古民家を改装したフレンチレストラン……みたいな感じで、昔懐かしいレトロな部分をデザインとして残したまま生まれ変わる店舗は多い。エンタメ性が高いうえ、時代の記憶を残すことで地域住民にも違和感なく受け入れてもらえるからだ。

とは言え、100年以上の歴史ある銭湯が、いきなり「カンボジアレストラン」に大変身を遂げたら誰でも衝撃を受けるだろう。なんだか面白そうなので実際に行ってみたところ、料理が超ウマいのはさておき、けっこうガッツリ銭湯要素が残っていて笑ってしまった。

・福岡市博多区にあるお店

博多駅から1駅の吉塚駅を出て徒歩数分「吉塚商店街」の一角には、2007年まで熱湯で有名な銭湯「若桜湯」があったという。元プロボクサーの鬼塚勝也さんや横綱白鵬関にも愛された銭湯で約140年の歴史があったらしい。元銭湯のオーナー曰く「熱い湯が好きなスポーツ選手が多かった」のだとか。

で、当時の面影をガッツリそのまま残した状態で2017年12月に誕生したのが、冒頭でお伝えしたカンボジア料理店『シェムリアップ』である。「ゆ」と書かれた看板が思いっきりライトアップされているが、もちろん電気風呂も水風呂もない……カンボジアレストランだからだ。

・店内へ

さっそく男湯の入口から店内へ。番台と下足箱はそのままで、男湯脱衣所にはテーブル席、女湯脱衣所には座敷席があるようだ。また、ドライヤー付きの椅子や明治時代から置いてある体重計は、インテリアとして抜群の存在感を放っている……いやいやスゴイな。

ただ、銭湯のレトロでディープな感じは、東南アジア料理の世界観に妙にマッチしているというか……とてもイイ。ちなみに調理場は男湯で、壁にデカデカと描かれた富士山が立派である。男湯で出来上がるカンボジア料理か~、食べる前だが100点をあげてもいいだろう。

・人気メニューは……

さて、今回注文したのは、店主オススメの照り焼き鶏のプレートご飯「バーイ・サイッモアン(スープ付き880円)」。ぶっちゃけ名前は覚えづらいが、これがマジで最強過ぎたので暗記必須である。また、クメール風肉米麺「クイティアウ(860円)」も注文。う~ん、アレコレ頼みたくなってしまう。

バーイ・サイッモアンは、ライスの上に目玉焼きがドンッで最高 & ほのかに香るスパイスとナンプラーが、甘辛い照り焼き鶏のポテンシャルを最大限に引き出している。スプーンでガツガツ食べれば……白目をむくほどウマい。恐ろしいほど……ウマいッ!!

クイティアウも説明不要のウマさ。東南アジアで食べる麺料理は鉄板で、なんなら食べる前から白目をむくレベルである。牛骨、豚、鶏、野菜からダシを取ったスープがカンボジア感100%で、ウマいうえにカロリーは控えめ。こちらも注文必須だろう。

・名物店主

また名物店主のスロスさんがとても明るく、店内は常に賑やか。常連客が多いのも納得である。ただ、全体的に見れば銭湯要素が色濃く残っているため、風呂桶を持った人もちょくちょく訪れていて笑った。聞けば、脱衣所で服を脱ぎだした方もいたらしい……マジかよ。

とにかくウワサ通り、昭和の香りが漂う商店街の銭湯が、見事にカンボジアレストランへと生まれ変わっていた。海外旅行気分が味わえるうえに健康的で美味しい料理が食べられるので、気になった方はぜひ福岡のシェムリアップへ行ってみてくれ! 

・今回ご紹介した飲食店の詳細データ

店名 シェムリアップ
住所 福岡県博多区吉塚1−16−14
時間 11:30〜15:00 / 17:00〜23:00
休日 月曜日(祝日の場合は火曜日)

Report:砂子間正貫
Photo:RocketNews24.

▼若桜温泉の看板が目印

▼入口


▼レトロな店内



▼明治時代から置いてある体重計

▼照り焼き豚のプレートご飯「バーイ・サイッチュルーク」

▼スープもウマい

▼クメール風お好み焼き「バンチャエウ」はウコン・米粉・卵・ココナッツミルクで生地を作っている


▼お会計時に登場する超デカい電卓もインパクト大だ

日本、〒812-0041 福岡県福岡市博多区吉塚1丁目16−14