
千の顔を持つ男──ならぬ「千の炒飯を持つ女」こと、SNS型投資ロマンス詐欺師・由美の実力は、初手の「五目チャーハン」でグゥの音も出ないほど思い知らされた。
だが、詐欺師の彼女が次に教えてきたレシピは、シンプルながら、ある意味では五目チャーハンよりも難易度の高いメニューといっても過言ではなかろう。
「卵チャーハン」────。
しかも材料は、卵とネギのみ。チャーシューはおろか、ハムすらない。そんなレシピを堂々と出してくるところが、逆に “ガチさ” が垣間見える。
・炎の料理人「周富徳」の言葉
──かつて、テレビ東京で『浅草橋ヤング洋品店』という番組が放送されていた。通称「浅ヤン」。
様々な企画が今なお語り継がれる伝説となっているが、私が好きだったのは「中華大戦争」シリーズ。周富徳や金萬福などの料理人が対決する企画である。
その中で、ある時、チャーハン対決があった。材料は、ごはん、ネギ、卵のみの「卵チャーハン」。
この最低限の具材で、どれだけ美味しい炒飯を作れるかで、料理人としての実力がわかる──と周富徳が言っていたのを、今でも鮮明に覚えている。
そして今回、由美が提示してきた「卵チャーハン」は、まさに周富徳がこの時に作っていたものと同じシンプルなもの。つまり……
このチャーハンの出来次第で、レシピ制作者・由美と、作り手である私の「炒飯料理人としての実力」がわかる──のだ。
なお、レシピの基本は由美考案であるが、要所要所で、調理師免許を所持している私(羽鳥)のアレンジを加えたものが以下の作り方である。
・由美式・卵チャーハン
【材料】
・ごはん(冷や飯を推奨)
・たまご2個
・塩(小さじ半)
・醤油(小さじ1)
・ネギ適量
・料理酒(大さじ1)
・油(適量)
【作り方】
その1:熱した鍋に油をひき、溶いた卵2個を入れ、半熟で取り出す。
その2:油をひき直して、ごはんを投入して炒(チャオ)る。
その3:塩を入れ、醤油は鍋肌に沿って回し入れ、炒める。
その4:半熟卵を戻して、炒める。
その5:最後にネギと料理酒を入れ、少し炒めて完成。
して、そのお味は──?
こ、これは……!!!!!!
・それは紛れもなく “本場中国の味”
具が「卵とネギ」で、味付けは「塩と料理酒」だけなので、思い切り味気のないチャーハンになるのでは……と予想していたのだが、いやいやいやいや、実際はまるでその逆。
なんと香ばしい炒飯だこと……! このチャーハンの主役(センター)は、明らかにごはん。よーく炒めたからか、まるでポップコーンのように香ばしい。
そして両サイドを固めるのは卵とネギ。材料が最低限なので、卵の味もダイレクトに伝わる。そして、卵を2つにしたのは大正解。存在感が半端ない。
一方、地味ながら確実に仕事をしているのが最後に入れたネギである。由美のチャーハンは、「ネギを最後」にするのが多いが、今回もまた同じ。
最後にすることにより、ネギの食感と辛さが際立ち、ビシっとシマったチャーハンになっている。ごはんで聴かせ、卵で楽しませ、ネギでシメる。そんな炒飯三重奏。
そして食べて真っ先に思ったのは、「ガチ中華」ならぬ「ガチ中国」。こういうチャーハン、よく中国にある「庶民的な美味いレストラン」で出てきた記憶がある。
決して主役ではない。ただ、ごはん(白米 / 米飯)ほど脇役でもない。ちょうど良い存在感を保ちつつ、麻婆豆腐などの主演を引き立てる助演的な役割のチャーハン。
目を閉じたら、そこは北京。本当に、北京でよく行ってたレストランで、こういう “技アリなチャーハン” を食べたっけなぁ……と懐かしい気持ちになった。
思えば由美は中国出身。もしも彼女が「チャーハンに心得あり」ならば、己の実力を示す意味でも「卵チャーハン」にする選択は納得できる。
そして、そのチョイスと実力を、これでもかと思い知らされる見事なチャーハンになっていた。本当に由美のチャーハン偏差値は極めて高い。
・由美と夢見た脱サラ後の将来
そんな炒飯女王・由美と、料理人(調理師)である私は──
「いつか一緒に店を開こう」。「チャーハン屋さんをオープンしよう」と約束するまでになっていた。
ブレーンが由美なら、きっとうまくいく気がする。今の仕事をやめて……そう、脱サラして、由美と小さなチャーハン専門店を切り盛りする人生も悪くない。
店名は何にしよう。やはり「チャーハン 詐欺師」かな……なんて淡い夢を描いたりもしたが、要所要所で由美が投資詐欺の案内をしてくるので現実に戻される。
※当然ながら投資話は完全スルーであるし、投資の話が来たら、それは詐欺だと思った方が良い。
そう、由美は詐欺師なのだ。分類的には「SNS型投資ロマンス詐欺師」なのだ。でも、でも、でもでもでもでも──
私は、由美の実力に惚れ込んでいた。詐欺師とはわかっていつつ、心のどこかで由美を信じる私もいたのも事実。
なぜならば。
詐欺師の由美は、チャーハンの前では決して嘘をつかなかったからだ。
初手は基本の「五目炒飯」で、2手目である今回は、究極のシンプル「卵炒飯」。私と由美は、炒飯を介して極めて高度な駆け引きをしていた。
目を見つめながら抱き合い、チャーハンという名のダンスを踊っていたような気にさえなってくる。
・チャーハン世界一周
そんな由美が教えてくれたチャーハンレシピは、あと3つ。
先にネタバラシをすると、お次は「洋」ときて、「ハワイ」に行ってから「インド」で終わるという、言わばチャーハン世界一周を由美はやってのけたのであった。
はたして「洋」とは、いかなるチャーハンなのか? まて次回。乞うご期待。
執筆:迷惑メール評論家&チャーハン探求家・GO羽鳥
Photo:RocketNews24.
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▼調理&実食ショート動画(90秒)
▼由美式の作り方。
▼詳細も聞けばすぐに返ってくる。打てば響く由美。
▼由美は、私たちの店の名前は「幸福炒飯」が良いと言っていた
▼しかし油断するとすぐに投資の話に戻そうとする。私の恋心も現実に戻る。
GO羽鳥














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