『ナターシャ通信』は、ウクライナに住むナターシャがお届けするコラム。ユニークな日本語はナターシャの個性としてご理解いただければ幸いです。
・ウクライナのナターシャです
こんにちは、ナターシャです。2014年3月16日に皆さんがご存じのようにクリミア半島で投票があり、あり得ないぐらいの97%(!)の人が、「ロシアへの編入に賛成だ」と投票しました。投票の結果や投票のやり方(様々な投票違反)は別として、今回は私達のウクライナ人の状況について記事を書こうと思っています。
・応援してくれた皆さんへ
まずは皆さんに感謝の気持ちをつたえたいのです! ロシア軍がウクライナの領土に侵入してから、たくさんの日本人の方から暖かいメッセージが来ました。もちろん他の外国人の友達が応援してくれるのですが、日本人は一番多かったのです。非常に感動しました。
・クリミア半島はウクライナ人にとってどんな存在だったの?
日本にいたときにウクライナの紹介で、よくこの説明を使いました。
「ウクライナには山があり、海もある」。ただしウクライナにはもう海がアリマセン。ウクライナ人にとってクリミアはリゾート地です。海・太陽・夏休み・遊び・美味しいワイン・ストレス解消・綺麗な空気 = クリミアです。年に1度、7割のウクライナ人が必ずクリミアへ遊びに行きました。私達にとってクリミアは本当に特別な存在でした。(今はクリミアについて過去形で書くのも悲しいです。
・「投票はお祭りみたいだ!」
クリミアには50パーセント以上ロシア系のウクライナ人が住んでいるので、投票の日には「やっと、ロシアと一緒になる!」とか、「今日は本当にお祭りみたいだ」とか「うれしさのあまり涙がたまらないのよ」という声が少なくありませんでした。
・反対の意見も聞きました
一方、残りのウクライナ人や先住民族であるクリミア・タタール人にとって、投票の日は最悪の日でした。たくさんのクリミア・タタール人(最新のデータによると2000人以上)が本土に逃げたり、投票をボイコットしたりしていました。
「ふるさとがとられるなんか、信じられないよ」と涙をこぼしながら一人の25歳の女性が言いました。皆さんも想像してみて下さい、ある日プーチンが「北海道にはたくさんのロシア人が住んでいるから、ロシアのものにしよう!」と言い出したら、どう感じるのでしょうか?
・ウクライナはコソボやオセチアやシリアと たとえられている
世界中の人は、ウクライナがどこにある、どんな国なのかを、最近まであまり知りませんでした。いつかウクライナが頑張って、有名になるのは私の一つの夢でした。
今はウクライナには黒海があるということまで、みんなが知っているのですが、ウクライナはコソボやオセチアと同じように書かれているのはショックです。実はウクライナ人やウクライナは非常に平和な国だったのですが、最近のニュースでは戦争の話ばっかりで、クリミアに住んでいるウクライナ系の友達が毎日ロシア軍に囲まれたりして、ウクライナの男性がみんなボランティアとして国民衛兵で訓練しています(もし戦争になったら……)。
・親戚でもすごくけんかしています
最近同じ家族のなかでも、ケンカが多いです。たとえば、私の友達はキエフ人で、彼女のお姉さんがロシア人です。彼女達は遠くにいても、いつも毎日スカイプで話していました。ただし、1カ月前から全然しゃべっていません。キエフに住んでいるオリガさんが、「クリミアはウクライナの領土だから、プーチンが勝手にとったものだ!」と言っている一方、サンクトに住んでいるアンアさんは「いや、そんなことがないよ! 97パーセントの人が賛成したから、クリミアはもうロシアのものだよ! プーチンは正しい」と言っていました。
彼女達だけではなくて、私の周りにはそういう人が多いです。早く全部なおればいいのに……。私達のおじいさん達があんなに頑張って、私達の平和な毎日のために死んでしまったのは無駄になるの?
執筆: ナターシャ
Photo: Rocketnews24