酒が好きだ。女性が好きだ。つまり私(hirazi)は相席系ラウンジが好きだ。今でこそ足を運ぶ機会は減ったものの、3年ほど前は週末になれば繰り出していたほどである。

そこまで通い詰めればトラブルに1度や2度は出くわすもの。今回の記事では、まったく身に覚えのない容疑で相席系ラウンジに軟禁されてしまった話をしたい。なぜあのような因縁をふっかけられたのかは今でも謎のままである……

・週末、都内の繁華街にて

街も賑わう週末の土曜日。いつものツレと2人で都内の某繁華街に繰り出していた。お目当てはもちろん女性との楽しいお酒で、相席系ラウンジはお決まりコースの1つである。

なお、相席系ラウンジにおける我々の決めごとは、30分以上は相席しない。なぜなら30分単位で料金が加算されるからだ。好みの女性なら外に誘って、断られたら席替えをしてもらうか、退席したのち別の相席系ラウンジへGOである。あまり褒められた飲み方じゃなかったが……。

さて、事件当日も複数件の相席系ラウンジを巡っており、時間にして22時前ぐらい。「さ〜て、次はどのお店に行こうか」なんてツレとゲラゲラ笑いながら繁華街を散策していた。楽しい週末が一変し、鬱憤(うっぷん)にまみれる夜が始まるとも知らずに……

・まったく身に覚えのない容疑

キャッチの声を断りながら同じ道をグルグルと歩き回り、数時間前に飲んでいた相席系ラウンジの前を通過しようというところで、店舗の入り口付近にたたずんでいた店員が声を掛けてきた。


店員「さっき飲んでいましたよね? 少しお話があるので店内に良いですか?」


オラオラ系の兄ちゃんを想像される方が多いかもしれないが、その店員はどこにでもいそうな普通のおっさんである。40代前半くらいで耳に髪がかからないくらいの短髪、少し白髪も混じっていたかもしれない。

私は軽く酔っており、いつも通っているお礼でもされるのかなぁ〜可愛い子と相席にでもしてくれるのかなぁ〜なんて甘い考えに妄想を膨らましながら、なんの警戒心も持たずについて行った

見慣れた店内に足を踏み入れる。個室に案内されて、少し待つようにと指示をされるわけだが、なぜか店員はドアを少し開けたまま出ていった。締め切ると監禁罪になるとか、そんなことなのだろうか? 何かがおかしい……そう思いはじめてきたところ、先ほどの店員が部屋に戻ってきて驚きの言葉を浴びせてきた。


店員「呼び出しボタン、盗みましたよね。出してもらえますか?」


へ?


何を言われているのか理解するまでに時間がかかった。もちろん、私もツレも呼び出しボタンなんて盗んでいない。盗む理由もない。したがって我々は「盗んでいません」としか言いようがなかった。だがしかし……


店員「いやいや。お兄さんたちが店の前を通った時に、反応があったんですよねぇ」


何が何で、どんな反応があったのかは良く分からないが、店員の言葉は自信に満ちあふれていた。それから不毛な言い争いが続く……


筆者「いや、そもそも我々がそんなモノ盗むメリットないじゃないですか!」

店員「可愛い女の子と相席にならなかった腹いせでしょ?」


いったい何を言っているんだ、この人は。菩薩と呼ばれていた私と言えど、ここまでバカにされたらさすがに怒り心頭だ。言葉は悪いが、ぶん殴る一歩手前である。唇を噛み締めて堪えていたことを今でも覚えている。


店員「とにかく返却してください。そしたら帰って良いので。返却するまでは帰せませんからね!」


どうやら、ボタンが見つかるまでは帰す気がないようだ。週末の貴重な時間が削られていく……まだまだ飲み足りないのにぃぃィィ!! 

フラストレーション全開のなか私はひらめいた。そや! バックの中を全部見せたろ!! そうすれば即座に疑いを晴らすことができる。我ながら名案ではないか。というか、なぜ早々にそうしなかったのだろう。

ということで、バックの中を隅から隅まで見せる私とツレ。もちろんボタンなんて出てくるハズがない。しかし、店員から返ってきた言葉は……


店員「いや、どこにあるんですか?」


はぁ?


はぁぁぁぁ?


し・ら・ね・え・よぉぉぉぉぉぉぉぉォ!!


もはや異国の方とお話をしている気分だった。きっと、間違えたと思いつつも引き返せないところまで来てしまっていたのだろう。ここまで来ると私の取れる行動は1つだけである。おまわりさんに助けてもらうしかあるまい


筆者「警察呼びますよ! 軟禁ですよねこれ!?」


正直に言うと電話をするまでもなく、このフレーズで不毛な争いに終止符を打つことができると考えていたのだが、その考えは甘かった。


店員「どうぞ! 呼んでください!!」


もう開いた口が塞がらない。その自信がどこから出てくるのか理解不能だ。もしかしたら、掛ける掛ける詐欺で脅しだと思ったのかもしれない。私も最初はそのつもりだったのだが残念。一寸の迷いもなく110番に掛けた


筆者「あの〜。◯◯っていうお店に軟禁されていて帰してくれないんです、すぐに来ていただけませんか?」


電話をしてからものの数分だったと思う。あっという間に駆けつける警察。まだ敵になるか味方になるかは分からない。今までの経緯を說明したところ警察官が下したジャッジは……


警察「バックまで見せて無いんだから盗ってないでしょ」

我々の勝利が確定した。最強のガーディアンでも召喚した気分である。続けざまに店員に対して……

警察「週末の楽しい時間に拘束しちゃったんだから、飲み代返金するくらいしてあげても良いんじゃないですか?」


お、おぉ有り難し。取り調べなども行われると思っていたが、一瞬の出来事であった。もしかしたら「忙しいのにこんなことで呼ぶなよ」と内心では思っていたのかもしれないが、ご容赦いただきたい。必死だったのだ。

さて、一方的な判決を言い渡されてしまった店員だが、言いたいことはタップリとあるはず。これから店員のターン、と思いきや、国家権力を前にして何も言えなくなっていた。ひたすら無言を貫く。さっきまでの自信に満ちた取り調べは何だったのだ……

結局、飲み代を返金するという提案には応じなかったものの、「すみませんでした」とまったく心の籠もっていない謝罪の言葉をもらい、後味の悪さを残しつつも我々は帰路についたのであった。

・掛け違えたボタン

このような記事を書いたものの、事件が起きた店舗は優良店である。というのも、私はそれまでに何度も足を運んでいて、お店側の対応に不満を抱いたことは無かったし、楽しい時間を提供してもらっていた。ちなみに、最大手の相席屋ではない。

その日はきっと、店員がどこかでボタンを掛け違えてしまったんだと思うが、我々も30分以上は相席をせず褒められた飲み方をしていた訳ではない。それが疑われる原因になった可能性だってある。無用なトラブルに巻き込まれないためにも、読者の皆様には節度ある飲み方をオススメしたい。

Report:hirazi(ひらじ)
Photo:RocketNews24.
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