金も外車も高級マンションもいらない。どうしても……髪の毛が欲しい……ッ! そんな切実な願いを抱いている人がどれだけいるかは分からないが、特に執着がなかったとしても、ワカメを食べると髪が生えてくるという噂話くらいは耳にしたことがあるはずだ。
実はこれと似たような都市伝説は、世界中のありとあらゆる国に存在している。そこで今回、ロケットニュース24の英語版サイト SoraNews24(ソラニュース ) の読者に「あなたの国に伝わる髪が生える系の都市伝説」を聞いてみることにした。中には実践してみたくなるような方法もあったぞ。さっそくご紹介しよう。
・プロに聞く都市伝説
アメリカ、フィリピン、ブルガリアなど世界中から集まった都市伝説、その数なんと19。いずれも興味深い内容ばかりだが、せっかくなのでプロの意見も聞いてみたいところである。餅は餅屋なり。
そこで、集まった各国の都市伝説をAGA(男性型脱毛症)治療のプロに見てもらい、その方法が本当に髪に効くのかどうかを教えてもらったぞ。回答してくれたのは東京・新橋にある「銀座総合美容クリニック」だ。もしもーし、銀クリさん! 今日はよろしくお願いします。
・インタビュー開始
──さて、なんせ19個もありますので、サクサクお答えいただければと思います。まずはブルガリアから寄せられた以下の都市伝説です。
①ブルガリア「卵の黄身とオリーブオイルで髪を洗う」
──こちら、どう思われます?
銀クリ「卵の黄身は、おそらく卵にはたんぱく質が含まれているという文脈からでしょう。髪の毛は たんぱく質でできいますから、その原料を食べるということですね。
オリーブオイルについては、油を使って頭皮の脂を落とすということなのでしょうが、そもそも成人男性のもっとも多い薄毛の原因であるAGAは、髪にとっての悪玉男性ホルモンが原因で起こるものなので、頭皮の脂は関係ありません。ですから残念ながら薄毛改善にはなりません……。
頭皮の保湿という意味でのオリーブオイルであれば特に悪いことではないですが、薄毛改善とは関係ないですし、必ずしも必要なものではありませんね……」
──無念、ブルガリア……! お次はインドネシアからの情報です。
②インドネシア「アロエベラを頭皮と髪に塗る」
銀クリ「これは……日本における『火傷にアロエが効く』とかそういったものに近いんでしょうかね? だとすると、残念ですが炎症を抑えるとかそういう文脈とAGAは別なんです……」
──インドネシア、堕つ……! 続いてアメリカから2発届いていますので、まとめてお願いしゃす!
③アメリカ「(植物性)精油を髪に塗る」
④アメリカ「ローズマリーオイルで頭皮マッサージをする」
銀クリ「まず精油ですが、これはブルガリアのオリーブオイルと同じ理由で、残念ながら効果はないと思います……。ローズマリーオイルも同様ですね。マッサージに関しては血行改善という文脈でしょうが、残念ながらAGAの主要因であるDHT(髪にとっての悪玉男性ホルモン)にはアプローチしません……」
──USAもダメだったか~。ていうか「残念ですが」とか「残念ながら」とか、ちょっと申し訳なさそうにしすぎじゃないっすか? もっとブッタ斬る感じでもOKですよ。
銀クリ「失礼しました! 頑張ります!!」
──いや、別に頑張らなくてもいいっすけどね。で、お次はフィリピンから3つ届いていますが、こちらは順番に見ていきましょうか。
⑤フィリピン「髪の毛をブラッシングする」
銀クリ「ブラッシングすることで指通りが良くなるのは事実ですね。髪同士が絡むことがなくなるので、キューティクルが引っかかって剥がれることもなくなります。ただ、痛みの対策にはいいと思うんですけど、残念ながら薄毛には関係ないかと……」
⑥フィリピン「寝る前に髪を100回ブラッシングして、トリートメントとしてココナッツミルクを使う」
銀クリ「ブラッシングに関しては今お話した通りです。一方のココナッツミルクはたんぱく質ですから、ここでは髪の主成分である たんぱく質の補充を意味するのだと思われます。しかし残念ながら、AGAはDHTによって起こるものなので、残念ながらAGA改善との因果関係はありませんね……」
──何回「残念ながら」って言うねん! では次の都市伝説はどうですか? こちらも同じくフィリピンからです。
⑦フィリピン「ソータンホンを食べる(迷信もしくは冗談として、長い麺を使ったソータンホンを食べると長寿や長い髪が得られると信じられている)」
銀クリ「おお! これは面白いですね! とても面白いですよ!!」
──く、食いついたァァァァアアア! 今回は期待できるぞ……!!
銀クリ「よく言われがちなんですが、実はワカメや昆布って髪には効かないんですよ。きっと色や形で『効きそう』みたいなイメージが先行したんじゃないでしょうか。ただひたすら海藻を食べて髪を生やすというのは、ちょっと難しいです」
──マ、マジかよ……急に真実ブッ込んでくるやん。
銀クリ「ソータンホンってフィリピンの春雨みたいなものですよね? もしかするとこれも、長い麺の形状から髪に効きそうという都市伝説になったのかもしれません。いや~面白いな~!」
──なるほどぉ。それで、実際にはどうなんです? 効くんですか?
銀クリ「残念ながら効きません……」
──効かないんかーーーーい! ではフィリピンにはここで退場してもらい、お次はメキシコいきましょう。
⑧メキシコ「シャンプーのボトルに玉ねぎのスライスを入れ、暗い場所で2週間浸けておく。そのシャンプーを髪を洗う時に使う」
──シャンプーに玉ねぎて……。とんでもねぇこと言い出すなメキシコは。こちらはいかがでしょう?
銀クリ「玉ねぎで血液がサラサラになるという文脈によるものかもしれませんが、AGAは血行不良によるものではなく、何度も言うようにDHTが原因です。よって残念ながら、薄毛改善にはつながらないですね……」
──逆に効かなくてよかった。玉ねぎは正直キツイっすわ。さて、次は中国の都市伝説です。
⑨中国「頭皮に鍼を打つ」
──なんかすげぇ中国っぽいっすね。でも、ちょっと効きそうな気も……。
銀クリ「う~ん。一概に『鍼』といっても、どのような目的なのかが分からないので、残念ながら何とも言えません……」
──そういうパターンもあるのか。ではここから先は国籍不明の都市伝説をバンバン投げていきますので、バシバシご回答お願いしゃす!
⑩「ビタミン豊富な食べ物を食べる」
「ビタミン・ミネラルは髪の成長に関係してはいますが、残念ながら特定の食物を食べ続けることで薄毛は改善しません……。AGAはDHTが原因なんです」
⑪「米水で髪を洗う」
「残念ながら髪を洗っても毛は生えません。育毛シャンプーっていうのもありますけど、シャンプーは髪を生やす目的のものではないんですよ……」
⑫「経口避妊薬を潰し、それをシャンプーと混ぜる」
「 絶対にダメです。医薬品は用法容量をきちんと守ることが大切です」
⑬「ニンジンを食べる」
「先ほど ご説明したように、残念ながら特定の食物を食べ続けることで薄毛は改善しないんです……」
⑭「コラーゲンパウダーを髪に使う」
「残念ながらAGAはDHTによって起こります……」
⑮「ベルガモット油を頭皮に揉みこむ」
「オリーブオイルと同じで、残念ながら薄毛改善にはなりません……」
⑯「ホホバオイルを髪に塗る」
「オリーブオイルと同じで、残念ながら薄毛改善にはなりません……」
⑰「ティーツリーオイルを髪に塗る」
「オリーブオイルと同じで、残念ながら薄毛改善にはなりません……」
⑱「ヘンプオイルを髪に塗る」
「オリーブオイルと同じで、残念ながら薄毛改善にはなりません……」
──オイル使えねーなッ! もう次がラストです!!
⑲「毎日1リットル以上の水を飲む」
「残念ながら、意図がよく分かりません……」
──どうもありがとうございました。
・終~~~~~了~~~~~~~!
怒涛の「残念ながら」ラッシュも虚しく、世界各地から集まった19の都市伝説は残念ながらすべて無意味という衝撃的な結果となってしまった。そんなバカな……嘘やろ……。まことに、まことに残念である。
つまりこれは、餅は餅屋、専門家への相談が不可欠であることを意味する。まあ冷静に考えれば至極当然なんだが……果たしてそんな結末でこの話を終えてしまっていいのだろうか? いや、ダメに決まってんだろォォォォオオオオ!
・伝説を求めて
今回、たしかに世界の都市伝説はことごとく否定されてしまった。でも俺たちはなぁ、髪は失っても……ロマンまで失ったつもりはないんだぜ! というわけで、これからも本当に髪に効く都市伝説を探していくつもりだ。みんなも何かいい伝説があったら教えてくれよな! そう、俺たちの戦いは続く!!
参考リンク:銀座総合美容クリニック
Report:あひるねこ
Photo:RocketNews24.