燻製……スモーク……とにかくやれば大体のものがウマくなる魔法の調理法。やってみたくもあるが、ハードルが高い。そういうイメージ、ありますよね。ロケットニュースでも燻製を作ったり食べたりする記事はいくつか出ている。が、自作の場合なにやらそれっぽい設備と手間が必要なのは確か。

調理器具などを所持し、料理の覚えがある人は燻製とて可能ということだろう。しかし筆者の家には鍋の一つもない。そもそもコンロすらずいぶん前にぶっ潰してしまった。しかし燻製は作ってみたい……そんな人生を送っていたある日、Amazonでポータブル燻製器なるものを発見。凄く小さくて簡単そうだ。こいつは試してみるしかねぇ!

・3150円

お値段は3150円と手ごろ。今から調理環境を整えるよりは安い。新たな食文化への期待を胸にさっそくポチる。そして翌日には現物とご対面。ほう……商品画像で小さいのはわかっていたが、あらためて実物を前にすると本当に用をなすのか心配になるコンパクトさである。


中には本体の他に、サクラ、クルミ、ヒッコリーと書かれた木片の包みも同封されていた。これを使って燻製しろということなのだろう。


どうにも筆者の持つ燻製のイメージ的に、これで燻製ができるとは信じがたい。ちなみにそのイメージとは、スカンジナビア半島あたりで荒々しい男たちが、サーモンだかニシンだかの燻製をちょっとした小屋のような建物をフルに使って作る……というもの。ずいぶん昔に映画だかドキュメンタリーだかで見た光景だ。

それがどうだ。こんなスマホじみたサイズの乾電池で動く貧弱そうなガジェットでどうにかなるだと? ぶっちゃけ期待は全くできない。というか、無理だろと。まあやるだけやってみるけど。


・チーズ

ということで、説明書に従って準備することに。今回スモークしてみるのは適当に買ってきたチェダーチーズである。一切れ紙皿に乗せ、ジップロックに入れる。燻製器にはスモーク用の木片をいくばくか入れ、付属のチューブでジップロックと繋ぐ。ちなみに選んだのはサクラだ。


そして点火。



うぉぉおおおおおおお! なんということでしょう。圧倒的すぎる煙。ジップロックは一瞬で煙で満たされ、あふれた煙が部屋中に充満。もはや火事を疑われるレベル。あわてて窓を開け、サーキュレーターを起動して煙を追い出したが……どうやらこいつの発煙力を見くびりすぎていたようだ。

チーズに適した燻製時間というものが良く分からないのだが、説明書には3分以上連続での使用をしないよう書かれている。まあジップロック程度を煙で満たすには、ぶっちゃけ5秒くらいで十分だったろう。

点火から2分程度で丁度木が燃え尽きたのか、煙の放出が止まった。いいタイミングなのでチューブを抜き、封をする。説明書には1~2分放置するよう書かれているので、とりあえずそれにならってチーズを放置。


・まさかの

そしていよいよ燻製……できたのかはともかく、ジップロック内で数分にわたり煙に包まれていたチーズとご対面。ぶっちゃけ見た目は前と変わっていない。色も同じである。が、匂いについては確かに煙たい。スモーク……というよりは煙たい。The 煙


そして食べてみると、ちゃんとそれっぽいフレーバーがついている……ッ! 全く期待していなかったこともあり、正直少し感動したレベルである。これがサクラの木の煙由来の味なのかはよくわからないが、とにかく味が違う

マジか、こんなので味に変化が出るとは……小さいと侮っていたが、実力はそれなりにあるようだ。ちなみにチェダーチーズをサクラの木で燻製にするのはお勧めしない。味は確かに変わるし、スモーク感も出る。しかし美味いか不味いかでいうと、そこそこ不味い。相性が悪い気がする。

また、魚の燻製などであるような、対象の水分すらも奪った状態にするような、ガチめな燻製は流石に無理だろう。そもそも連続稼動時間が3分である。あくまで香り付け程度。とはいえ、それだけであればちゃんと仕事はすると言えよう。耐久性とかはよく分からない。

最後に一つ。今これを書きながら筆者の目からは涙が流れている。なぜかというと、部屋がどうしようもないレベルで煙たく、目がシパシパして痛いからだ。今は窓を開けて換気扇をつけているため少しずつ状況が改善されているが、初動が遅れたのは致命的だった。今では着ている服すらも煙たい。

マジでそこそこ煙が出るので、使ってみようという方は最初から換気を十分に……あるいはベランダなどがいい気がする。というか、これはキャンプとかそういうアウトドアな場面で使うべきものじゃないかなと。コンパクトだしな。

参考リンク:Amazon
執筆:江川資具
Photo:RocketNews24.

▼単三電池2本で動く。