【徹底解説】ネットで話題の「イヌやネコが釣り針に刺されてサメのエサにされる動画」はインチキまみれのデマ動画だから騙されないように要注意(その5)
実は、この動画は昨年2013年にも日本で話題になっていた。そもそものきっかけは、2012年9月。とある日本のブログユーザーが、友人からメールで聞いた話として、「お金持ちのアメリカ人がフランス領レユニオン島で、イヌやネコをエサにサメを釣っている」と、動画付きで紹介した。
・違う話をゴッチャにして紹介
その投稿に埋め込まれていた動画は、「私たちのネコちゃんを漁師から守ろう動画」のコピー動画と、2005年にフランスで報道された「レユニオン島からイヌを救出した映像」を誰かが再編集してYouTubeにアップした動画、合計2本だ。
かたやインチキ動画、かたや「イヌエサ事件」の映像なのに、なぜか同じ事件として組み合わせて「イヌやネコをエサにしてサメを釣っている」と紹介したのだ。
・しばらくしてから大きな話題に
その後、しばらくは何事もなかったが、2013の3月中旬ごろ、このブログエントリーがなぜかネット上で話題になった。あの有名サイト『痛いニュース』でも2013年03月14日に報じられ、ツイート数は2000以上、1800件以上のコメントが付いていた。
そして、それらコメントは、ほとんどすべてが「これはひどい」や「外道すぎる」といったものであったが、翌日3月15日、とあるユーザーが「すでにこの問題は2010年に解決していますよ」と、ソースとなるURL付きでコメントした。つまりは「デマみたいですよ」と忠告したのだ。
・調査の結果「このような漁は現在は行われていない」
そのURLは、前述とはまた違う日本人のブログであり、そこには「フランスの動物愛護団体やPETAの各支部、さらに英国の王立動物虐待防止協会に問い合わせをしてみた結果、このような漁は現在は行われていないことが分かりました」的なことが丁寧な文章で書かれていた。日付は2010年2月である。
それを受けてか、もしくは他の理由があったのかは不明であるが、後に『痛いニュース』は該当のニュースを削除している。多くのユーザーが見るであろう有名サイトからも、わりとマッハでこのニュースは “消えて” しまったのだ。よって、ネットをよく見ている人でさえも、この事実を知らない人が多いのである。
・世界における話の流れ
ということで、前ページに書いた【海外における話の流れ】と、【日本における話の流れ】を、まとめてみるとこうなる。
2005年、フランスで「イヌをエサにサメを釣る」事件が明らかになる。
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同2005年、釣り人は逮捕。さらに、同様の悲劇を防ぐための法律も制定。イヌエササメ釣り事件は、これで終了。
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2008年、PETAが「海の子猫ちゃんを守ろう!」キャンペーンを開始。
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2009年、フロリダのペテン師が「私たちのネコちゃんを漁師から守ろう!」キャンペーンを動画と共に開始。
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わりとソッコーで「ネコエサ動画」が捏造だということがバレる。
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本気で検証する人も出てくる。フロリダのペテン師、ピンチ。
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2010年サイトを閉鎖したうえ、動画も削除してトンズラ。
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2010年2月、日本人ブロガーがフランスの「イヌエササメ釣り事件」について各方面に問い合わせをし、「このような漁は現在は行われていないことが分かった」と報告。
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2010年7月、フロリダのペテン師とは違う人物が、「私たちのネコちゃんを漁師から守ろう動画」のコピー動画「Disturbing Cruelty: Kittens used as Bait for Sharks」を YouTube にアップ。英語での説明文で、2005年に起きたフランスの「イヌをエサにサメを釣る事件」にも言及。
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2012年9月、また別の日本人ブロガーが「お金持ちのアメリカ人がフランス領レユニオン島で、イヌやネコをエサにサメを釣っている」と、動画付きで紹介。
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2013年3月、上記のエントリーがネットで話題になる。ネットニュースとしても報じられる。しかし、わりと早い段階でニュース記事が削除されたりして “なかったこと” になる。
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2013年7月、また別の人物が「お金持ちのアメリカ人たちがイヌや黒ネコをエサに、優雅にサメ釣りを楽しんでいる。サメのエサにされるイヌ・ネコたちを救おう」という日本語説明を付けたうえでコピー動画を YouTube にアップ。
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2014年2月、再び「お金持ちのアメリカ人がフランス領レユニオン島で、イヌやネコをエサにサメを釣っている」というネタがネットで話題になる。
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そしてこの記事がアップされる ← 今ココ
──というわけだ。つまるところ、遠い昔にフロリダのペテン師が作ったインチキ動画に、何度も何度も騙されているわけだ。
いま、フロリダのペテン師は何を思っているのだろう。サイトも動画も削除したのに、捏造動画だけが亡霊のようにネットでは生き続けている現在の状況。特に何も思っていないかもしれないが、もしかしたら、こう思っているのかも。「ネコをエサにサメを釣る動画を作ったら、何度も何度もカモが釣れた」と。
参照元:YouTube、アニマルライブの動物愛護日記、Wayback Machine(英語)
執筆:GO羽鳥&和才雄一郎
▼こちらがフランスのイヌ救出動画
▼こちらは日本語タイトルが付いたバージョンの動画
http://www.youtube.com/watch?v=_sR_YQKuCks
▼残酷なシーンもあるので閲覧注意だが、これはウソ動画である
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