美しい男の娘が話題となることも多い現代日本。もはや「男気」という価値観自体が時代の波間に消え入ってしまったようにさえ感じる。
そんな中、今にも「不器用ですから」という無骨な声が聞こえてきそうな立ち食いそば屋があった。その名も『峠の蕎麦』。オヤジ1人が黙々と切り盛りしているこのそば屋の名物は「ドテ煮丼」! って、いきなり渋すぎィィィイイイ!!
・静かなる闘い
三ノ輪にあるこの店は、地元の人からも愛されている名店。入店すると、カウンターの奥で黙々とそばを作るオヤジとそのそばを黙々とすする客たちの静かなるデッドヒートが繰り広げられていた。客もまた不器用さのかたまりのような剛の者たちが集っているようだ。
・全部そば
名物のドテ煮丼は、「ドテ煮丼セット(税込620円)」を注文すると食べることができる。さっそく、食券を購入してオヤジに渡したその時! 私の目にある貼り紙が飛び込んで来た。その貼り紙には以下のようなニュアンスのことが書かれていた。
「うどんと注文されない場合そばになります」
──マジかよ! 確かにそういう店もあるけど、貼り紙してるのは初めて見たわ……伝え方がすでに不器用すぎる!! さらに、以下のような文言が続く。
「また、聞き取れなかった場合もそばになります」
──嘘だろォォォオオオ!? 聞き取れなかった場合の対応、不器用すぎィィィイイイ!! 思わず、写真を撮り忘れてしまうほど動揺してしまった。そこにやって来るドテ煮丼セット。ちなみに、入店してからオヤジはほぼ声を発していない。
・メニューは激ウマ
それはさて置き、ドテ煮丼はウマイ。甘辛いつゆとほろほろの牛肉が白飯と混ざり合い、ほっぺたがトロけそうだ。
また、そばはコシがあり、「スッ」と飲み下せるくらいにのど越しがスッキリしている。香るかつお出汁の風味も上品で、夏に食べたくなる爽やかさを感じた。
店の雰囲気は極限まで無骨だが、また食べに来たくなる味である。味に全振りした完全なストロングスタイル……役者で言うと、まるで高倉健さんのような渋い実力派だ。不器用すぎて石原プロが動くレベルである。
最後に、三ノ輪駅のすぐ近くにあるこの店。実は、隣はH19出口と抜群の立地に立っている。なんだ、意外と器用じゃん。
・今回紹介した店舗の情報
店名 峠の蕎麦
住所 東京都台東区三ノ輪2-14-8
営業時間 7:00~15:00
定休日 日・祝日
Report:立ち食いそば評論家・中澤星児
Photo:Rocketnews24.
▼石原プロが動くレベルのドテ煮丼