突然だが、「Youだったのか!」という感じであり、「なぜ、こんな時に……」という気持ちでもある。今、私(筆者)はアメリカはユタ州にいるのだが、こんな日本から遠い場所で迷惑メールの記事を書くことになるなんて、サノバビッチもいいとこだ。
TBSの報道によると、大規模詐欺グループ34人が逮捕されたとのこと。まいどおなじみ「7000万円を譲ります」などの迷惑メールを駆使し、全国で数億円をだまし取ったと見られている……らしい。ちなみに彼らが使っていた迷惑メールのキャラクターは、架空の資産家「九条麗子」や「北大路彩華」など……ン? 九条麗子……覚えアリ!!
・先制パンチは「電話番号いきなり系」
九条麗子と私の出会いは、昨年2014年の7月16日の午前8時12分。1発目のメールからしてスゴかった。いきなり彼女は、「090XXXXXXXX ←番号です(怪しげなURL)」という、マジっぽい携帯電話番号が書かれたメールを送ってきたのだ。
とりあえず、九条麗子以外の敵と戦っていた真っ最中だったので、「麗子にかまっているヒマはない!」とばかりに電話をかけるのはやめておいたが、こういった “電話番号いきなり系” は意外と多い。しかし、大抵の場合は実際に電話しても誰も出ない。
それはともかく……この「いきなり電話番号攻撃」の2日後、7月18日の午前5時02分、九条麗子は私に向けて以下のようなメールを送ってきた。なお、文中の怪しげなホクロ(.)などは、そのままにしてコピペする。
送信者名:[.九.条.麗.子. 〔代:表〕]
内容:「後にも先にも1000円! この費用なくして10億円受け渡しは実現致しません。しかし、この1000円で貴方の人生が良い方向に変わることをお約束致します。その為にも行動して頂けますでしょうか?この九条麗子が責任を持って支援を完遂致します。(怪しげなURL)」
──意味がよくわからない。朝っぱらから何言ってんだコノヤロー……と思ったら、その後の5時52分、6時11分、6時22分、そして6時41分……と、まったく同じ文面のメールを5連発で送ってきたのである。報道によると釣り額は7000万円だが、私に対しては10億円。そうか……私だけは、特別扱いということか! よろしい……受け取ろう!!
……とか言いつつ、しばらく完全に無視していた。なぜならば、こういった「●●万円譲ります系」は、800万円の優子、ならびに6800万円の本田……などで食傷気味だったからである。こんな手口、もう古いんだ。もっと新しいヤツを……! LINE乗っ取り、来ないかなァ……。2014年7月は、そんな気持ちでブルーな毎日を過ごしていた。
・漫画家がうらやむ「世界公式認定支援者」
しかし、私からの返事は一切ないにもかかわらず、勝手に「九条麗子物語」は続いていった。同日中には『帝国支援バンク《JCIV》』なる謎の組織から、「九条麗子様は貴方の協力により【世界公式認定支援者】に確定します」といった謎メールを受信。
その直後には『マリア★19番目の支援難民★』なる謎の人物から「20番目の支援対象者である貴方が、九条麗子さんを【世界公式認定支援者】にしてあげてくれませんか?」と懇願されつつ、その間も九条麗子本人からのメールがジャンジャン届く。
さらに、『漫画で天下取ります。豆蔵(29)』なる漫画家の卵らしき人物からは、
「九条麗子さんの支援権利を持ってる人ですよね…? 羨ましくて…。ぼくは…借金を今何とか返す日々で…暗闇を彷徨い続けてる感じです。可能なら…ぼくに…九条麗子さんの支援権利を下さい…。ぼくにはどうしても高額なお金が必要なんです…人生かえたいんです…。(怪しげなURL)」
──という悲痛なメールが届くも、内心「甘ったれんな! 人生変えるなら漫画で変えろバカヤロー! 俺だって絵は下手だけどガンバってんだぞコノヤロー!!」と思ったりもしつつ、まだシカトを決め込んでいた。その間も、九条麗子からは、
「今は後ろを振り向かないで下さい。前へ前へと進まなきゃ駄目なんです。」
「10億円分ご用意しても、支援できるのは夢のまた夢なんでしょうか。私、九条麗子です。答えて下さい。」
「今なら1000円で10億です。ご検討頂けましたでしょうか?」
「【1000円】→【※1,000,000,000-※】」
──みたいなメールが雨あられのように届きまくる。彼女の特徴としては、「1日に連発で送ってくる系」であり、それはもうマシンガンのような勢いで、私のメールボックスがパンパンに膨れ上がっていったのだ。容量制限もあるのに。うざいなぁ……。
ちなみに九条麗子ならびに、その取り巻きが7月18日の1日だけで送ってきた迷惑メールの総数は231通。こんなレベルで送りまくっていたのが、今回逮捕された大規模詐欺グループの特徴といっても差し支えないだろう。いくらなんでも送りすぎ!
・一瞬のバトル
それはさておき、そんな九条麗子に対し、私は1通だけ返信していた。私がシカトし続けていたことに対して彼女がイラついていたのか、九条麗子は以下のメールを2014年7月18日8時20分から数分おきに……7連発で送ってきた。
九条麗子「え???シカト???????」
──ふだんは冷静を貫いている私だが、なぜだか猛烈にイラッとした。しかも7連発。そこで私は、16時09分、以下のように反応してみた。
GO羽鳥「シカトじゃない。なにがしたいんだ。」
シンプル、かつ、そこはかとなく長州力。まだキレていない。まだキレていないのだけれど、この先の反応次第では、「なにがしたいんだコラッ!」とラリアット的な追い込みをかけるための軽い1発。ドンッ……と、胸を小突いた感じである。しかし!
その後も九条麗子は、まるでロボットのように「1000円で10億円」のメールを送り続けてきたあげく、
「〔ほうれんそう〕」
「競馬、宝くじ、パチンコ、スロット、これらのギャンブルなんかよりよっぽど確実です。むしろギャンブルとは違い100%果たされる事なので安心して下さい。」
「恋もセックスもしたい年頃です。」
──と、なんだか違う方向に進んでいきそうな雰囲気も漂わせつつ、最後の最後は『九条グループ支援管理局・松田』と名乗る人物から「【受付開始】九条麗子からご連絡は入りましたか?」というメールが7月21日に届いてフェード・アウト。
九条麗子物語の開始から終了まで、たったの3日しかなかったのに、彼女らが送ってきたのは合計686通にもおよぶ。しかし私が残念に思うのは、そんなに大量に送ってきたのに、おもしろい内容のメールが1通もなかったことである。
もしも今回逮捕された34人が服役するのであれば、檻の中で『絶対に返してはいけない 迷惑メール、LINE乗っ取りにマジレスしてみた。(ワニブックス)』を何度も何度も読んでおくことをオススメしたい。そして、豆蔵(29)には漫画で天下を取ってほしい。どんなことでも、絶対にあきらめちゃダメなんだ。がんばれよ、豆蔵!
参照元:TBS、ワニブックス、Amazon
Report:迷惑メール評論家・GO羽鳥
Photo:RocketNews24.
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▼しっかりとフォルダ分けされていたということは、私の中でも「要注意」とする人物だったということだ
▼こんな手口、もう古いんだ
▼壊れ始めた麗子
▼どうした麗子!
▼迷惑メール研究所を甘く見てはいけない
▼ユタ州で執筆
▼なにがしたいんだ