出会いはいつも思いがけず、突然だ。うだるとは言わないまでも、ややうだる7月下旬のこと。期せずして画期的なお店の情報を入手し、私(西本)はすぐさま全てのことを放り出して現地にひた走った。

店先の看板には、天を目指すように細長く伸びた「ソフトクリーム」の写真。それこそが目当ての品だった。「なんてこぼれやすく食べにくそうで、しかし美味しそうで、奇抜でいて美しいソフトクリームなんだ」と、こみ入った高ぶりを抱いていたのだが……意外な展開が待っていた

・明かされた正体

私が向かった場所というのは、渋谷駅から徒歩10分ほどの距離に位置する「白一 渋谷店」である。

「冷夏だなんだと言われていたが、暑い日は暑いわな。そりゃそうだわな」と少々ぐったりしていたところに、「文字通りとがったデザインのソフトクリーム」の写真は抜群の威力で突き刺さった。

はやる気持ちを抑えずにはやらせたまま入店し、レジカウンターまで最短距離を進んだ。メニューにはコーヒー牛乳味や黒蜜きなこ味なども書かれていたが、プレーンなコーンタイプ(440円)を注文。カップで頼むこともできるようだ。

ほどなくして実物が提供され、私の心は大いに踊った。これだ。これが欲しかったのだ。

なめらかで、鋭利にさえ感じるフォルムがなんとも美しい。ビジュアルだけで言えば短刀にも似ている。食べ物を粗末にするのは厳禁だが、あらゆる戦争において武器がこれだけになればいいのにと思った。

そんな風に眺めていると、ふと違和感を覚えた。写真を見た時は「こぼれやすく食べにくそう」と感じたものだが……実際に持ってみると意外なほど安定している。この細さにもかかわらず、手に伝わる感覚は何かのオブジェを持っているかのよう。

これまでの人生でオブジェを持ったことがないので今のは完全に勢い任せの表現だが、ともあれ食べてみればその理由がわかるかと思い、加えて先ほどから舌がうずいてたまらなかったので、「美しいソフトクリーム」にひと思いにかぶりついた。

食べやすい。簡単にこぼれそうにない。そして食べた瞬間に理由を悟った。


これ、ソフトクリームじゃない


見た目は酷似しているものの……違う。このシャリシャリとした食感は、ソフトクリームのそれとはかけ離れている。ではいったい何なのか。答えを求めていると、折良く店内の説明書きが目に入った。

どうやらこのデザートは、「生アイス」というオリジナルのジャンルのものらしい。自然で高品質なアイスをソフトクリームより新鮮な状態で提供しているため、お店側が区別して定義しているのだそうだ。

思い返してみれば、確かに店の看板にも「牛乳生アイス」との表記があった。気持ちがはやりすぎていたため、認識がおろそかだった。

説明を踏まえたうえで、改めてその「生アイス」を食べてみる。ソフトクリームが濃厚でまったりしている一方、「生アイス」はさっぱりと爽快だ。ラクトアイスとソフトクリームの中間のような新感覚の味わいが口の中に広がっていく。実に美味しい。

そうした硬めの仕上がりだからこそ、この独自のデザインを成しえたのだろう。とはいえ舌に触れたそばからひんやり溶けていくので、口当たりは快い。

甘さが後を引かず、人によってはソフトクリームより食べやすく感じるかもしれない。一口一口を深く味わうというより、止まらずに食べ進めていってしまう一品だ。


・ひと夏の出会い

とまぁ、ちょっとした認識違いはあったものの、初めての「生アイス」を楽しむことができたので、結果としては大満足である。形が長い分ボリュームもあったが、ぺろりと苦もなく食べきってしまったほどだ。

素晴らしきひと夏の出会いだった。うんざりする暑さであっても、気になるものがあったら出かけてみることは大事かもしれない。きっとそこでしか味わえない「生」の体験ができるはずだ。

・今回紹介した店舗の情報

店名 白一 渋谷店
住所 東京都渋谷区神南1-7-7
営業時間 11:00~20:00(夏の期間は22:00まで)
定休日 無休

参照元:白一
Report:西本大紀
Photo:Rocketnews24.
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▼「メチャクチャ細長くて食べにくいソフトクリーム」と思いきや…

▼その正体は「生アイス」。シャリシャリとした食感が特徴的

▼食べやすい。そしてさっぱり爽快で実に美味しい

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