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最近、インターネットで『ソースロンダリング』という言葉が流行している。これはメディアによる「外圧」を使っての世論誘導法である。まずはその方法を紹介したい。

日本のメディアは海外のメディアと提携しており、各新聞社社内や同一ビル内に海外メディアの支局を持っている。日本人の記者が東京の支局で記事を書き、それを本国で配信し、海外記事の紹介の形で「海外では〇〇と報じられている」と批判的に報じるわけである。そして、その記事を元に世論誘導をするわけである。

・ネットユーザーたちに論破
このようなソースロンダリングで最も有名なのは朝日新聞とニューヨーク・タイムスの関係となる。海外のメディアの場合、各新聞記事は基本的に署名記事となる。このようなソースロンダリングは、記事の最後にある記者名と配信地で識別する事ができる。

ソースロンダリングは、インターネットが発達する以前にはわからなかった。原文の記事をあたりたくても原文を手に入れるには現地に行くしかなく、情報を一部のメディアが独占していたから可能だったのである。しかし現在では、インターネットの普及により、それぞれの原文や一次ソースに容易に当たることができる。結果、メディアによる捏造や世論誘導が簡単に見破れるようになった。

そして、このような行為はネットユーザーたちに論破され、馬鹿にされると同時にメディアへの批判となり、自身の信用を傷つける結果となっているわけである。同様の行為は、国内でも行われている。

・過激な言葉はどこにも出てこない
2013年1月15日、朝日新聞は中国の尖閣列島領空侵犯に絡み『領空侵犯に信号射撃 対中国で防衛相方針』と報じた。この記事は防衛大臣の会見を受けてのものである。

しかし、防衛庁の大臣会見概要をあたっても、そのような言及はどこにもない。大臣は一般論として、「我が国としても、国際的な基準に合わせて間違いのない対応を備えていると思っています」と述べているだけであり、朝日新聞が言うような信号射撃などという過激な言葉はどこにも出てこないのである。逆に、この会見概要を見ていると、記者が何かの言質を取りたくて、必死に誘導している姿が浮かび上がってくるわけである。

そして、この問題は朝日新聞をソースとして中国をもとより世界中に配信され、中国側が大きな拒絶反応を示す事態を巻き起こしているわけである。彼らが何をしたいのか?そして、何を考えているのか私には理解しかねるものとなる。

・日本のメディアを滑稽にすら感じる
かつて大臣会見などは密室で行われ、その内容は記者クラブの者しか知り得ることができなかった。しかし現在では多くの省庁でこれが公開され、場合によっては生中継もなされている。すでに、このような世論誘導は出来ない状態になっているのだ。

私は、世論誘導行為を続けている日本のメディアを滑稽にすら感じるわけである。そして、このような報道は、朝日新聞だけの問題ではない。1月14日の毎日新聞では『クルーグマン氏:アベノミクス「結果的に完全に正しい」』という記事を掲載した。

その記事では、クルーグマン氏の発言として、『アベノミクスの効果について「国債の金利は上がらず、円は下がっており、日本に非常によい結果をもたらしている」と述べる一方、「安倍(首相)はナショナリストで経済政策への関心は乏しく、それ故に正統派の理論を無視しているのだろう」と推測。金融市場はひとまず好感しているものの、財政持続可能性などに深い洞察を欠いたままの政策運営には、懸念をにじませる』という要約を載せた。

しかし、原文をあたってもそのような発言はどこにもなく、どんなに超訳しても、そのような論調ではないのである。この記事を日本語だけで読んだならば、大きな誤解をしてしまうだろう。クルーグマン氏のコラム全文は内閣参与の 京都大学藤井聡研究室で翻訳 してくれている。興味があれば原文をお読みいただくことができ、そして、その違いに驚愕すると思われる。

・日本を否定する言質を引き出すための誘導質問
また、2013年1月18日のIMFのラガード総裁の新年会見でも、日本のメディアはひどいミスリードをしようとしている。実は IMFの記者会見は世界中のどこからでもインターネットの動画で見ることが出来る。

この会見動画の27分30秒前後から、日本の読売新聞の記者による質疑応答が行われるのだが、その内容は日本の通貨安政策が通貨戦争を引き起こす可能性に関するものであり、日本を否定する言質を引き出すための誘導質問に近いものであった。しかし、さすがラガード総裁は一般論に終始し、日本の政策について具体的な言及をしなかった。読売新聞の企ては失敗に終わったといえよう。

もし、ここでラガード総裁が誘導に乗り、日本の円安政策を批判していたら、新聞の一面に『IMF日本の円安政策を批判、安倍政権の経済政策は間違っている』と載っていたのかもしれない。これは今回に限ったことではなく、彼らは今までそのように誘導してきたのである。 ここで、私が不思議に思うのは、なぜ日本のメディアが日本を批判する言質を取ろうと努力しているかなのである。

・日本のメディアは日本の国益のための報道をすべき
本来ならば、日本のメディアは日本の国益のための報道をすべきであり、海外においては日本を擁護する立場をとるのが当たり前となる。なぜなら、メディアの最大の読者は日本人であり、広告主も日本企業であるからである。

わざわざ日本が批判に晒され、外交や政策上の障害となるような質問はする必要もない。そして、これは顧客への背任行為とも言えるわけである。そして、自分たちの会社の存続を脅かし、給料を下げる行為でもあるのだ。彼らは何をしたいのだろう。

・2つの論理矛盾
広告モデルとしての矛盾 日本のメディアは基本的に商業メディアであり、広告を中心としたビジネスモデルである。有料メディアである新聞も本誌広告とチラシ広告がその収益の大半であり、景気が悪くなったり、日本の置かれた環境が悪くなれば、収益を大きく圧迫することになる。必要以上に不安を煽ることはメディアにとってマイナスでしかない。

報道としての矛盾 報道というのは相手の発言を正しく伝えることを義務としており、歪曲や勝手な解釈は認められない。個人的な見解を述べたければ、社説やコラムなどで報道を基に見解を述べるべきであり、ここには明確な切り分けが必要なのである。そして、歪曲報道などによる被害が生じた場合、賠償請求などが発生したり、大きく信用を毀損することになり、それはメディアとしての自殺行為なのである。

・メディアに残された時間は少ない
私はこのような行為を続ける限り、日本のメディアには将来はないと考えるものである。もう一度、自分たちの本来の役割と収益源を考え、組織を立て直すべきではないだろうか? もう、メディアに残された時間は少ない。

執筆: 渡邉哲也 / Facebook / Twitter.
※コラム執筆者による見解は個人のものであり『ロケットニュース24』編集部および掲載サイトの見解ではありません。