クリスマスしかり、バレンタインしかり。恋人の行事は、モテない人にとって邪魔でしかない。当編集部のせいじ中澤もやはりそう思っていた。「バレンタインの何が面白いんすかねえ~」、ここ数日、そうつぶやきながらため息ばかりついていた。
そんな彼が突然立ち上がった! 彼はJR渋谷駅前に、「ハッピーバレンタイン チョコください」と記したダンボールを持ち、その時を待った。チョコがもらえるその時を……。
・魂は安らぐのか?
毎年バレンタインに、浮かばれない魂を抱えた非モテたちが、息を殺してこの日が過ぎ去るのを待っている。たとえば今回のせいじ中澤のように、駅にダンボール箱を持って立つ姿も、そう珍しいものではない。しかし一体どれだけの成果を得ることができるのか? 非モテの魂は少しでも安らぐのか?
・渾身の力を込めて
この日はあいにくにも春の嵐。強風と雨が吹き荒れるなか、せいじ中澤は駅前で跪(ひざまず)き、ドン・キホーテで買ったスケッチブックに渾身の力を込めて、チョコくださいと記した。
「ハッピーバレンタイン」、その文字が震えて見えるのは気のせいか? いや気のせいではない。なぜなら、彼は祈るような思いで、ペンを走らせていたはず。
あまりにも気持ちが入りすぎていたため、彼はスケッチブックの紙ではなく、なんと裏表紙に書いていた。そのことにさえ気づかないとは。胸中察してあまりある……。
・自らに言い聞かせ
裏表紙のスケッチブックから引きちぎると、組み立てたダンボールに貼りつける。準備は整った。彼は小さな声で「ヨシ!」とまるで自分に言い聞かせるようにつぶやき、力強く立ち上がった。
その眼差しに、決意にも似た光が宿っている。すでに彼の心に、迷いは……、ない……。
世界一、人が行き交うと言われている渋谷駅前交差点。戦いのフィールドとしては申し分ないだろう。いや、彼の決意の前では、世界一の交差点さえ、小さく見えるくらいだ。
・雨降りでも笑み
降り止んでいたはずの雨が、再びポツリポツリと雨音を鳴らす。次第に激しくなる兆しを見せているというのに、せいじ中澤の口元には笑みが……。まさか、余裕を感じているのか。
ダンボールを持って立つその姿も、人々の傘の影に隠れて見えなくなりそうだ。しかし遠く離れても、彼の放つオーラを隠し切ることができない。
・その時が来た!
開始から約30分経過した頃、ついにその時がやって来た! ひとりの女性が近づいてきたのだ。これはまさかッ!?
キターッ! マジで来たよ。チョコをくれる人が。結構余裕で構えていたはずのせいじ中澤は、無邪気に喜んでいる。「マジっすか! ありがとうございます!」と子どものようにはしゃいでるじゃないか。
チョコを手にして見せる笑顔。ドヤ! と言わんばかりである。1個もらえるだけで、十分に有難い。だがこの後、いきなりフィーバータイムに突入! また来た、小柄な女性!!
笑顔の可愛らしい女性に、せいじ中澤はさらに得意顔。「これがワイの本気やで」と言わんばかりじゃないか。
さらに快進撃は続く。お次は可愛らしい女の子。このオジサンがかわいそうに見えたのかな!?
・なぜか小学生に囲まれて!?
本日のハイライト到来! 中国人の小学生と思われる一団に取り囲まれる事態に!! 通訳の方にいろいろと話しかけられながら、堪能な日本語で説明するせいじ中澤だった。さすがインターナショナルな男である。
彼は今自分が置かれている状況を、どう説明したのだろうか? そして子供たちにそれが伝わったのかは不明だ。
最後は一緒に記念撮影。子どもたちは国に帰った後に、家族にこの写真のことをどう伝えるのか、非常に気になる……。
まだまだ続くぞ! お次も可愛らしい女の子。ハーフっぽい子に人気なのか!?
そして男性からも! 国境を越え、さらに性別を超えて人気を得つつある。
・見えない力
絶え間なく続く快進撃。ただダンボールを持って立っているオッサンのはずなのに、何か見えない力が働いているのか!?
そして可愛らしい女性が多いのは気のせいだろうか? もしかしてせいじ中澤は、潜在的イケメンである可能性も否定できない。
・1日中いればダンボールがいっぱいになるかも!?
こうして1時間のチャレンジは終了。彼のみなぎる気合いが、想像をはるかに超える結果を出した。
駅前を去ろうとしたら、通りすがりの男性からさらに1個もらった。人を惹きつけて止まない力を持つ男、それがせいじ中澤である。1日中ダンボールを持って立っていたら、もしかしたら満杯になってしまうのかもしれない。
頂いたモノは全部で11個。チョコでないモノもあるけど、頂けるだけで有難い。まさかここまでとは……。
このチャレンジを終えたせいじ中澤は、すっかりバレンタインが好きになっていた。「バレンタイン、めっちゃイイもんじゃないっすか。俺めっちゃ好きやわ~」。彼にとって心温まる1日になったことは言うまでもない……。
Report:佐藤英典
Photo:Rocketnews24
▼1時間の間に、いろいろ頂きました。ありがとうございます!