夏草や兵どもが夢の跡──。史跡というのは良いものだ。時代の変遷、悠久の時。川の流れのようにゆっくりと壮大な時間の流れに客観的に触れることができる。人間関係の悩みどころか、生きるのも死ぬのも人が紡ぐタペストリーの糸の1本にも満たないと思う。

でも、ひょっとしたら、広大な世界においてはそのタペストリーすら些事(さじ)なのかもしれない。そんなことを考えたのは2000年以上の歴史を持つ中国九大古都『大同古城』を訪れた時のことであった。

・2000年以上の歴史

中国の北、内モンゴル自治区に隣接している大同市は古くから北方防衛の拠点要塞として栄えた城郭都市。始まりは紀元前の戦国時代、秦(しん)のライバルであった趙(ちょう)が築いた城郭とされている。マンガ『キングダム』でもお馴染みの李牧(りぼく)が所属する国だな。

つまり、歴史は2000年以上。歴史の時点ですでにマンガ的ロマンを感じずにはいられないのだが、実際訪れてみるとその規模にもマンガ的なものを感じた。


・『進撃の巨人』すぎる

要塞都市だけあり、城壁が街を囲う形になっているのだが、その街や城壁の規模感が日本の比ではない。空まで分割せんとそびえ立つ城壁が果てまで続く光景は『進撃の巨人』のようだ。

しかも、城壁の上が地上の大通りと同じくらい広い。歩けるどころか、シェアサイクルもバスまでも走ってる。巨人も止められそうな、その規格外の壁にもウォール・マリアを感じずにはいられなかった。

・衝撃

まるでマンガの中に入ったような非日常感。そのスケールに中国を感じながら城壁の上を歩いていたところ、地上にいる時は気づかなかった点に気づいた。寺っぽい部分があったり古代中国風味の石造りの建物が並んでいたりする街並みに紛れて工事中の部分があるんだけど……


完全に新しい建物を建てている……!

実は大同古城は、2008年から始まった大規模な古城修復プロジェクトにより復元されたものなのだが、目撃した工事中の区画では更地に新たな骨格が組まれていた。修復ってレベルじゃねェェェエエエ!!

・アグレッシブ

地上を歩いている時、石造りの街並みに歴史を感じてたんだけど、あれもひょっとしたら新築だったのかもしれない。っていうか、改めて調べたら、オリジナルで残っていたのは城壁の土の骨組みと、城内に点在していた一部の古寺院や建造物らしいので、歴史的なオーラを匂わせてる部分も多くは新築と考えて間違いないだろう。

歴史的建造物を拡張していく勢いのアグレッシブな復元っぷりに猛烈に中国を感じたのであった。街並みに現代的な映えのセンスを感じたのはそのためだったのかもしれない。


・諸行無常

ただ、それゆえに空想的な没入感があって、街単位でそれが顕現しているという点ではやはり圧倒される。全てにおいて規模が違った大同古城。日本人的な価値観で言うと歴史的なものに手を入れるのは興が削がれる部分もあるが、それもどうでもよくなるくらいのスケールのデカさがあった。

その良さは、とてもじゃないが写真に収まりきらない。これぞ体験。結果として、歴史を感じる以上に諸行無常を感じたのであった。所詮この世は流れゆくもの。ならば、川底の小石よりも泳ぐ魚を獲るべきであろう。

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

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