これまで何匹のゴキブリと決闘してきただろう。100匹か。200匹か。300匹か! あるいはそれ以上かも知れない。途中で逃げられるという不戦勝……、いや、ある意味「不戦敗」も数多く経験したが、ほとんどの戦いで私は完全KO勝利した。
だが、その中には、“戦いには勝ったが心で負けた” とも言うべき死闘があった。今でも夢に出てくるほどのトラウマになっている。場所はラオスの古都ルアンパバーン。メコン川のほとりにある、某安宿内でのバトルだった。
・余裕しゃくしゃくなゴキブリ
ただでさえジメジメしているのに、あいにく街全体が停電中で、エアコンはもちろん、ヌルい風をかき回す扇風機も、部屋を照らす電気もつかない。昼間だったので外の光が差し込むが、それでもなお薄暗い。──と、その時、何かが視界の隅を横切った。
奴だ。ゴキブリだ。熱気ムンムン&湿度ジメジメ&暗い部屋、奴にとっては最高すぎる条件がそろっており、油断しているのか移動スピードは極めて遅い。「俺は逃げないよ」とでも言わんばかりの、余裕しゃくしゃくな横切りだった。
・一撃必殺で奴を仕留めた
私はとっさに靴を手にし、「ナメるなっ!」とばかりに振り下ろした。剣道ならば「お面」であり、完全に一本入っているレベルのクリーンヒット。ちょっと液体が出てしまうほどの、あとあと後悔するパターンの一撃必殺である。
触角もペタンと床にしなだれ、生命オーラは感じない。が! 奴は生きていた。「ウウゥ……」といった感じで、片方の後ろ脚をウニウニと動かしている。しぶとい奴だ……と、もう1回叩く。すると、さっきよりも後ろ脚の動きが激しくなったのである!
・7本目の脚が大暴れ
「ええいっ、気持ち悪いっ!!」と、もう1発ブン殴ると……脚が “あり得ない方向” に動き始めた。それはまるで「エア自転車」といった感じの動きであり、関節無視のグルグル回転、映画『エクソシスト』状態だ。しかもしかも……なぜか脚が伸びてきたのだ!
伸びる伸びる、まだ伸びる! 当社比5倍は伸びている! しかも暴れるミミズのごとく、ビッタンビッタンと大暴れ。もう完全にホラーの世界だ。しかしよく見ると、ゴキブリの脚は6本ある。この暴れ脚は7本目。こいつは一体……!?
・やがて正体が判明した
細くて長くて真っ黒い、やたらと暴れる7本目の脚。究極レベルに気持ち悪いので、その後も靴でベシベシ叩いてみるも、なかなかビッタンビッタンは収まらない。やがて、7本目の脚はゴキブリ本体から分断された。だが、まだ動いている!
それと同時に、徐々に体の色が、黒から白っぽく変色していった。……あれ、こいつ、見たことあるぞ。カマキリとかに寄生する、ハリガネムシってヤツじゃないか? そうか……ご主人様が死んだから、体の中から出てきたんだ。もうここには住めないと!
その後、ハリガネムシは、ビッタンビッタンと暴れまくりながら、けっこうなスピードで “元宿” から離れようとしていた。だが、100発くらいベシベシしたら、さすがの奴もくたばった。私はティッシュでそれを片付け、宿のオーナーにこう伝えた。
「チェックアウト」。
執筆:GO羽鳥
Photo:RocketNews24.
▼このあたりにある安宿だった
▼すぐそこにはメコン川が
▼ここから死闘の写真を掲載しますので閲覧注意
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モザイク入れたけど閲覧注意
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▼7本目の脚がビッタンビッタンしてるところ
▼元宿からスンゲー勢いで逃げようとしているところ
▼まだ黒っぽいけど、その後、白っぽく変色した