸、鉛筆ともに持ち方がおかしい。父母は矯正しようとがんばったが、強情な性格ゆえか結局直らず大人になった。

間違っているとはいえ、何十年も続けているのでなんでもつかめる。別に困っちゃいない。けれども一方で、焼き魚を残さず食べるなど、美しい所作は「大人のたしなみ」であるとも思い、内心ちょっと恥ずかしいのも事実だ。よし、今さらだけれど矯正できるか挑戦してみよう。


・トレーニング開始

詳細は実際にYouTubeを見ていただくとして、まずは1本の箸で曲げ伸ばしの練習を繰り返すことで正しい持ち方が身につくという。食事のたびに20回練習というので、1日に60回計算か。

ちなみに従来の筆者の持ち方はこうだ。中指、薬指をそれぞれの箸に押しつけて動かしており、人差し指は余っている。完全に間違っている。

どれくらい直ったかのベンチマークとするため、まずはこれまでの持ち方で、20粒の大豆を移すタイムを計ってみる。

タイムは2分11秒! やってみて気づいたのだが、丸箸で大豆をつまむの、思ったより難しいぞ! 大豆はほぼ円形で、ツルツルとすべり、すぐに箸からこぼれてしまう。

球の重心というか、中心線にあたる部分に均等に力を込めないと持ち上げることができない。強すぎても弱すぎてもダメだ。2本ある箸のうち、どちらに力が偏っても大豆はコロリと逃れてしまう。本当なら1粒つまむのに1秒もかからないはずが、全部で2分以上かかってしまった。ともかく、これを基準タイムとしよう。


・予想外の展開

続いて、動画にある「正しい持ち方」で同じ作業をやってみる。まだ練習はしていない。当初の予想ではここで手間取り「やっぱり慣れてないと難しい」「これが練習でどこまで上達するか」という流れになると思っていた。ところが予想外の展開が!


序盤は嘘のようにスムーズに、次々と大豆をつまめる。前述した「2本の箸からかかる力が均等に」が、すでにできているのだ。

このままだと基準タイムを抜く、と思うほど順調だったが、後半になると普段使っていない筋肉が疲れてペースダウン。薬指などが引きつったように痛くなり、「どうするのが正しいんだっけ?」と脳が混乱したりして時間をくう。結果2分26秒。

基準タイムとほとんど変わらないが、少しだけ遅いという結果だった。なんかすごいポテンシャルを秘めた持ち方のような予感がする……。よし、明日から毎日練習してみよう。


・2日目

せっせと練習しつつ、2日目の計測。

今回も序盤は順調に大豆をつまめ、終盤もやはり指は痛くなるのだが、昨日ほどのペースダウンはなく、1分13秒の記録をたたき出した! 断然早い……!!


結論「正しい持ち方をすると、手が器用になる」。


ただし、まだまだ自覚的な「ぎこちなさ」はあるし、指が筋肉痛のように痛い。なにより、食事のときには相当意識しないと「慣れ親しんだ持ち方」に戻ってしまう。まだまだ練習が足りない。


・3日目~6日目

鍛錬


鍛錬


血のにじむような鍛錬を重ね……


毎日タイムを計測しつつ、食事のときにも正しい持ち方を意識してみる。最初はいいが、やはり普段使っていない指が疲れてきて最後までもたない。手が凝ったようになって、指の関節をバキバキ鳴らしたくなる。

あと、大人は「食事ごとに20回の練習」が難しいかもしれない。パンやおにぎりなんかは食器を使わないし、使ったとしてもスプーンやフォークで済ませている食事が意外と多い。下手すると1日に1度も箸を持たない、なんて日もあった。


・7日目

当初予定していた1週間が経過した。どんな動作も、さすがに1週間続けると板についてくる。少なくとも「大豆つまみ」の時間に限っては、箸を握ると自然に正しい形をとるようになった。気になるタイムは……


1分4秒! 初日の倍以上の速さといえる。


経過をみると、「どんどん速くなる」のではなく行きつ戻りつするが、初日を除いて1分台前半を安定してキープしている。今や指が疲れることもなく、最後の1粒までしっかり大豆をつまめる。

そして実践の場、つまり食事の場面では「ついつい忘れてもとの持ち方に戻ってしまう」ということは多々ある。しかし気づいて直すと、正しい持ち方で大抵のものは難なく口に運べるようになった。毎日のトレーニングの成果なのか、途中で指が引きつることもない。

あとは習慣化の問題だ。リマインドがあれば……たとえば家族などが「箸!」と声をかけてくれるならば、最後まで美しく食べられると思う。最初から意識している正式な食事会などなら完璧だろう。


・持ち方には理由がある

検証をして気づいたのが、正しい箸の持ち方って実はすごく「機能的・合理的」だということ。毎日の食事から編み出してきたのだから当然かもしれないが、無駄のない動きで、もっとも正確に食べ物をつかめる形なのだ。

動画を作成してくれたのは福井県の「箸匠せいわ」。動画に登場するキャラクターもなかなかに強烈なので、すでに正しい持ち方ができている方もぜひ1度ご覧いただきたい。

ありがとう「箸匠せいわ」! ありがとう「オハシマン」!


参考リンク:FNNプライムオンライン箸匠せいわ
Report:冨樫さや
Photo:RocketNews24.

▼「正しいお箸の持ち方」