ネコとネズミが仲が悪いのは、常識中の常識。けれど『トムとジェリー』を見ては、「本当はネコとネズミも仲が良いのかも」と思い込みたくなることもある……。
だがしかし! そんなメルヘン脳を黙らせる研究結果が、この度発表されたのだ。なんとネコのオシッコには、“ネズミを逃げなくさせる” 働きがあるというではないか! あの爪、牙、俊敏さだけでなく、オシッコでまでネズミを追い込むネコ。そこまでか……! そこまでするのか……!!
・ネズミがネコから逃げなくなる?
チェコで毎年開催される実験生物学学会にて、モスクワのANセベルツォーフ生態・進化協会がある発表を行った。それは、「ネコのオシッコにさらされた子ネズミは、その後ネコから逃げなくなる傾向を見せた」という実験結果。
なんでも研究グループが、生後1カ月のネズミをネコの尿に含まれる化合物 “フェリニン” に2週間さらし続けたところ、実験のネズミたちは宿敵・ネコの匂いを嗅いでも逃げなくなるというのだ!
・鍵は “臨界期” と “フェリニン”
鍵となるのが、ある刺激が与えられたとき、その効果が最もよく現れる時期 “臨界期” と、ネコの尿の “フェリニン” 。 通常、フェリニンを検知したネズミは、ストレスホルモンの上昇など生理的反応を見せる。しかし臨界期にフェリニンにさらされて育ったネズミは、ネコを怖がったり逃げ出さなくなるというのだ。
・生きるために、ネコから逃げてばかりではいられない
研究グループはその理由について、 “ネコから逃げなくなる変化” は、ネズミが生きていく上で必要なことだからだと考えているという。なぜならネズミは食べ物を得るために、人間の近くで暮らさなければならない。そして、ネコも人間の周りで暮らしている。
そう。人里に暮らすネズミが生きていくには、怖いネコから逃げまわってばかりはいられないのだ。ネコが身近に存在する環境に、ネズミは自らを慣れさせなければいけないのだ。
・ネコにとって有利な状況に
しかし「ネズミが逃げなくなる」 = 「ネズミを捕まえやすくなる」のだから、結果的にネコにとって理想的な状況になることは間違いないだろう。ということで、今回の発見を BBC などは「ネコは “化学兵器(オシッコ)” をも使ってネズミを追い込む!」と報じている。
ちなみにこのフェリニンには、ネズミを流産させる働きもあるのだから恐ろしいもの。なんだかネコとネズミの歴史の長さ、関係性の強さを痛感してしまうのだった。