
「あの頃はケンカばかりだったけど、失って初めて彼の大切さに気づいた」……誰しもがそんな経験の1度や2度はあるだろう。そういった意味で恋愛とレバ刺しはよく似ているが、決定的に違う点がある。もう2度と会えない彼に対して「レバ刺しは海外に行けば食べられる」のだ。
「タイにレバ刺しを食わせる屋台がある」などと聞けば「衛生面は大丈夫?」という疑念を抱く人が多いかもしれない。しかし日本でレバ刺しが禁止になった経緯を思い出してみてほしい。タイ人に「日本人に言われたくねぇ」と返されたら反論できないのだということを。
世界中どこへ行こうが当たるときは当たる。レバ刺し屋台が文句を言われず営業できている理由は、これまで当たらずにきているからではなかろうか。実際のところは分からないが、とにかく食べたい。「もう見たくない」と思うほどに、久々のレバ刺しを腹一杯食べたい!
・想定外……険しい道のり
物価の安い国へ来て豪遊するのは全然悪いことじゃない。……だからといって何でも高いほうをチョイスすればいいワケではないと、個人的には思っている。例えばタクシーだ。日本の電車と大差ない金額とくれば嬉しくって気安く乗ってしまいがちである。
しかし見知らぬ国の電車やバスに乗り、現地の皆さんの日常を垣間見ることも旅の楽しみなのではないだろうか? レバ刺し屋台のある場所へはタクシーでしか行けないと事前に調べていたが、私はギリギリまで電車を乗り継ぎそこからタクシーを拾うことにした。
でも、それがいけなかった。
到着したのはタイ鉄道「プラカノン駅」。さっきまで大雨が降っていたこと、ここが都市部から外れているということ、夕暮れ時だということ……そのどれが原因なのか不明だが、とにかく駅前で20分待ってもタクシーが1台も来ないのである。
仕方がないので少しづつ歩みを進めていくと辺りは完全に郊外となり、いよいよタクシーは来そうにない。地図アプリによると目的地までは見通しのよい一本道。頑張れば歩けなくない距離だ。よぉ〜し……
私はタクシーをあきらめて歩くことにした。途中でポケモンを捕まえられるし、運動にもなるじゃあないか。
果たして道中で見た景色は、タクシーに乗っていたのでは絶対にお目にかかれぬものばかりであった。旅の神様はときにこういったサプライズを用意なさっているのである! ……でもサッとレバ刺しだけ食べたいという人は、都市部からタクシーで向かうのが安心かもしれない。
・うっかり通り過ぎそう
駅から歩くこと50分。知らなければ通り過ぎてしまいそうなほどさりげなく、お目当ての小さな屋台村は存在していた。倉庫ほどのスペースの奥半分がレバ刺しで有名なお店になっている。
雨の平日だというのにレバ刺し店エリアはほぼ満席だ。蒸し暑いなか鍋をつつく客が多くみられ、人気メニューなのかもしれない。
着席すると足元には無数のニワトリがコケコケと物欲しげに練り歩いている。ペットなのか野良かあるいは商品か……気になるところだ。
どうやらここはレバ刺し専門というより、海鮮と肉を生で食わせる店のようである。豊富なメニュー表には「ユッケ」など専門用語も並ぶ。レバ刺しはどれだろう、えーと……レバ刺しを英語でいうと……フレッシュレバー……かな……? 全然違うかな……?
するとおもむろにオーダーを取りに来たタイ人店員が開口一番、慣れた日本語で「レバ刺しはコレ」とメニューを指差したのだった。
・生肉祭りだ!
私は日本にいてもたまに「お国はどちら」と尋ねられるビジュアルの持ち主である。そんな私に迷うことなく日本語で話しかけてくるあたり、レバ刺し目当ての日本人客がいかに多いかがうかがえる。お言葉に甘えて「じゃあ、それをひとつ……」と日本語で返した。
ほどなくして運ばれてきたレバ刺しはゴマ油と塩でいただく紛れもないジャパニーズスタイル! ゴマにネギ、ショウガとニンニクも添えられているが、切り方が若干ダイナミックである。さっそく食べてみると……
タイ感ゼロ!
ジャパン感100!
すげぇや……居酒屋や焼肉屋で昔よく食べたレバ刺しと完全に一致している。それどころか過去食べた中でもトップレベルのウマさと感じるのは、懐かしさスパイスが加わっているせいだろうか……。気温30度超えのバンコクの屋台にいて、どこかから琴の音が聴こえてきそうだ。
しかも値段は1皿70バーツ(約250円)という安さなのである。ここは張り切って豪遊する場面と決め込み、さっそく追加オーダーだ。あと5皿は軽くいけそうな気がする。しかし……
豊富なメニューについ目移りし、牛刺し、生エビ、ホッキ貝、生ガキなど次々に注文してしまった。個人的にオススメなのはブラックタイガーに似た歯ごたえある生エビ。このサイズを生食できる機会は日本だとなかなか無い。
貝類は若干冷えすぎてパサパサしていたが、食中毒に注意していることの表れである。1人生肉祭りを思う存分楽しみ、ビールも飲んでお会計は500バーツ(約1760円)ほど。物価が違うのでひとくくりに「安い」とはいえないが、滅多にない機会なので日本円にものを言わせてもいいんじゃないだろうか。
・このために渡航する価値アリ
お会計の際、店主とみられる男性から「日本人いっぱいクルヨ〜」と日本語で話しかけられた。「みんな車で来る」とも言われたので、観光客というよりは現地に住む日本人が行きつける店なのかもしれない。
行きの苦労に比べて帰りは非常にあっさりとタクシーに乗ることができた。お店の人がある程度の日本語を話せるので、万が一のときは頼めばなんとかしてくれるだろう。
日本ではもうお目にかかれないレバ刺し。タイ行きのチケットは時期によって往復3万円前後で購入できるので、たくさん食べればレバ刺しだけで運賃の元をとることだって可能である。好きな人はこのためだけに渡航するのも大アリだ! ただし自己責任でね!!
・今回ご紹介したお店の詳細データ
施設名 ラーン ラップ ラップ イサーン料理&レバ刺し
住所 1013 ซอย ปรีดีพนมยงค์ 43 Khwaeng Khlong Tan Nuea, Khet Watthana, Krung Thep Maha Nakhon 10110 タイ
時間 18:00〜3:00頃
Report:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.
▼クセのない牛刺し
▼ブリブリの生エビ
▼やや味気ないホッキ貝
▼大粒生ガキ
▼焼きエビも注文したが……
▼中はレア状態! ウマい!
亀沢郁奈



















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