夏と言えば旅。ところで、皆さんはどういった瞬間に「旅してるなあ」と実感するだろうか。私(中澤)は目的地以上に、私鉄ローカル線に乗っている時に旅を感じる。田園の中を走っていく単線とか最高だ。
しかし、あの旅感って事実旅をしないと得られないものなのだろうか。もし、旅せずに私鉄ローカル線に乗るだけでも得られるのならコスパもタイパも抜群と言える。というわけで、実家の近所の私鉄ローカル線に乗ってみることにした。
・乗ったことがない近所のローカル線
そう、私の実家の近所には私鉄ローカル線が走っている。さすがに、通勤通学で利用するレベルだったら私鉄ローカル線でも旅感は感じられないと思うけど、私の家は逆方向に行ったらJRの駅があるから通学はこっちを使っていた。都合よく乗ったことがない私鉄ローカル線が目と鼻の先にあったのである。
・気にしたことなかった
その私鉄ローカル線の名前は「水間鉄道」。水間寺という歴史ある寺の参詣鉄道として敷設された路線で2024年で創立100周年なのだそうな。
さらに調べてみると、日本初のオールステンレス車両が走っている知る人ぞ知る路線であるようだ。東急電鉄から引き継がれた7000系を改造した「1000形」がメイン車両になっているという。一部で注目を集めるスポットがこんな近くにあるなんて。気にしないと何も分からないものだ。
・終点から乗る
時が止まったかのような終点の水間観音駅の駅前。染みわたるようにセミの声が響いている。永遠に日本の夏を繰り返しているような錯覚を覚える場所だ。
電車の本数は1時間に2~3本の模様。路線は南海電鉄の貝塚駅までで9駅ある。これも調べるまで知らなかったのだが、営業距離の短さが全国で3番目らしい。
・ローカル私鉄界のシュタインズ・ゲート
改札は自動改札ではないけど、ICカードは使えるようだ。しかし、せっかくなので切符を買ってみた。貝塚まで330円。子供の頃に「日本一運賃が高い」って言われてるのを聞いたことがある。ネットで検索しても出てこないので、ネット普及前の地元の噂的な揶揄だったんだろうな。
確か、1回倒産もしてた気がする。こちらについては産経ニュースの記事に残っていた。廃線の世界線を潜り抜けてきたようである。まさしく門みたいなデザインの水間観音駅はローカル私鉄界のシュタインズ・ゲートと言えるだろう。
・普通に日本初が到着
近所すぎて考えたことなかったけど、私鉄ローカル線として全国区の銚子電鉄みたいと言えなくもない。まあ、当然銚子電鉄ほどのエンタメ性はなく、ある意味、駅にはガチ感が漂ってるんだけど。
日本初のオールステンレス車両って言っても、素人の私に分かるのかな? そんな不安もあったのだが車両が到着すると、形自体が今ほど滑らかではなく、ネジ止めみたいな部分にゴツッとした工業感があってかっこいい。
中に入ってみると、扇風機が回ってる感じに昭和から平成初期を感じる。車内に整理券の機械が設置されているのもローカル線っぽくて味わい深い。
・乗ってみて感じたこと
1つイメージと違ったのは意外と利用者がしっかりいること。水間観音駅の時点ではガラガラだった車内は、駅が進むごとに埋まっていく。しっかり地域の足として活躍していることが感じられた。
それでいて、住宅街の中をスッと伸びる単線の景色はどこかほのぼのしている。時おり顔を見せる田畑も良い味を出していた。
で、16分で貝塚に到着。たった16分だったのか。時計を見てそう思ってしまうくらいゆったりした時間であった。
というわけで、今回の結論としては、実家の近所でも旅感は感じられるということになる。田んぼの風景とか町並みなんて実家周辺と変わらないんだけど単線から見ると全然別物に見えるから不思議。退屈だった日常がアニメみたいだった。あるいは、気の持ちようなのかもしれないけれど。
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.