考えられへん! マジで考えられへん!! ──と、私は夕方のキッチンで怒りに震えていた。
同時に思った。「これは戦争になるな」と。外交交渉でどうにかなるレベルを越えているなと。なんなら、すでに宣戦布告されている状態だなと。というのも……
6個あるはずのドーナツが1個だけになっていたのだ。こんな非道が許されるのか?
私は思う。食べるにしても、せめて4個やろと。もちろん3個で抑えるのが普通、というか常識ではあるが、4個までならギリわかる。
なぜ5個いったのか? どういう神経をすれば5個目に手を伸ばせるのか? 自分のパートナーに対して労(いたわ)りの気持ちが少しでもあるならば、3〜4個のラインで止まるはずなのだ。
5個はない。ありえない。だって、6 ÷ 2は3ですよね? 相手とシェアする気持ちがあるならば、3個で止めるよね! 勢い余ったとしても、4個以上はいけないよね? そうだよねーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!
……という怒りの気持ちを押し殺して、私は妻に「ドーナツめっちゃ食べたやん」とボソッと言った。
すると妻は「あそこのドーナツメチャクチャ美味しくて!! 食べてみ?」とぬかしやがった。
だ・っ・た・ら!!!!
5個も食べるのは余計におかしいだろうがーーーーーーーーーーー!!!! と思ったが、私は「じゃあ仕事が終わったら」と返すしかなかった。
とにかく忘れよう。いまは同じ空間にいるべきではない。戦争を避けるための努力はするべきだ。と考えて、PC前に戻ってテレワークを続けた。
・残された1個
それから数時間後、私は残されたドーナツの前に座っていた。6個入る箱に収まっている1個のドーナツは見るからに寂しそうで、自分自身と被る。
お前を忘れたわけじゃないよ。いま食べてやるからな。そう思いながら口に運ぶと……
_人人人人人人人人_
> めっちゃ美味い!!!! <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄
なんだこれ? ひとことで言うと「卵感がすごいドーナツ」って感じなのだが、それだけじゃない。
特徴的なのが食感。表面はカリカリで、中はトロトロとモチモチの中間のような感じ。そして、表面と中の間にジュワっとした層がある。三層構造と言っていいのかな?
流行りの生ドーナツのようにヤワヤワではないし、伝統的なドーナツともまた違う。個人的には、今まで食べたことがない味だ。
・気持ちがわかった
ちなみに、ドーナツは妻が「インスタで店を見て気になった」と言って買ってきたもの。もう少し詳しく言うと、東京・幡ヶ谷にある「Equal(イコール)」というお店だ。
もともと妻はその店のドーナツを1 〜2個だけ食べる予定だったが、1つ食べるとブレーキが効かなくなったらしい。
今はその気持ちが分かる。むしろ、アタリの店を見つけてくるリサーチ力に脱帽した。
というか、これはドーナツがすごい。というのも、妻は元々甘いものがそれほど好きではないのだ。にもかかわらず、6個中5個も食べたいと思わせるなんて……。
気になった私は、翌日その店に自分で向かった。そして……
妻が購入したものと全く同じものを買った。フレンチクルーラーの6個入り。1つ400円だから合計2400円。
持ち帰ったドーナツを妻と分け合う。もちろん、妻3個・私3個だ。もし どちらかが「4個食べる」と主張したら間違いなく戦争になっただろうが、「3個のラインは越えない」という紳士協定によって争いは避けられた。
ハッピーエンドに終わって ひと安心。それにしても、1個しか残ってないのを見たときに怒りを抑えこんで大正解だった。マジで。
参考リンク:Instagram @equal_pastryshop
執筆:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.
▼半分に割るとこんな感じ。見るからにエアリーだが、ただ軽いだけではない