以前、「ロシア軍隊格闘術『システマ』の紹介ムービーが達人すぎてヤバい / 気づいたら死んでるレベル」という記事をお伝えした。ロシアに伝わるガチすぎるほどに実戦的な格闘術「システマ」がとんでもなくスゴイといった内容だ。さすがはロシア。おそロシア、である。

だがしかし……実はシステマは日本でも習うことができるという事実をご存知だろうか? 本場ロシアのシステマ本部から公式団体として認可されているのは『システマジャパン』(大阪ではシステマ大阪)。一体どのような練習が行われているのだろうか? システマを紹介したからには体を張って調査するしかないだろう。ということで行ってみた。たのもう!

場所は高田馬場の戸山公園。週に2回は、公園の敷地内で屋外練習をしているのだ。インストラクターは屈強な外国人が2人。そのうち1人の名前はアンディ。とにかくデカい。言うまでもなくシステマの達人であり、対峙するだけで押しつぶされそうなオーラがみなぎっている。デカく見えるのは、底しれぬ強さのオーラがあるからだ。

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集合時間になると、受講生たちが続々とやってくる。数えるところ約20人、圧倒的に男性が多いが、女性も数名まじっている。年齢的にもバラバラで、服装としてはスポーツウェアや軍パンを着ている人が多かった。言われてみればシステマは軍隊格闘術。軍パンの方が適しているのかも知れない。

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・奥深き「システマ式呼吸法」がスゴすぎる!
まず練習は軽い準備運動から始まる。そして、特に時間をとって重点的に行われていたのが「システマ式の呼吸法」の練習である。あまりにも奥が深いので詳しい方法は省略するが、システマ式の呼吸により得られるメリットは大きく分けて2つある。

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まずは「落ち着くこと」。とにかく落ち着く。常に平常心。何が起きても冷静に対処できるようにするのだ。緊張して息があがったり、体力の消耗により息があがっても、「スーハスーハスハスハスハスハ」的なシステマ式呼吸法により、あっという間に落ち着くことができるのである。これを車に例えるならば、上がりきったエンジン回転数を瞬時に正常の回転数に戻すといった感じだ。

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・痛さをデフォルトにする!
もうひとつは「痛さを段階的にデフォルトにする」ということ。例えば、何か「痛い!」と思う出来事があったとする。例えるならば、『サザエさん』でカツオがサザエさんに耳を引っ張られているシーンを思い出して欲しい。カツオは「イタタタ! やめてよ姉さん!」となる。サザエさんは「白状しなさいカツオ!」と攻撃の手を緩めない。しかしシステマ式呼吸法を会得しているカツオは、ここで「スハスハスハスハ」とシステマ呼吸。心と体を落ち着けて、その痛さを「平常」としてしまうのだ。

何も感じなくなったカツオは、余裕の面持ちで「知らないね、姉さん」と返す。ここでサザエさんは「カツオのくせに生意気な!」と、より強く耳を引っ張る。「イタタタタ!」と最初は痛がるカツオだが、システマ式の呼吸法で、また痛さを乗り越えてしまう。痛さをデフォルトにしたのち、余裕の面持ちで「全然痛くないんだけど、姉さん」となるわけだ。つまり、システマの達人に耳引っ張りはもちろん、拷問も通用しない。常に冷静。そう、それはまるでゴルゴ13のように!

少し話が脱線してしまったが、この呼吸法は本当に大事なことであり、かつ基本中の基本らしく、念入りに時間をとって何度も何度も練習した。痛さに慣れる練習では、極太で重厚なムチでペチペチと体中を刺激し、「イターイ!」と思ったらシステマ呼吸でデフォルトに!……的な練習も行う。

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また、パートナーの体を使っての拳立て(拳で腕立て)なども、単に体を鍛えるという意味ではなく、「普段、他人の体に触れることなんてめったに無い。どのような感触なのか、どのような構造なのかを理解する」という意味合いが込められている。地味なことにも、ひとつひとつに意味がある。それがシステマなのだ。

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・パートナーとの実践編でもシステマの奥深さを感じまくり!
呼吸法が終わったら、いよいよパートナーと組んでの実践編となる。ここでもキックボクシング&空手経験のある記者は、システマ独特の動き方を感じることになる。蹴られても闇雲にガードはせず、「流す」。しかし、流しつつも、相手の動きを利用しながら一瞬にして反撃に転じる。まるで流水のような動きである。パンチを打たれても、ヘタに耐えることはせず、流す。流すことによって相手の力も、流す。その時に「ヤバい!」と思ったら、大げさに流して、そのまま逃げるという方法もあるという。

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パートナーとの実践練習は、1人対2人や1人対3人という人数的には圧倒的に不利な状況でも行われる。「いざ!」という時は、1対1とは限らない。むしろ、複数人から同時に襲われることのほうが多いのかもしれない。同時に攻撃をしかけてきても、さばき、かわし、スキあらば反撃に転じる。練習生の中には、比較的年配の方もいらっしゃったが、まるで仙人が「ホイホイホイ」と舞うように、攻撃をさばき切っていたのが印象的だ。

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そして最後は整備体操と、各人による感想発表で練習は終了! 寒さ厳しい屋外での練習であったが、記者のトレーニングウェアは汗ビッショリ。しかし息は切らせない。システマ式呼吸法で落ち着くのみ、である。

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1日ではとてもマスターできない呼吸法だが、かろうじて仕組みだけは理解した記者(私)は、後日もジョギング中などに応用している。息が切れそうになったらスハスハスハスハ。苦しさをデフォルトに戻すのだ。この呼吸法だけでもシステマのすごさを感じた次第である。興味のある人は是非ともチャレンジしていただきたい。知っているのと知らないのでは、心持ちが全然違うはずだから。

取材協力:システマジャパン
Report:GO羽鳥

▼こちらはシステマ式呼吸法の練習風景

▼寝そべりながらも呼吸法

▼ふくらはぎのツボを押されると痛い。そこをシステマ式呼吸法で回復させる

▼ムチで叩く。当然、痛い。そこを呼吸法でデフォルトに戻す!

▼重いムチを落とすだけで、なかなか痛い。

▼体がどのような構造になっているのかを知るのも重要だ

▼お腹って、意外とやわらかい。

▼「何かが起きてから動くのがシステマなんだ」と。チョイ刺さってるくらいから動くのがシステマらしい。

▼練習生の中にもシステマの猛者はいる。蹴っても殴っても、何をやっても通用しない!

▼3人に攻められる記者。さばけない!

▼最後は拳立てとスクワット! システマジャパンのみなさま、ありがとうございました!