私の妻はドイツ人だ。交際し始めてから今日(こんにち)までの約6年の間、たくさんのカルチャーショックを体験してきた。

その多くが「ふ~ん、そうなんだ~」くらいの衝撃度なのだが、たまに開いた口が塞がらないくらい強烈なカルチャーショックを受けることがある。現に先日、凄まじい文化の違いを体験した。

それは私の価値観のルーツに気づかせてくれ、これからどう生きていくべきかのヒントも与えてくれた。開眼にも近い気づきと導きを与えてくれたこの経験を、ぜひみなさんにも共有したいと思いペンをとった次第である。

・ “当たり前” の崩壊

それはセミの声が鳴り響く、暑い夏の日だった。行きつけのスーパーで買い物をしていると、小学生向け『夏休みの自由研究キット』なる商品が目に飛び込んできた。

「自由研究をやっていた時代もあったなあ~」とどこか懐かしい気持ちに浸っていると、買い物カゴを腕に下げた妻が横からのぞき込み、「これ、なに?」と目をキラキラさせて聞いてきた。つぶらな瞳がカワイイ。

私は日本の子どもたちの大変さを代弁するかのように、仰々しく「日本の夏休みには自由研究というものがあってね、みんなこれに苦労するんだよ!」と説明した。

するといつもはニコニコして可愛い妻が、なんとも納得がいかない表情をして、こんな言葉を投げかけてきた。


「日本って、夏休みに課題があるの? それって、休みじゃないじゃん」



一瞬、頭が真っ白になった。妻が何を言っているのか理解できなかった。夏休みだぞ? 文字通り、夏に休んで……


休んでねえええええ! がっちり課題やっちゃってる! なんなら日記という課題を毎日やっちゃてるぅぅぅうう!


・大人の当たり前は子ども時代に形成される?

もう膝から崩れ落ちそうだった。今までずっと休みだと思っていたものが、本当の意味では休みではなかっただと!? なんでこんな単純なことに今まで気づかなかったんだ。

「じゃあ、ドイツの夏休みには課題はないの? 全く?」とおそるおそる妻に聞いてみると、「当たり前じゃん! 夏休みだよ? 休みなんだよ?」との回答が。そうだよね、休みだもんね……

あまりの衝撃にうろたえながらも、ここで冷静になる。待てよ、これって社会人が休みの日でも仕事のことを考えちゃうことに関係してるんじゃないか。日本人はオンとオフの切り替えが下手だといわれるが、それは子どもの頃からオフの日にオンになるよう訓練されてきたからじゃないのか。

・他の文化を知ることは自分を知ること

休みとされている期間に、課題をやる。この習慣がどんなときでも学ぶ姿勢を忘れない勤勉さを生んでいるかもしれないが、休みの日に心からオフモードになれない原因も作り出しているかもしれない。

ちなみに、妻のドイツ人家族と一緒に夏のリゾート地に行ったとき、完全なオフモードで過ごすその贅沢な時間の使い方に驚かされた。どうやら文化の違いは、休日の過ごし方にも現れるようだ。(そのときのエピソードは、また別の機会に)

休みとは何なのか? どうしたら心からリフレッシュできるのか? そんなたくさんの考えるきっかけを与えてくれる妻との会話が大好きだ。そして一生懸命に考える私を、幸せそうにじーっと見つめる妻の笑顔が大好きだ♪

執筆:田代大一朗
Photos:RocketNews24.
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