昨今、ゲームなどをきっかけに刀剣(日本刀)がブームになっている。名刀の展示に多数の人が来場して数億円規模の経済効果をもたらしたり、日本刀の復元や保存のためのクラウドファンディングが募集開始からわずか数時間で目標金額に到達したり、とその勢いは止まらない。しかし、刀剣に馴染みがない、難しそうだし見ても魅力が分からない……という方も多いのではないだろうか。

実は筆者もそうだったが、刀剣をじっくり鑑賞しているとコツをつかんで刀の見え方が変わり、嘘のように刀身表面に見える模様が増えてくるのだ。博物館などでは混雑していて、刀剣をゆっくり眺められないこともあるが、なんと名刀や戦国武将の兜・甲冑をゆっくり見られ、しかも無料かつ撮影もOKな超穴場スポットを発見した。さっそく行ってみたよ!

・ミシュラン3つ星ホテルに大量の名刀や兜・甲冑が

刀剣好きの中でも知る人ぞ知る穴場スポット「刀剣コレクションルーム(桑名・多度)」は、三重県・桑名市の「ホテル多度温泉」にある。

格付けでおなじみのミシュランガイド・東海版のホテル部門で3パビリオン(3つ星)と評価されているだけあり、見た目や内装はかなり綺麗。

だが豪華な貴賓室やコンペルームなど計3部屋に、なぜか名刀や兜・甲冑が大量に展示してある。迫力ありすぎ。

展示されている甲冑の中には、徳川四天王の1人・本多忠勝の甲冑もあった。

本多忠勝の肖像画でおなじみの黒い鹿角の兜(かぶと)ではないが、こちらの兜も木彫り鹿角のインパクトが凄い〜!

他の甲冑も藩主所用や名家に伝来していたものだったりと凄いラインナップ。そして刀剣も、甲冑に負けず凄いもの揃い。愛刀家だった戦国武将・上杉謙信が所蔵していた刀のうち、謙信の後継者・景勝が選抜した35振りの名刀「上杉三十五腰」の1振りである国宗の太刀がしれっと展示してある。超レアものだ!

ほっそりとして、たおやかな弧を描く姿が優美。刃文の多様なキラメキは、目が離せない美しさ。地金に「映り」という、室町以前の刀に見られるモヤのような模様も。

レアものはまだまだある。若くして(一説では27歳)この世を去ったにも関わらず、日本刀の世界において後世へも多大なる影響を与えた天才刀工・郷義弘の刀だ。

郷義弘は、おもちゃの刀やゲームのアイテムなどでも使われる「名刀正宗」というフレーズでおなじみの正宗、優れた短刀を数多く生み出した粟田口吉光と並んで「名物三作(天下三作)」とされる名刀工。

郷義弘の作には銘が切られた(刀工の名が記された)ものがなく、名刀揃いでありながら「江(郷)とお化けは見たことがない」と言われていたほど。そんなレアもの・江の刀を心ゆくまでじっくりと見て、撮影できる機会はなかなかない。

刃文の沸(にえ:キラキラした粒)や、地鉄(じがね)の横方向にまっすぐに通った木目のような模様(柾目)もしっかりと堪能できた。

他も負けず劣らずな名刀揃い! 鎌倉時代中期より京都(山城国)で栄えた刀工集団・来派の中でも評価の高い刀工、来国次の太刀だ。

反りが強く、刀身の幅が広いせいか堂々とした印象を受ける。

ゆったりと波打つような細い湾れ(のたれ)刃も美しい。

鎌倉時代の名工の太刀は他にもたくさん展示されていた。中でも、岡山(備前国)で活躍していた刀工一派・長船派の刀工、景光の太刀には目を奪われた。

刀身の根元からゆるやかに反った姿と、きらめく地鉄に落ち着いた刃文がとても優美。

名刀工揃いの長船派の中でも、地鉄の美しさへの評価が高い景光。鮮やかな地鉄に魅せられてしまう。

「忍者」のイメージが一人歩きしている武将・服部半蔵(服部正成)が本多忠勝の家老へ送った刀、なんてものも。南北朝時代の名門・直江志津の刀だ。

南北朝の刀剣によく見られる、刀身が太めで堂々とした姿。殺傷能力が高そう……。

強そうなだけでなく、刃文がくっきりとしていて美しい。

古い刀ばかりを紹介してきたが、1596年以降に作られた新刀も美しい。江戸時代に活躍した刀工、彫り物の名手・一竿子忠綱の刀の迫力は半端なかった。

彫られた龍のウロコや顔の彫りの細やかさが凄まじい〜! まつ毛バッシバシだ。

迫力ある龍の彫り物に負けないぐらい、刃文の主張も激しい。刀身の半分近くまで刃文がいれられている。

新刀は折れやすいとも言われるが、この一竿子忠綱の刀は厚みがあって幅も広く、なんだか強そうに見えた。

これらの他にもまっだまだ多数の刀剣が展示されており、刀剣好きの筆者としては「こんな部屋に住みたい」というのが正直な感想。同じ刀でも、見る角度を変えるだけで見えてくる模様が変わるので、一日いても本当に飽きなかった。

・誰でもタダで見られる

「刀剣コレクションルーム桑名・多度」はホテルの営業時間内であれば誰でも、宿泊客でなくとも無料で楽しめる。ただし、展示されているのが貴賓室やコンペルームのため、もし見に行かれる際は事前に問い合わせておくのが安全だ。

もちろん、宿泊して刀剣だけでなく温泉やゴルフなどをじっくり楽しむのも良いだろう。ホテル自慢の天然温泉は「美肌の湯」らしいので、温泉と美しい刀剣によって身も心も美しくなれる……かもしれない。

・今回ご紹介した展示の情報
会場 刀剣コレクションルーム桑名・多度ホテル多度温泉
住所 三重県桑名市多度町古野2692
入館料 無料

Report:伊達彩香
Photo:RocketNews24.

▼古い刀剣の特徴ある5つの作風・五箇伝(ごかでん)の1つ「相州伝」の実質的な創始者・新藤五国光の短刀

▼幕末の名工・源清麿の脇差。清麿の作刀は見た目の美しさもさることながら、切れ味も抜群だったよう。

もちろん切れ味を試すことはできないが、美しい刃文と地鉄(肌)は十分に堪能できた。

▼正宗の父(兄弟子という説もある)・行光の短刀。

ゆらゆらと揺らめくような刃文、刃文の中でも白い霧のような部分・匂(におい)を堪能できる逸品。めっちゃ綺麗。

▼正宗の子・貞宗の刀。潤いある地鉄と刃についたキラッキラの沸を堪能して欲しい。

▼長船派・景光の子、兼光の刀。二重刃に見える部分も。

▼刀・肥前住播磨守藤原忠国の刃文の一部。匂が綺麗についている。

▼刀・備前長船景光。織田信長の父・信秀のものと伝わる刀。地鉄の美しさが華やかな刃文をより引き立てている。

鎺(はばき:刀身の手元にはめる金具)に織田家の家紋・織田木瓜紋が。

▼長船派の祖・光忠の作とみられる刀。見る角度でがらりと見え方が変わる華やかな刃文がつけられていた。

▼鎌倉時代末期から活躍した刀工一派・吉岡一文字の刀。多様な乱れ方をした刃文に匂が華やかで、地鉄の映りも見事な傑作。

▼刀・於武州江戸越前康継。越前康継は徳川家康に命じられ、大阪城で焼けた名刀の再刃もしていた名工。

茎(なかご:刀身のうち柄に収まる部分)には試し斬りの際、人間の胴体を二つ重ねて切断したことが記されている。

▼ホテル内の刀剣コレクションルーム。本当に凄い展示量だった。

▼ホテルの客室もめっちゃ綺麗。日帰りしたことが悔やまれる。

▼全ての客室に天然温泉付きらしい。美人の湯……!

▼自然豊かなゴルフ場。たまにおサルさんもやってくるとか。