どんなにデジタル化が進んでも、決して絶えることはない日記帳や手帳の文化。SNSに上げるためじゃない、自分だけのライフログを残したいというニーズはたぶん不滅だ。

カラーペン1本で雑誌みたいな紙面を作れるノート達人に憧れ、筆者も何度も旅日記をつけたりした。ただ、どうしても自分の作ったノートが好きになれない。字が下手だし、絵のセンスもないし、見返すとうんざりするから継続しない。

人に見せなくてよくて、簡単に記録できて、見た目がかっこよくて、自分の生きた足跡を残せるアプリ……すべてを満たすの、もしかして「ほぼ日手帳アプリ」じゃない?


・アプリで登場「ほぼ日手帳」

コピーライター・糸井重里さんがプロデュースする「ほぼ日手帳」シリーズ。25年の歴史をもつ手帳界の重鎮だが、このたびスマートフォン版の手帳アプリをリリースしたという。有料プランもあるが、基本機能は無料。1か月ほど使ってみて、まだまだ改善の余地はありそうなものの、「さすが!」というポイントがたくさんあった。


サンプル画面がこちら。おしゃれなブログサービスのように、きれいに情報が並んでいる。これは例だけれど、実際のアプリでは自分の撮った写真、移動経路、スケジュールなど、すべて自分に関する情報になる。

「画面の情報量が多すぎる」という声もあるものの、いらないコンテンツは消去できるし、余計な広告が入らないのも素晴らしい! これだけで快適性が全然違う。

デザインがすでにこなれているので、自分の手書きが美しくない……という筆者の悩みは即解決。個々人のセンスに左右されず、見応えのあるタイムライン画面になる。さらに「イイ!」と思ったポイントが以下だ。


・スマホと同期して自動的に日記が完成

「ほぼ日手帳アプリ」は、スマートフォン内の標準アプリと連動する。撮影した写真、位置情報、天気、スケジュール、ヘルスケアなどの情報が自動で取り込まれるので、自分がまったく記録をしない日でも「とりあえず家にいたな」「すごく暑い日だったな」など、その日の状況がわかる。まさにライフログだ。

取り込まれた写真に、ひと言でもいいからコメントをつけておけば立派な絵日記。これくらいなら、筆者を含めた歴戦の三日坊主でも続けられると思う!

タグを付与することもできるので、たとえば後で「自炊メシ」タグの写真だけを一覧する、なんて検索も可能。「ラーメン日記」とか「今日の空」とか記録している人もいいと思う。

まだアプリリリース直後なので使えないけれど、「1年前の今日」を表示する機能もあるようなので、データが蓄積していくと楽しそうだ。


・タグを活用すればメモ帳にも

自動同期のほかに、手動で投稿(このアプリではデータの登録を「投稿」と呼ぶ)もできる。データ形式は今のところ、画像、動画、テキスト、URLなど。気になったサイトとか、読んだ本の感想とか、ふと思いついたこととか、気軽に貼りつけておける。

筆者が思うに、ポイントはタグだ。「つぶやき」でも「仕事アイディア」でも「レシピ」でも、とにかくタグづけしておけば後から探せるのでとても便利だと思う。

何よりスマホの利点は、筆記用具も机もいらず、思いついたときにどこでも操作できること。さすがに長文の入力には向かないけれど、スピード感は断トツだ。

現状、筆者は「読書感想文はこのアプリ」「手芸の進捗状況はこのサイト」といくつかのサービスで記録をつけているが、ほぼ日手帳アプリに集約できないか思案中だ。ひとつのアプリで済んだらすごく便利!


・ユニークな「センパイ」の存在

ほかのアプリと一線を画す、ユニークな要素に「センパイ」がある。公式AIキャラクターのような存在で、日々の投稿にコメントをしてくれる。

「センパイ」は3人いて、性格や口調が異なる。初期設定で1人を選ぶが、ゆくゆくは3人を切り替え可能になるとのこと。キャラクター要素とかいらないよ、という人は後から「オフ」にもできる。

筆者はシンプルな日記機能を求めていたので、最初は「いらないかな」と思ったのだが、使っているうちに謎の愛着が! とんちんかんなコメントも多いけれど、それもまた味がある。誰かが反応してくれるのが嬉しく、疑似SNSの感覚だ。すっかり日記を共有する相棒のような存在に感じている。


・課題もあるけれど

リリース直後なので、もっとこうだったらいいのに……というポイントはたくさんある。

たとえば写真の自動同期には賛否があって、現状では個人的メモのための通販画面など、どうでもいい写真を含めた「全写真」が取り込まれてしまう。「そこまではいらんわ!」という声が多々。

手動で1枚ずつ取り込むこともできるが、だいぶ手間がかかる。公式ではユーザーの声を受けて「手動のみでも投稿できるように準備を進めております」とアナウンスがあるので、気長に待ちたい。

なお、無料で利用できるフリープランでは、写真そのものがアプリにアップロードされているわけではなく、端末のライブラリから読み込んでいる状態。つまり、端末から写真を削除するとアプリからも消えてしまう。写真ごとアップロードするには有料のプレミアムプランに移行する必要があるので、写真の保存のために使いたい場合は注意。

また、位置情報や滞在時間の情報精度は高くなく、現状では「ざっくり」という印象だ。位置情報検知のタイミングと、バッテリー消費とのバランスをとっている段階のようで、これも今後は調整が入るだろう。


歴史も知名度もある「ほぼ日」だから、個人開発のアプリよりもユーザーサポートがしっかり機能していそうなのは嬉しい。筆者のアプリにエラーが出たときも個別に対応してくれたし、ヘルプページの「この部分は検討していきます」などの文面から、ユーザーの声が届いていることを感じさせる。アップデートもこまめに入っているようだ。

かなりの個人情報が集約されるのでセキュリティがちょっと心配だが、「政府・金融分野でも広く用いられる強度の暗号を採用し、ユーザーごとの鍵と多層防御で保護しています」とのこと。

今後もどんどん改良を重ね、ライフログアプリの決定版になりそうな予感! 日記やログアプリは永続性が大事だから、息の長いサービスになってくれることを心から期待している。


参考リンク:ほぼ日手帳アプリ
執筆:冨樫さや
Photo:PR TIMES、RocketNews24.