1980年代から2000年代初頭の音楽シーンを語る上で、夏といえば「TUBE」は欠かせない。「シーズン・イン・ザ・サン」「あー夏休み」「さよならイエスタデイ」「ガラスのメモリーズ」……などなど、今でも夏になると耳にする不朽の名曲がズラリと揃う。

一方、90年代から「冬の女王」として一世を風靡したのが、ご存じ広瀬香美さんだ。「ロマンスの神様」「ゲレンデがとけるほど恋したい」「promise」などは、現在でもスキー場でかからないことがない大定番ウィンターソングである。その広瀬香美さんが、まるで「平野レミさん」のように弾けまくっていることをあなたはご存じだっただろうか?

・Dear……香美姐さん

ここからは敬愛の念を込めて、広瀬香美さんを「香美姐さん」と呼ばせていただきたい。中学生の頃、少ない小遣いで「ロマンスの神様」を購入し、高校時代にはベストアルバムを購入した私(P.K.サンジュン)には、その資格がある……ハズだ。何より現在の広瀬香美さんは「香美姐さん」と呼ぶのが最もお似合いだ。

さて、20代の頃に「愛があれば大丈夫」でデビューした香美姐さんも、現在では御年54歳の大御所歌手である。最近では歌手業のかたわら「ボイストレーニング教室」を開くなど、多岐に渡る音楽活動を展開している香美姐さんだが、おそらく本人が今1番楽しいのが「YouTuber」としての活動であろう。


・YouTubeの「歌ってみた」

「広瀬香美オフィシャルYouTubeチャンネル」では様々なコンテンツが配信されており、中でも最高なのが「歌ってみた」である。基本的には他の歌手のヒット曲を香美姐さんがアレンジして歌いあげるだけの動画なのだが、これがシビれるほどカッコいいのだ。

失礼ながら、長年私は香美姐さんの歌唱力をそこまで高く買っていなかった。もちろんプロなので上手には違いないが、どちらかと言えば歌詞とメロディを含めた「曲先行型」の歌手だと捉えていたのだ。Aクラスの歌唱力はあっても、例えば井上陽水さんやSuperflyのような、S級の歌唱力はないと思っていた。

だがしかし、動画を観て考え方が変わった。香美姐さんメチャメチャ歌うめぇぇぇえええ! 名だたる歌手たちの名曲がお題でも、香美姐さんはきっちり歌い切っている……どころか、完全に「広瀬香美の歌」として曲をコントロールしているのだ。

・3つのすごさ

ただし、単純に歌が上手いだけだったら私は1度だけ観て終わりにしていたことだろう。違うのだ。香美姐さんの「歌ってみた」の魅力はそこじゃないのだ。私は香美姐さんの「歌ってみた」には3つの魅力があると思っている。1つ目が動画の前半で展開される「曲の分析」だ。


自身で作詞作曲を手掛ける香美姐さんならでは分析は、まさにプロのなせる技。「この曲のここがスゴイ」「このメロディは〇〇だから普通じゃない」「この作詞家・作曲家・歌手のココがとんでもない」……などは、素人にもわかりやすく解説されている。

2つ目の魅力は「アレンジ力」だ。これまで公開された全ての動画にはピアノ1台しか登場していない。……にもかかわらず、曲の持つ良さを保ちながら香美姐さんの曲に仕上がってしまうのだから驚くしかない。ハチャメチャなピアノ演奏も含め、必見だ。

最期の魅力は「自由度の高さ」である。これは「幸せ力(しあわせぢから)」と言い換えてもいいかもしれない。とにかく、香美姐さんの「歌ってみた」は最初から最後まで超楽しそう! 観ているこちらが思わずニヤニヤしてしまうほどのハッピーオーラがあふれまくっているのだ!!

・平野レミに通じる幸せ力

本人もニコニコ、視聴者たちもニコニコ。元曲の素晴らしさをわかりやすく解説しつつ、作詞家・作曲家・歌手へのリスペクトを忘れない。むしろ「そんなにすごいんだ」と周りを上げまくって自分も上がる理想的な「誰も傷つけないコンテンツ」と言えよう。


観るだけでパワーをもらえ、さらに一定のハラハラ感──。これはまさしく料理愛好家の平野レミさんと通じるものがある。あまり遠くない将来、香美姐さんが動画をアップするだけでネットニュースになる……そんな日が来る気がしてならない。それほど香美姐さんの「歌ってみた」の幸せ力は圧倒的だ。

なお、私が初めて観た時点で「広瀬香美オフィシャルYouTubeチャンネル」は約25万人のチャンネル登録があったが、およそ1週間で30万人になっていた。世間は確実に香美姐さんの幸せ力に引き寄せられ始めている。ブレイク寸前、幸せへのゴール!

もしこの記事を読んで少しでも気になった人がいたら、ぜひ香美姐さんの「歌ってみた」をご覧になっていただきたい。動画の中で本人も言っていたように序盤は「スタッフにやらされている感」があるので、観るなら動画No5以降がオススメ。個人手には「紅蓮華」か「天城越え」が猛烈プッシュでオススメだ。

というわけで、「広瀬香美オフィシャルYouTubeチャンネル」は自由で幸せでヤバいほど最高である。音を楽しむと書いて音楽。まさにそれを体現している。どうアレンジされるか予想がつかないから、いつかマキシマム ザ ホルモンの「シミ」とかやって欲しいなぁ。

参考リンク:広瀬 香美 Official YouTube channel
Report:P.K.サンジュン
イラスト:稲葉翔子

▼衝撃的だった「紅蓮華」。たぶん10回は観た。

▼こんな「天城越え」ある? 曲の解説にも唸った。

▼どぶろっくの「もしかしてだけど」も最高にカッコいい。

▼「恋愛レボリューション21」では、つんく♂の凄さが解説されている。