寿司握りは長年の修行で身につく職人技。「あぁん、冷凍寿司だとぉ? 職人の魂がレンチンできてたまるかい!」くらい言いたくなるのがスジだろう。
先ごろ宅配寿司チェーン「銀のさら」で、三陸の水産加工会社とコラボした冷凍寿司を発売。誰でも自宅で三陸産の魚を使った寿司を楽しめるという。なかなかチャレンジングな企画だと思ったが、家で解凍して食べてみたら仰天した。
・銀のさら「ご自宅にぎり寿司」(税込2680円)
商品は宅配ではなく、道の駅などで冷凍状態で販売されている。1箱1人前で、ギフトにもできそうな立派なボックス入りだ。自宅まで冷凍状態をキープできない場合は通信販売もある。
開封すると、カチコチに凍ったネタが登場。岩手県産ネタ×5種、銀のさらの人気ネタ×5種で、合計10貫を作れるようになっている。
ネタはカット済みで、シャリもすでに俵型に握られている。仕上げだけ購入者が行うようだ。
写真つきの丁寧すぎるくらいのマニュアルが同梱されているので、それに従って作業する。ネタは流水解凍。数分で終わる。
シャリは空気穴を開けてからレンジでチンだ。
必要以上に水分が抜けないよう、マニュアルには丁寧なアドバイスがある。温度、時間、蒸らしなど、自己判断ではなく指示に忠実に作業した方がよさそう。
キットには海苔、わさび、調理用手袋などがすべてセットになっている。自分で用意するのは作業台代わりのまな板くらい。
シャリを並べてネタを載せていく。切り身からドリップがいっさい出ていないのがすごい。
ネタを載せただけでは不安定なので、一番大事な「握り」をするのだが、これはやっぱり難しい! ただ押しつけただけではポロリとネタが落ちてしまう。本職は手指の力はもちろん、体温まで計算して握るというから、やはり職人技だ。回転寿司でよくシャリとネタが分離してしまうのは素人仕事だからだと思う。
軍艦も少し難しい。海苔を巻いて、後から木ベラで具材を載せる。
海苔はすぐにクタクタになってしまうから、手早い作業が求められる。
配置に手間取っているうちに海苔が少々へたってしまったが、きれいに並べたら完成だ! 「盛り込み皿」まで同封されているから、食器の用意もいらない。
・その実力やいかに
では食べてみよう。岩手県産ネタは陸前高田サーモン、真イカ、ソイ、アイナメ、ヒラメ昆布〆の5種。サーモンの鮮やかさが目にまぶしい。パクッと口に含んでみると……
んんん、これは……!
待って、なかなか……!
こんなことある……?
嘘みたいにシャリが旨い……!
率直に申し上げて、筆者は冷凍おにぎりやパックごはんが苦手だ。冷凍焼けの異物感や、団子のように かたまり になってしまう米粒に耐えられない。自分で冷凍・解凍したおにぎりでも「マズ……」と思うくらいだし、常温保管できるパックごはんに至っては、お茶漬けにしないと食べられない。
冷凍は米の魅力を8割引にする……と思っているのだが、このシャリは旨い! ムラなく均等に解凍されており、しかも酢飯のせいなのかベタッとせず、米粒が立っている。
銀のさらセレクト人気ネタ5種は、マグロ、ホタテ、生エビ、イクラ、ネギトロ。
シャリを包み込むほど大きくカットされた魚は、水っぽさがまったくなく適度な歯ごたえ。混雑してきた回転寿司屋で半分凍ったネタにがっかりするのとは大違いだ。
どれもネタが大きく肉厚で、十分な食べ応え。プリプリして美味しい。この技術を使えば世界各国で日本の本物の寿司が食べられるし、冷凍庫で保管しておいて夜中に思いつきで寿司を食べる、なんてわがままも叶う。
自分で握るのもエンタメ感があって、なかなか楽しい。姿ばかり似ている “寿司もどき” が日本の伝統食だと誤解される由々しき国際問題も避けられるじゃないか。スゴすぎる……!
・アンテナショップのほかECサイトも
商品は「道の駅遠野風の丘」「道の駅高田松原」「ららいわて盛岡店」「いわて銀河プラザ(東京銀座)」「みちのく夢プラザ(福岡天神)」で購入可能。遠方からの購入には楽天市場などECサイトもあるが、クール送料がプラスされてしまうのでコスパは下がる。
さらに、銀のさらでは12月22日(月)までの期間、コラボにちなんで「岩手の地魚握り」などの期間限定メニューを展開中。こちらは通常の同店の宅配メニューなので、個人的にはぜひ前述の「ご自宅にぎり寿司」を体験してみて欲しい! お土産にもらえたらかなり嬉しい。
参考リンク:PR TIMES、いわてバーチャル物産展
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.