日本のみならず世界で話題になっている海苔(ノリ)がある。その名は「Design NORI」。これは海野海藻店(茨城県)が手掛けたアートな海苔で、現在ヨーロッパやアジアなど、多くの国々で大注目の海苔なのである。

まずは上記の写真を見て頂きたい。これは『KATAGAMI STYLE』展(三菱一号館美術館)で現在販売中の「Design NORI」だ。1つ840円という高価なものながら、既に売り切れてしまうほど人気で、問い合わせも殺到しているとのこと。

しかしながらいちばん気になるのが「一体なぜこのような海苔が開発されたのか」だ。早速、記者はその真相を探るべく茨城へと向かった。

到着したのは、茨城県大洗にある一軒の海藻店「海野海藻店」である。いや、見た目はお店というよりも、作業場のようなところで、それでもそのたたずまいは歴史があり妙に落ち着く場所でもあった。

早速、車から降りると、この「Design NORI」を企画した海野洋行さん(32歳)が出迎えてくれて、快くインタビューに応じてくれた。

<「Design NORI」の仕掛人、海野洋行さんにインタビュー>

・まずは海野海藻店に関して教えて頂けますか?
海野さん:はい、海藻専門店はもともと宮城県南三陸町出身の祖父がこっちにきて始めたお店です。現在は2代目である父が社長として海野海藻店を引っ張っています。私は3年前からこの店を継ぐために東京から帰ってきました。

・どんなモノを販売しているのですか?
海野さん:海藻類、とりわけワカメを中心に販売しています。ちなみに、インターネットなどでは販売してなくて、卸売がメインですね。あと直売のような形です。もちろん、このお店でも購入できますよ。

・早速ですがなぜこの「Design NORI」を開発されたのでしょうか?
海野さん:日本食離れで海藻の需要が下がっているのですね。 それをなんとかしたい!明るい話題を作りたい、海藻の面白さ、魅力を知ってもらいたい、そして美味しいモノがあることをもっと知ってもらいたい。そんな気持ちで開発しました。

・「Design NORI」はどんな海苔が使われているのでしょうか。
海野さん:宮城県は三陸産のものを使っています。この海苔は肉厚で光沢があってとても美味しいんです。ベタっともしないし、素材が生きるんです。ちなみに薄いタイプの海苔は強度がないので、「Design NORI」には適しません。

・レーザーカッター技術で海苔を切り抜いているとのことですが、そこで出た切りくずはどうされているのでしょうか。
海野さん:それらはセット販売したり、またフリカケにして販売しようと考えています。全部無駄なくって感じですね!

・レーザーカッターは御社でやっているのですか?
海野さん:いえいえ、この「Design NORI」は、外資の広告代理店さん(株式会社I&S BBDO)と始めたのですが、現在製造は外注です。また、手作業に近い製造方法なのでコスト高になってしまっています。

・製造工程を見せて頂くことは可能でしょうか?
海野さん:申し訳ありません。どこで作っているかや詳細などは企業秘密です(笑)。多分この先もお見せすることはできないかもしれません。ちなみに、このレザーカッター技術には一手間入れています。これも具体的には言えませんが(笑)

・製造する過程で失敗はあるのでしょうか?
海野さん:あまりデザインが細かすぎると切れてしまうこともあります。ですので、ギリギリのところで止めていますね。

・「Design NORI」は御社から注文可能なのでしょうか?
海野さん:現在、「Design NORI」は完全受注生産です。したがって購入は『KATAGAMI STYLE』展(三菱一号館美術館)のみとなります。

・ECサイトや紹介サイトもないのですよね?
海野さん:そうなんですよ。ただ、facebookの方には随時情報をアップしているので、もしよかったらそちらをご覧いただければと思います。

・現在、問い合わせはどの国からが多いですか?
海野さん:驚くことに、海外の方が若干多いですね。特にヨーロッパです。おそらくアジアから火が着いたと思います。というのも、タイで開催された「アジア太平洋広告祭(ADFEST)」のデザイン・ロータス部門で最高賞となるBESTを受賞したのですね。それで一気に広がった可能性があります。

・こんなに反響があると想像してましたか?
海野さん:こんなにあるとは思いませんでした。本当にビックリですよ。

・既に国内はもとより海外でも話題になっていますが、これからこの「Design NORI」をどうしていきたいと考えていますか?
海野さん:ぜひ色々な方に食べてほしいと思っています!それにはまずはコストカットですね。そして大量生産できる体制を一刻でも早く作りたいと思っています。

インタビューは1時間を優に超えていたが、海野氏は終始笑顔で答えてくれた。ちなみに世界では海苔に明確な言葉はないという。「seaweed paper」と呼ばれたり、「seaweed」とも呼ばれることがある。これを海野氏はNORI(海苔)という言葉で定着させ、海苔をより世界に広めていきたいとのことだ。

取材協力:海野海藻店
〒311-1301 茨城県東茨城郡大洗町磯浜町5261
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