私(佐藤)の知る限り、街の食堂で提供されている「シチュー」とは、クリームシチューかブラウンシチューの2種しかないはず。白と茶色の2色しか存在しない、そう思っていた……。
ところがまだあったのだ、新しい色のシチューが。これはもしや「第3のシチュー」なのか? 大阪・北区にあるお店、かね又のシチューは、白でも茶色でもない。もっと言うなら、 “色” を排除したシチューだったのである。
・特製シチューの店
お店は、大阪メトロの天神橋筋6丁目駅から徒歩約3分のところ。谷町線の中崎町駅からも、JR大阪環状線の天満駅からも同じくらいの距離を隔てており、3つの駅を線で結んだ三角形の中心のような場所にある。
看板のはデカデカと「特製シチュー」とあり、店の名物であることは間違いなさそうだ。店構えから、昭和の雰囲気を色濃く残していることがうかがえる。
・シチュー定食に玉子焼き?
店のなかに入れば、昔馴染みの食堂だった。メニューを見ると、昼は日替わりの定食(700円)、シチュー定食(800円)には玉子焼きが付くようだ。
へ~、シチューに玉子焼きねえ。一緒に食べたことがないけど、シチューに合うのか? クリームシチューにオムレツが付くと思えば、それほど変ではないのか?
・想像を超える一品!
注文すると、最初にカウンター上にある小鉢から好きなものを2つ選ぶ。こういう仕組みも昭和を感じさせる。私が選んだのは、ホウレンソウのお浸しとひじきの煮物。ひじきなんか普段家で食べないから、嬉しいな~。
テレビのワイドショーを見ながら待っていると、今までの人生1度も出会ったことのないタイプのシチューが来た! これがここの特製シチューか!!
む、無色透明!?
これ、ほんとは豚汁じゃないの?
──シチューと言われてもにわかには信じがたい。雰囲気としては、ポトフに近い感じだろうか。牛で出汁をとって野菜を煮込んでおり、実際に食べてみるとコクと甘味を感じる。これはご飯ではなく、パンで食べたい感じもするが、不思議とご飯に合う!
そして、シチューの相方として定食についているのは玉子焼き。こちらは洋風の味付けをしているのかと思ったら、ストレートな和の味。一口食べると、実家に帰ったかのような懐かしい甘目の味付けだ。分厚く織り込まれた玉子の味わいは、何だかこれだけで贅沢に思われる。
・第3のシチューではなく
透明シチューに玉子焼き、この2つの料理を合わせるところに、古き良き日本の面影がうかがえる。きっとこちらのお店は、日本がまだ豊かではなかった昭和の時代に、シチューと玉子焼きで「ご馳走感」を出したかったのではないだろうか?
ということは、無色透明のシチューは「第3のシチュー」ではなく、ひょっとしたら洋食の先駆け、すなわち「第1のシチュー」だった……のかもしれない。
・今回訪問した店舗の情報
店名 かね又
住所 大阪府大阪市北区黒崎町12-15
営業時間 9:00~18:00
定休日 日祝
Report:佐藤英典
Photo:Rocketnews24